49.急な知らせ
昨夜の事があって、俺は冥乃ちゃんと顔が合わせる事が出来ずに、学校に行った。
学校では、教師たちが慌てて走り回っていたが、俺には何の関係も無い、俺は教室に着くと、そのまま席についた。
「雅、今日は早いな?」
いつものように、舞華が俺に話しかけてきた。
「いや、ちょっとな…それにしても、なんか先生たち…忙しそうだな」
とりあえず、俺には無関係だが、情報は得ようと思って、俺は舞華に尋ねた。
「ああ、笹本が闇討ちされたと騒いでいるんだ」
俺は頬を引き攣らせた。
「どんな経緯なんだ?」
あんな、体験をして騒ぎ立てるなんて…酒飲んでいた奴が…
「詳しくは知らないが…生徒が街中をうろついていないか見回りをしていた帰りに、ナイフで殺されそうになったと…」
見回り…ね…居酒屋の帰りのくせに、よくホラが言えるな
「よく、助かったな、俺はあの先生嫌いだから、刺されて入院してくれて良かったんだがな」
俺は本気で思った事を口にしたが…
「雅!!仮にも私たちの先生だぞ!!刹那にも言ったが、不謹慎だ!」
舞華は生真面目で本気で怒ったが、朽木姉…やはり、お前も同じ事を言ったのかと考えると…なぜか嬉しく思えた…なぜだ?
「わりぃ、わりぃ、昨日朽木姉を馬鹿にしていた先生だからさ…ちょっとムカついてな」
俺はさっきまでの感情を無視し、舞華との会話に集中しようとしたが…
「そうか…刹那を馬鹿にした先生だからか…」
なぜか、舞華の声に暗さを感じた…はぁ…俺はため息を吐くと…周囲を警戒する…
クラスメイトが…こぞって、聞き耳をたてていた…
俺はそんなクラスメイトを睨みつけると…クラスメイトは顔を背けた…
(まったく、なんで、こいつらは、いつも聞き耳立ててやがるんだ?)
まるでTVを見ている感覚で見てくるクラスメイトに俺はいらだったが…いまは、そんな事より…
「笹本はどうやって助かったって?」
この事を聞きたかった…のだが…なぜか、周囲からため息が聞こえた
「むっ…そうだな…笹本先生は、持ち前の格闘術とかで迎撃したという話だ」
持ち前の格闘術ね…俺に踏まれ気絶していただけのくせによ…
「でっ…犯人に見当はつくのか?」
「いや、まったく…ただ…何名かの生徒が呼び出しをくらうらしい」
自分を恨んでいる人物を集めるという事か…
「しかし、よくそんな事を知っているな〜やはり優等生だからか?」
学校の成績で上位にいるおかげで、そんな情報が手に入るなら…俺も頑張ってみようかと思ったが…
「いや、刹那もその容疑者に入っているから、本人から直接聞いた」
俺の表情が凍りついた…
「つまり…なんだ…そんな怖い顔をするな…私も刹那が犯人だとは思ってはいない
むしろ、無実だと私は証明できる…昨日も刹那の一緒に訓練していたのだからな」
舞華が俺を宥めるようにそう言ってくれているが…俺の動揺は収まらなかった…
(落ち着け…落ち着くんだ…昨日のような事があって…急に動き出すような愚か者はいないはず…無実が証明されれば…大丈夫だ)
そう自分に言い聞かせたが…不意に昨日の紅玉の…あの言葉を思い出した…
(あやつ…あの娘の家族も狙っておった…)
それは…舞華も狙われていると言う事だった…つまり…もし、舞華が無実を証明しようとしても…舞華が共犯と訴えれば…舞華はどうなる?真実なんていくらでも改ざん出来る…
悪い方へ悪い方へと、俺の考えは流れていく…何かしなくて…
「雅!!いい加減に、返事をしろ!!」
その声と共に、誰かが俺の頭の両側を掴むと…俺の前頭部に強烈な一撃が…炸裂した!!
「ぎゃぁ!!!」
あまりの痛さに、俺の体が反射的に動く…急な攻撃に体が反応したのだが…
「うお!!!!!!!!!!!」
なぜか、周囲から熱狂が!?
俺は…衝撃で眩んだ視界がはっきりした瞬間…さっきとは違う意味で…表情が固まった…
俺の目の前に…顔を赤らめた…舞華が見えたからだ…
「あっ…雅…ちょっと…恥ずかしいのだが…皆が見ている前で…」
舞華が…眼をそむける様に、俺にそう言ってくる…
どうやら、俺は…いま…舞華を押し倒しているようだった…
反射的に攻撃に対応した結果…10センチ先に舞華の顔が…見えるように…
俺は、すぐに退けようと思ったが…やはり、この世界は御約束の世界だろうか…
「なにしてんだぁよ!!!!!二人して!!」
朽木姉が…この教室に入ってきていた…
そして…朽木姉は…吼えながら、走りこんできて…俺を蹴り飛ばした…背後から…
その次の瞬間…俺の唇に…柔らかい感触が…
俺は眼を見開いた…
俺の唇が舞華の唇に当たってしまっていた…
「!!!!!!!!!」
舞華はさっきよりも顔を真っ赤にして、急に力無く倒れこんでしまい…
「なっ…なっ…なにキスしてんだ!!!!!!!馬鹿!!!」
俺を蹴り飛ばした張本人は…また怒鳴り声を上げると…
俺が何か言うよりも先に…走り去ってしまった…
そして…周囲から…三角関係、修羅場…の二つの単語が…行き交った…