-俺達なら-
格が違う。
俺とデュークとでは保有魔力も干渉力も天と地ほどの差がある。
王国最強の魔法使いであるフラムとティルをも倒したこの男に、俺が勝てる道理が無い。
せめて何か弱点を……
月詠の攻撃によって隻腕になったこと?
いや、デュークは攻撃に手は使っていなかったはずだ。
再生出来ないように消し飛ばす?
俺の魔力じゃ無理だ。
一体どうすればこいつに勝てる……!
「僕はね、ずっと昔からこの世界を見てきたんだ。この世界が始まってからずっと……」
「お前……神なのか……?」
「どうだろう? 僕にも分からない。ただ、僕の役目は世界の均衡を保つこと、それだけ分かってたよ」
「殺して……殺して均衡なんて保てるかよ……!」
「そうさ。異常な者は消す。それで世界の均衡は保たれる」
デュークが右手を上げた。
すると何も無かった所に1本の槍が現れた。
『魔力視』で見なくとも分かる。
あれに貫かれたら確実に死ぬ。
やらなければ、俺が。
これ以上そんな理不尽な理由で殺させはしない。
「絞りとれよ……『ディバイン』ッ!!」
「限界を超える……素晴らしいね。見せてくれ、その実力。そして僕をこの地獄から解き放ってくれよ……ッ!」
俺の身体を白と黒の魔力が渦巻く。
とっくに限界を迎えた身体に更に先へ行くようにと促す。
この身体を天使と悪魔に差し出したって構わない。
ここで奴を殺せるのなら。
「そんなに死にたいのなら……殺してやるよッ!」
「出来るかな!」
「出来るさッ!」
俺がディバインを横薙ぎに振り抜いたと同時に爆風がデュークを叩く。
もちろんデュークはビクともしない。
そんな事も百も承知だ。
なぜなら吹き飛ばすなんて狙っていないのだから。
『『主の願い、聞き入れた。ここに契約を成立させる』』
「俺達ならッ!」
デュランダルに宿る天使と悪魔が声を揃える。
そして莫大な魔力が俺の中に流れ込んだ。
その魔力量はかつて倒したラグナロクに引けを取らない。
白と黒の鎧が俺の身を包む。
「はは……やっぱり君には『資格』があるよ……」
デュークも俺の変化に驚きを隠せないらしい。
俺自身驚いている。
こんな魔力、人間の俺が保っていられるわけがないのだから。
一瞬で終わらせる。
「"穿つ必殺のゲイボルグ"ッ!」
デュークが叫んで右手を振り下ろした。
だが、何も起こらない。
「どうしてだ……まさか……ッ!」
「あぁ……この一帯は俺の魔力で埋め尽くした。もう魔力で武器を召喚出来ない」
「なるほど……よく分かったじゃないか! でも不死の僕は殺せないよ?」
「いや……」
さっきの一振はデュークの武器である魔力の槍を封印するためのものだ。
そして、不死への対策もある。
黒い影が音も無くデュークの背後へ現れた。
真っ赤な魔力を纏った大鎌を掲げて……
「『ブラッド・リバース』」
「この僕が感知出来ないだと……ッ! 吸血鬼……僕はまたお前に……ッ!」
ヴァンパイアの末裔、ベルは小さなシリンダーに入った俺の血を舐めとった瞬間、魔力が爆発的に増えた。
特定の血を摂取する事で発動出来るベルのオリジナル覚醒魔法『ブラッド・リバース』。
これにより、ベルはヴァンパイア本来の、もしくはそれ以上の力を発現させることが出来る。
「『ヴァンパイア・ナイト』ッ!」
突然の敵の増加に戸惑うデュークを血色の魔力が包み込んだ。
完全な吸血鬼化をしたベルだけが詠唱可能な領域魔法『ヴァンパイア・ナイト』は領域魔法の中でも『結界魔法』に位置付けされる。
この血色の球体に飲み込まれた者は何も出来ない夜の世界でただ閉じ込められ、魔力をジワジワと吸収されて封印されるのだ。
この魔法の強みはそれだけではない。
内部からは何も出来ず、外部からは影響を与えられる。
つまり、こちらからの攻撃は届くのだ。
振り上げられたデュランダルが一際強く輝く。
『主の望む天罰を』
『主の望む地獄ヲ』
「俺達の勝ちだ……」
デュランダルがスッと振り下ろされた。
「『エクスティンクション』」
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その日、『特異点の観測者』はこの世から姿を消した。
王国最強戦力であるフラム・レイズと多くの魔法使いを犠牲にし、そして王国の辺境地を地図から消滅させて。
王専属魔法使いの一人、ティル・フェレラルは致命傷を受けていたものの何とか回復し、現在療養中。
女神月詠に憑依されていた真田凛華は魔力枯渇によって意識不明。
《魔法騎士団》団長にしてデュークを国土と共に吹き飛ばした張本人であるセナ・レイズは原因不明の何かによって意識不明。
この事件で王国が犠牲にしたものは非常に多かった。




