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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法界の危機編
59/66

-恐れていたこと-

 覚醒魔法『ディバイン』。

 その力により純白の鎧が俺を包む。

 そして雷が身体を駆け巡った。

 今回は『天使モード』らしい。

 俺の急激な魔力上昇に流石の月詠も目を見開く。


「神力……天使の力か」

「いくぞ……ッ!」

「見せてみよ……紛い物の神の力を」


 地面を蹴ると同時に腰からイカロスを投擲。

 その数8本。

 どれも不規則に空中を飛び回り、月詠に襲いかかる。

 俺の方が手数で圧倒しているのに月詠は一切動じない。

 目にもとまらぬ速さで月詠の背後を取る。

 全方位からの攻撃。

 それも超高速の。

 狙いを定め、魔法を行使。


「『リバース』……ッ!」


 世界が灰色に染まる。

 時間が止まった。

 動けるのは俺だけ。

 先行させたイカロスに気を取られている月詠は背後の俺に無防備だ。

 デュランダルに『エンハンス』で氷属性を付与し、全力で斬る。

 剣速も『ディバイン』の身体強化によって音速を越えている。

 振り切ったと同時に爆風が体を叩いた。


「これでどうだ……ッ!」


 手応えはあった。

 どんな敵であろうと、俺のオリジナル魔法の組み合わせがあれば屠れる自信がある。

 突然の爆風に悠斗もベルも一瞬驚いたが、俺のオリジナル魔法だと理解し、即座に追撃を加えた。

 万が一のこともある。

 徹底的にやらねばならない。

 砂煙がだんだんと晴れていく。


「警戒を怠るなよッ!」

「当たり前だな!」


 先程まで月詠がいた場所には影が無かった。

 やったのか……?

 俺の攻撃によって吹き飛ばされたという事もありえる。

 十分にありえるのだが、本当にそうなのか?

 俺の不安が的中した。

 背後にとてつもなく小さく抑え込まれた殺気が現れた。

 いや、抑え込むというよりは消している。

 それでも気付けたのは『ディバイン』のおかげだ。

 でも、全く動けない。

 覚醒魔法でも間に合わない速度の斬撃が俺を斬り裂く。

 背中を斜めに深々く。


「ぐぁ……ァァァッ!」


 凄まじい痛みが全身を駆け巡る。

 純白の鎧が魔力になって霧散した。

 たった一太刀で『ディバイン』が解除された……?

 次の瞬間、俺をとてつもない倦怠感が襲った。

 まさか……ッ!


「ひ弱な身体よ……一振で吸いきれるとは……」


 見渡せば悠斗もベルも倒れ込んでいる。

 悠斗は腕を、ベルは足を浅くだが斬られていた。

 2人とも動けそうにない。

 この倦怠感。

 俺は昔なんとも味わってきた。

 幾度となく繰り返した魔法の修行。

 魔法行使の末に起きるどうしようもない壁。


「魔力……切れ……」


 最も懸念していた魔力切れが起こってしまった。

 それは本来有り得ないはずだ。

 少なくとも俺は自分の残り魔力を把握していた。

『ディバイン』の力でほぼ無償で魔法を使える。

 だから魔力が尽きることなんて無い。

 それに悠斗もベルも同時に魔力切れだなんて有り得ない。

 そうなれば考えられる原因は1つだけ。

 目の前の凜華の身体を乗っ取った女神の仕業……


「余の名を冠するこの黒刀は『斬った対象の魔力を吸収する』力がある……それも、夜が深ければ深いほど力を増す。ここは余の結界の中。その効果は最大と言えよう」


 最悪の能力じゃないか。

 魔力の回復が著しく遅いこの人間界において『魔力吸収』は相性が悪すぎる。

 倦怠感のせいでもはや喋ることもままならない。

 悠斗もベルも目が虚ろで意識が離れていくのを必死に堪えている様だ。

 俺も同じようなもので、限界は近い。


「もう口を開く事も出来んか。興醒めよ。余の魔力の一部になるがいい……ッ!」


 月詠が黒刀を振りかぶった。

 もはやここまでかと諦めかけたその時、月詠の体が小さく跳ねた。

 一体何事かと思っていると、月詠は黒刀を鞘に収めた。


「お主らは運が良い……そろそろ霧の命の限界が近い。ここは撤退。見逃してやろう」

「こ……の……ッ!」

「次会う時はもっと余を楽しませろ。楽しみにしておるぞ」


 月詠はそう言って霧を抱えて姿を消した。

 魔法では無い瞬間移動。

 結界が解け、世界が歪む。

 同時に俺の意識は完全に手放された。

 悠斗もベルもほぼ同時に……

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