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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法界変革編
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-鎖の少女と鎌の少女-

 まず、手数が違いすぎる。

 ベルの武器である鎌、固有名を『魔法鎌ヴラド』は、魔力によってリーチが変わる魔法具だ。

 だが、それでも鎌は鎌。

 目の前に『浮遊』している少女の武器であろう数十本の『鎖』には相性が悪すぎる。


「はぁ……はぁ……」

「…………」

「く……っ!」


 また高速で鎖が横薙ぎに払われた。

 それをヴラドで受ける。が、それにより一気に体の力が抜ける。


「あぁぁぁぁッ!!」


 ただでさえ相性が最悪であるのに、どうやら相手の鎖には『触れたものの魔力を吸収する』という特殊能力が付与されているらしく、ヴラドで攻撃を受ける度にこのざまである。

 回避しかない。けれど、速すぎるのだ。


「どうすれば……セナ、早く……ッ!」

「…………ッ!」

「ぐぁ……っ! あぁぁぁぁッ!!」


 ヴラドに魔力を込め、リーチを伸ばして相手を狙おうにも、魔力を吸われすぎて足りない。

 万事休すかな……

 それにしても、あの少女……一見年齢は私やセナたちと大して変わらないはずなのに、あの技量……


「君、実験体の子……?!」


 セナたちと過ごした少しの間に聞いた話だ。

 悠人がフラム様に付いてくるきっかけになった事件。

 エレナとエレナの率いる魔獣がセナたちの所属していた学校を襲撃した。

 その時、エレナにより男女2人が誘拐されたらしい。

「おもしろい作品」という意味深な言葉を残して。

 もし、本当に誘拐された少女ならば、決してセナと悠人には会わせてはいけない。

 特に、この事件で深く心を傷つけている悠人には……


「"風よ来たれ。妖気を纏いて吹き荒れろ"……ッ!」


 相手に不可視の風の刃を無数に飛ばす単対象攻撃魔法『カマイタチ』。

 効果の類似した『エアスライサー』の上位互換だ。

 違いといえば、射出する刃の数。

 それに加え、『エアスライサー』は正面にしか射出出来ないのに比べ、『カマイタチ』は全方位から放つことが出来るということだ。

 単対象攻撃魔法と言われればそうかもしれないが、領域魔法と言っても過言ではない、魔法界で日々討論されている困った魔法でもある。


「…………」


 少女の周り、全方位に放ったはずの不可視の風の刃は、常に少女の周りを這うように回っている『鎖』によって全て迎撃された。

 少女は何事も無かったかのように無表情だ。

 いや、表情を消されているのかもしれない。

 だが、そんなことは今はどうでもいい。

 今は相手より自分の心配を……


「ゲホッ! ゲホッ! はぁ……はぁ…………ッ!」


 激しく咳き込む。

 抑えていた手のひらを見ると、案の定大量の血が付着していた。

 意識が朦朧とし始める。

 わかっていた。

 けれど……


「お……母さ……ん……」


 そのまま、ベルの意識は深く暗い場所へ落ちた。



 ───────────────────────



 私は、生まれつきある病気に犯されています。

 その病気は、小さな私にはとても残酷なものでした。

 魔法使いが魔法を使う時、必ず魔力を流すルートがあります。

 肝臓辺りにあると言われている『魔力核』という、魔力を作り出し貯蔵する器官から、『魔力管』を通して、脳内にある『魔法髄』に魔力を流して魔法を使います。

 どうやら私は、生まれつき『魔法髄』が正常に機能していないらしく、魔法を使うことが出来ないとお医者さんに言われました。

 一度、興味本位で「本当に魔法が使えないのかな?」と思って、魔法を使ってみたことがあります。

 魔法使いなら誰もが通る基礎中の基礎魔法『ファイア』。

 料理をする時などに、火種として使う魔法です。

 結論として、私の詠唱した『ファイア』は成功しました。

 それも、普通の魔法使いよりも大きな火種です。

 それを見たお医者さんや両親はとても驚いたそうです。

 けれど、その後私は、激しく吐血し、意識を失いました。

 それから1週間生死の間をさ迷ったそうです。


 それからというもの……


 学校生活も、何もかも、嫌になってしまいました。


 魔法を使えば自分を殺してしまう魔法使いなんて、魔法使いではないのです。


 14歳になった秋、転機は訪れました。

 こんな人生に耐えきれなくなった私は、自殺しようと思ったのです。

 家にあったナイフを持って、人気のない山奥で、喉にナイフの先を当てました。

 そのまま深々く貫いてやろう。そう思っていた矢先のことです。


「何してるんだ? 人生に嫌気がさしたのかな?」


 そう言って、私の手からナイフを取り上げたのは、炎のように赤い髪をたなびかせる美しい女性でした。


「か、返して……ッ!」

「ダメだよ。何があったのか、私に言ってごらん?」

「あ、あなたには関係ないッ! 魔法使いに、魔法の使えない私の気持ちなんてわからないッ!」


 私は胸に溜め込んでいた憎悪を全て目の前の女性にぶつけました。

 けれど、女性はニコニコした顔のままです。


「私は君のような尖った子が好きだ。よし、決めた!」


 女性は私の手を取って言いました。


「今日から私の元に来い! 嫌気なんて吹っ飛ぶくらい最高の人生を送らせてやる!」


 この言葉を、私は忘れたことはありません。

 魔法の使えない魔法使いとして、誰にも求められなかった私が、誰かの役に立てるということが、嬉しかったのです。

 私はその日から、自らの家を出て、フラム様のメイドになりました。


 それからというもの、楽しいことばかりではありませんでしたが、色々なことを経験しました。

 発見もありました。

 私は魔法こそ使えませんが、魔力を放出するだけなら魔力髄を通さないので使えるということです。

 だから、私は魔力起動式の魔法具なら難なく使えます。

 それと、魔力核に溜め込むことのできる魔力の量が、普通の人の2倍以上もあるということ。

 私は、私にしかできないことがいつかできると思います。

 家に残してきたお母さんやお父さんのためにも、がんばります!

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