31.石の願い
「別に、勘違いするな!!妾も好きで人間の願いを聞いているわけじゃない!!」
「え?」
「妾の意思で叶えているのではない!これも、妾の願いを叶える為なのじゃ!!」
自分の為に、願いを叶える?
「もう、小僧が最後じゃから、妾の話を聞かせてやろう!!」
俺は…石をじっと見る
「妾は、妾の愛しき者と再会する為に、小僧のような人間の願いを叶えている」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「小僧…何か言わぬか!!妾が願いをかなえる秘密を言ったのじゃぞ!!驚き腰を抜かさぬか!!むしろ、腰を抜かして失禁までするの…ひぎゃ!!」
俺は石を地面に叩きつけた…
「なっ…なにをするの…じゃ!?」
そして、足で踏みつけると…そのまま、足でぐりぐりと地面に擦りつける
「てめぇは、再会を司る石だろうが!!そのてめぇが!!再会する為に願い事を叶えるって…どんだけ、お前が無能か…証明してんのか!!」
俺は石を蹴り飛ばす!!石は少し転がると壁にぶつかり、やや半泣きで
「五月蝿いのじゃ!!!!妾の力は偉大ぞ!!よくあるじゃろう!!自分の為に力は使えぬと…妾も自分の為に力はつかえぬのじゃ!!」
そう怒鳴った…
「確かにそんな話は良く聞くな…恋愛成就の神が自分の恋愛だけは叶えられないような…」
「妾もそれなのじゃ!!」
俺はその言葉に唖然とするしかなかった。
見つからない…見つからない…愛しい人が、大切な人が見つからなかった
私の事を愛してくれて、私も愛したあの人、私はあの人に会いたい
私はあの人と共に居たい、あの人の為に、あの人と私の為に、
その為に私は探す、再び廻り会える筈だから…
そう願い続けながら、私はあの人を探す…自分の足で探していたが、いつしか足を失い、足が使えないのなら、私は手を使い這いながら、探す…
だけど、指を失い、手を失い、腕も失った…それでも諦めなかった…
だけど、私の体は失っていく…胴も失せ、頭だけになっても…私は探し続けた…
いや、もう動けない私は、この世に在り続ける事にした…
いつしか、あの人が、私を見つけてくれると信じて…その場で石になることを決めた…
あの人に廻り会う為に…私は今も待ち続ける…物も言わぬ石になり、あの人を探す為に
私は、今も求め動く、私と同じ悲しみを持つ者を助けながら…いつしかあの人に出会う為に…
この都市伝説の話は、ほぼ真実だったのか…
「妾も自分の噂話は耳にするが…なぜ…知られているのか…うむ…わからん」
石が話したわけでもない事実が…流行っている…
これはどんな意味があるんだ?
だが、それよりも、俺には聞かなければいけない事があった
「その話は、後から考えるとして…聞くけど…お前は何だ?」
石は、その質問をしばらく考えるような気配を見せ…
「物分りの悪い小僧じゃな…妾は、再会を司る…」
「そう言った存在そのものが、俺には理解出来ない、見た目は無機物の石であるお前が…なぜ、意思疎通が出来る?」
いままで関係ないように、思っていたが…そうだ…なぜ、俺はこいつと話せる?
それに、再会を他にもさせた相手がいるなら…ああ、頭が混乱してきた…
「そうじゃな…妖怪…神…悪魔…化け物…いろんな呼び名があるのじゃが…その真名は妾も覚えておらん」
俺は石を見つめた
「じゃが、別に良いじゃろう!!おまえの願いを叶えれば…妾は、妾の再会したいものに出会えるのじゃ…再会できるのじゃから…そのときに、妾の事を聞けばいいのじゃ!」
石はそう言って、笑った…だけど…その笑いは…この後自分はどうなるのかと言う恐れを感じているように思えた…