41.新たな契約
(石…あの男の記憶だと…このあとの予定は何だ?)
(ふむ…飲み屋に行くと考えておったの…三丁目の焼き鳥屋じゃ)
(やけに詳しいな)
(な〜に、小僧…妾はこの町で都市伝説まで祭り上げられた存在じゃぞ!!この町の歴史はお前よりも詳しいのじゃ!!)
確かに、そうだな…この町の歴史に詳しそうだ。
んっ?なんだ…変な違和感がした…だが、今はその違和感に気づく余裕は俺には無かった。
(飲みに行くとしたら…遅くなると考えても良いな…ふふふ…二度と欲情出来ぬように懲らしめに行くのじゃな)
石が俺の考えを口にした。
そう…今の俺には…奴を潰すことが…最優先事項だ…
(ちなみにじゃな…あの男…あの娘の家族まで狙っておったのぅ)
俺の想像上で笹本の両足が砕く映像が過ぎった…そして…
(不能と四肢の粉砕…小僧は、やはり、あの娘たちの事を好きなのじゃな〜
もし、妾がいなかったら、その娘たちはどうなっておったか…見物じゃのう)
石が、ころころと笑う…
(ああ…大切だと思っている…その前に…一言いわせてくれ)
(なんじゃ?不謹慎な事を言った妾を…)
(すまなかった)
(むっ?…なぜ謝るのじゃ…)
(お前…あの男の記憶とか…嫌な感情を全部…見てくれたんだよな…)
俺がそう言うと石は、何かが凍りつくような気配を見せる
(そっ…そんなんじゃない!!妾は…別に…そんな事など…表層しか…)
俺は石が慌てて取り繕う声を聞き、少し笑いそうになったが…
(あの映像…まるで自分が、相手を襲っているような感覚…お前もそれを感じたんだろ?)
(じゃから…別に…あの程度の事…妾は…)
石は平気だと…自分は大丈夫だと、誇示しようとしているが…次第にその声に力が無くなる
(俺はあの映像を見て…とても苦しかった…自分自身がやってないのに…
自分自身を罰しようとしてしまった…お前は…あっ…お前って言うのは止めよう)
石だのお前だの、いつまでも、変な言い方でいるのは、おかしいな
(石でもお前でもかまわん!!じゃから…妾に…これ以上優しく…)
“優しさを拒む奴程、優しさに飢えている”先輩が俺に教えてくれた言葉の一つだ
(紅の石…俺は今度から、お前の事を紅玉って呼ぶ)
(!!!)
(紅玉…いままで、お前を石呼ばわりして悪かった)
俺がそう言うと…紅玉は…しばらく黙った…そして…
(紅玉…良い名じゃな…小僧…いや…雅春…御主から貰ったこの名…大切にするのじゃ…)
紅玉は、初めて俺の名を呼んだ…俺は、ポケットから紅玉を取り出すと俺の顔に近づけた。
(ああ、紅玉…改めて言わせてくれ…すまなかった…
あんな苦しい思いをさせて…悪かった
そして、ありがとう。紅玉が再会したい人物に会えるように、俺も頑張る!!
だから、もう少しの間、力を貸してくれ!!)
(妾も…一時の間じゃが…よろしく頼むのじゃ!!それに妾は、永く生きてきたのじゃ、あれくらいの妄想など、軽いものじゃ!)
こうして、俺は紅玉と改めて契約を交わした。