39.狂気の獣
そうか…そうなのか…
先輩の死に関わる者は…人では無い可能性があるのか
人で無ければ、それは国の法にふれる事無く…〇れる!
確実に〇る…人権の存在が無い化け物を殺しても、罪にはならない…
もともと、相手が人間でも…俺はきっと…この感情を…
この殺意を湧かしただろう…だが、それでも、俺の理性が、復讐とは愚かだと笑ってしまう。
なぜなら、俺は復讐を一度放棄した人間だからだ。
この町に来る前の俺は、狂っていた…
今の俺から見ても狂っていると思えた。
そして、前の俺からも、今の俺を狂っていると思うだろう。
前の俺は…力に溺れていた
親父たちに鍛えられ、どんなピンチにも余裕で対処し…
その力を使えば、金がいくらでも手に入った。
その力を使えば、どんな人も俺の足元に転がった。
まさに…世界は俺の物だと考えていた…
従う者には、おこぼれを、従わぬ者は制裁を…
いろんな犯罪を犯した…器物破損、傷害事件、強盗…性犯罪以外の軽犯罪はある手度、俺の品性を貶めない範囲で行っていた。
とりあえず、例え手下でも性犯罪者は制裁した。
まあ…それは母さんの教えで染み付いた事だったが…俺はそんな世界で暴れていた。
ある日、俺の手下が、オヤジ狩りをして、そのオヤジの持ち物でやけに重いトランクを持って帰ってきた…
これが、俺の破滅の始まりだった…
俺は、そのトランクを開錠すると、中には大量の札束がぎっしり詰まっていた。
手下どもはそれを喜んだが、俺は…この金を…どうするか悩んだ。
この金は、どう考えても、汚れた金
こんな物を持っていれば…災いを招く物と考えたが…俺は…馬鹿だった…
どんな災いでも、俺のこの力で…叩き伏せれば良いと考えていた…
結果…俺は…両手から力を失った…
その金を取り戻しに来た…金を持っていたオヤジの部下らしい男に…俺は負けた。
そして、俺は、端の方で追い詰められ、怯えていた手下の方へ俺は投げ飛ばされ…
俺の手下は、地面に倒れた俺を…起こさず…蹴りつけられた
俺のせいだと言って…そいつらは俺に危害を与えてきた…反撃をしたくても、俺の体には力が入らず…無様に蹴り飛ばされた…踏みつけられた…
そして…参謀と言って俺に付き纏っていた奴が…俺を売り出すようなことを言い…
自分たちは関係ないと言い出した…そして…その参謀は…俺の元へ走ってくると、俺の頭を全力で蹴った…
その一撃で…俺は…殺す…殺してやる…その憎しみを抱きながら…意識を失った…
次に目が覚めたとき…俺は病院の病室で寝かされていた。
親父と母さんが…俺の両手を握って眠っていた…二人とも目が赤かった…
二人は…俺の為に泣いてくれたのか?
意識を失う直前まで思っていた憎しみが…なぜか…俺の心から消え始めた…
俺は…この二人から貰った力を…誤った事に使ってしまったとそう考えていた…
だから…やり直せるのではないのかと…幸い…体の傷は自己診断した限り…異常は無かった…
まあ…復讐だけは…いつかしよ…う…そう考えていたが…
「うっ…うん?…!!」
俺が起きている事に気づいた母さんが、俺の手を力いっぱい握った!?
「雅春!!」バキャベキャ!!
俺の手が砕ける音が!!
「んっ…雅春!!」バキャベキャボキャ!!
さらに、母さんの声で眼を覚ました親父が…俺の手を力いっぱい握る!!
「ぎゃ!!!!!!!!!」
そうして…俺は…両手から握力を失った…
そして…親父と母さんが、急に仕事を止めたと言い出して…引っ越す事が決まった…
その間しばらく捻くれていた…人を信じたくなくなっていた
まあ、先輩と会って…そんな事を忘れてしまったけどな…そもそも…その頃は、友達なんていなかったから、今は幸せだと俺は思う。