26.そう信じていた
そう信じていたのに…俺は…手の平の紅い石を見た…
どうやって、見つけたのかと言うと…俺は見つけた状況を思い返した…
知らない町の喫茶店に置いていかれた俺は…周囲を見た…
右も左もわからない…
「確か…神楽坂町って…言っていたよな?」
土地の名前は、桜庭から聞いていたが…場所の名前がわかっても…
目的地(自宅)への帰り方がわからなかった…
「待て…この歳で迷子って…恥ずかしくないか?…いや、こんな訳のわからない所に置いて行く…あの桜庭がわからない…」
俺は、途方にくれながら…さ迷った…
そして…夕暮れ…歩き始めて、まだ、10分も経っていないが…さすが…冬…
5時40分で、もう日が…沈みかけ…
いつの間に川沿いに着き…俺は、川に沿って歩いていた。
「あの鉄橋は…」
俺は見覚えのある鉄橋を見つけ安堵した。
確か…街外れの雑貨屋の近くの鉄橋だった…少し遅くなるが…無事に家に帰れる…
そう思って、俺は鉄橋に向かって走り出した。
そして、鉄橋を渡っている途中…ガツン…
俺の頭に何かが当たって、俺は周囲を見た…
俺の頭上で鴉が二羽鳴いていた…どうやら…鴉が何かを俺に落としてきたようだ…
「馬鹿鴉!!」頭上の鴉に俺は、怒鳴り散らすと鴉は、俺をバカにする様に鳴くと、飛び立った…
「逃がすか!!」俺は、俺の頭の上に落ちてきたものを探し投げ返そうと思ったが…
どこにもそんな物は無かった…川にでも落ちたのか…
俺は、そう考え…イライラしながら家に帰った
「雅春君、お帰りなさい!もうすぐ料理が出来るって、お父さんが言ってましたよ」
「ああ、ありがとう〜じゃあ、先に着替えてくる」
家に帰ると、冥乃ちゃんが迎えてくれた。
俺は、部屋でブレザーを脱ぐと…ことん…
何かが落ちる音がして、俺はその音のした方に眼を向けると…
紅い石が…床に転がっていた…
まさか…あんな話を聞いた後に、この石を見つけるなんて…
「俺の頭に落ちてきたのはこれか?」
俺はその紅い石を手に取った…石と言う表現はこの石には似合わないと思った…
「石と言うよりも宝石だな…」
光物を鴉は好むという話を聞いたことがあった…どこかの落し物を鴉が拾ったのか?
だが…拳の半分くらいの大きさなのに…この石には重さが無かった…
だから…ブレザーに付いていても気づかなかったのか?
いや…この軽さを…石と考えるのが間違いではないのか?
「そうか…これはイミテーションかプラスチックだな…」
俺がそう言った瞬間…
「だぁ!!!!妾を模造品扱いするな!!」
石がそう叫び、俺は慌てて石を落とした。