表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法界の危機編
56/66

ー不意打ちー

 

「さて、我々も反撃する時が来た。我が同士、教徒達よ……私に力を貸してくれッ! 世界を壊しッ! 創り替える時が来たのだッ!」


 セナ達が人間界に旅立ったのとほぼ同時刻。

 真っ黒のローブを羽織り、金色の長杖を掲げた男がいた。

 彼は己の魔法で未来を視、そしてこの計画を進めてきた。

 目的は世界の破壊と想像。

 このくだらない魔法の世界を破壊し、無に返す。

 そして、新たなる世界を己が手で創り出してやる。

 彼の名はクロム・()()()

 最多数の魔法を操る最強の魔法使いの1人である。




 ───────────────────────




「あの……ちょっといいかな?」


 無事、人間界の住宅街に到着した俺達がまず遭遇したのは、紺色の服装の男性2人組。

 腰には拳銃と鉄の棒。

 まあ、警察だ。

 一応人間界で過ごしていたからひと目で分かる。

 そして、俺達が呼び止められた理由も分かる。

 服装だ。

 流石に鎧は着ていないとはいえ、別世界の服は人間界とはセンスが違う。

 その上、念の為に警戒して歩いているのだ。

 完全に不審者である。

 それはもう声をかけられて当然だろう。


「あのさ、君達まだ学生だよね? ご両親に連絡した方がいいかな?」


 非常にまずい。

 こういうときに取る行動はひとつしかない。

 同じく慌てていたベルと悠斗に合図を送り……


「逃げろッ!」

「なッ!? ま、待ちなさいッ!」


 とにかく走る。

 警官が俺達に追いつくことはまずありえない。

 鍛え方が違う。

 さらに、俺の指示でクネクネと曲がっている。

 10分程走り続けた後、追ってくる気配が無いことを確認して休憩を取った。


「危なかった……」

「に、人間界って怖いんだね……」

「流石の俺も警官に追われたのは初めてだよ……」


 初めての人間界に少しソワソワしていたベルには刺激が強すぎたかもしれない。

 こういう時、悠斗なら慣れていて茶化してくれると思っていたが……


「…………」


 悠斗は先程からずっと顎に手を当てて黙々と考えているようだ。

 それは俺が今までに見たことの無いくらい真剣な顔だった。

 久しぶりの人間界に思う事があるのだろうか。

 あって当然か。

 いきなり魔法に巻き込まれて、いきなりフラムを追って魔法界にやって来たのだから。


「悠斗?」

「あぁ、ごめん。ちょっと考え込んでた。これからどうするのさ? 行くあて、あんのかよ」

「一応、ね。行く前にフラムからおおよその場所を示した紙を貰った。だから、まずはそこに行ってみよう」

「なるほど……実家か何かの場所だろうなぁ」

「そういうこと」


 とりあえず目的地はある。

 そこに向かって行けば何かあるはずだ。

 そう信じて俺達は歩き始めた。




 さて、目的地に到着した。

 フラムがなるべく近い所に飛ばしてくれていたようで、すぐに着いた。

 なかなか大きな屋敷だ。

 凜華はお金持ちだったのか……?

 とりあえずだ。

 付近の警戒を怠らず、凜華を探そう。

 ただえさえ魔力に限りがあるのだ。

 魔力の消費は抑えたい。

 屋敷の門をこっそりと潜り、侵入する。

 これ、こっちの世界じゃ犯罪だっけ……?

 少し呆けた事を考えていた矢先、ほんの一瞬だけ殺意のこもった視線を感じた。


「悠斗、ベル……」

「あぁ、わかってる」「うん、見られたね」


 流石は2人共。

 言わなくともこれくらいは分かるか。

 さて、先ほどの殺気、霧ではなさそうだがかなり強かった。

 それでも、殺気が漏れていたのは不慣れな証拠。

 殺しに慣れた者は殺気なんて漏らさない。

 経験と実力が釣り合っていない感じだ。


「油断するなよ……!」


 そう言って気を引き締めようとした次の瞬間、俺に向かって回転する刃物が飛んできた。

 それもとんでもない速さで。

『バーサク』も『クイック』も使わずに回避しようとするが、間に合わない。

 浅くだが横腹を斬られる。

 手裏剣か……!

 そして、いきなり身体から力が抜けた。

 とんでもない疲労感。

 これは魔力を使いすぎた時に起こる疲れに似ている。

 まさか……


「セナッ! 無事か!?」

「あぁ! でも気をつけろ、飛んでくる手裏剣に当たったら魔力を吸われるッ!」

「ほんとに!? それはまずいよ……!」


 魔力の自然回復が無いこの人間界において、最も恐れていた物がこんなに早くも……

 魔力吸収はベルが使う『ドレイン』と同じで、相手の魔力を吸い取る。

 あの手裏剣には『ドレイン』が付与されていたのだ。

 それにしても、どうして魔法界についての情報が無いに等しい人間がこんな魔法具を……

 駆け寄ってきたベルが消費魔力の少ない回復魔法を傷口にかけてくれる。

 本当に助かる。


「ありがとうベル。よし、周囲の警戒を強めて。見つけたら一気に叩くよ」

「うん! わかった」


 手裏剣が飛んできたのは傷口から見て上から。

 敵は屋敷に2階にいる。

 集中しろ。

 魔力が見えなくても、物音に耳を澄ますんだ。

 微かな音も逃すな……

 悠斗とベルの息遣い、優しい風の音。

 そして、ほぼ無に等しい足音で走る音……それが1つ……


「見つけた……ッ! 敵は1人ッ!」

「俺も見つけた……一撃で……ッ!」


 悠斗が『魔法弓アポロン』を呼び出し、その弦を勢いよく引く。

 一応、武器を呼び出すのにも魔力を消費するが、本当に微量しか消費しない。

 矢が放たれた。

 矢は2つに分裂し、敵を追尾する。

 敵も狙われている事に気づいたようで、回避しようとするがそうはいかない。

 付与魔法『ホーミング』。

 その魔法付与された物体は狙った物を激突するまで追い続けるようにする魔法だ。

 それに気づいてももう遅い。

 悠斗は初めから射抜くつもりはなかった。

 上手く誘ってこちらが有利な外に出てもらう作戦だ。

 悠斗の思惑通り、焦った敵が屋敷から飛び出てきた。

 追随していた矢はそこで消滅する。

 正体を現せたのは……


「ちびっ子かよ……」

「悠斗、警戒を解くなッ!」

「いや、まさかガキとは思わねぇだろ!?」


 そう、敵の正体は少女。

 腰の後ろに小太刀を、両腰には手裏剣と投剣を携えているように見える。

 服装は暗い青色の着物、髪は黒のポニーテール。

 鋭い眼光が俺達への敵意をむき出しにしている。

 相当に腕がたつ剣士だろうが、所詮は多勢に無勢。

 近、中、遠の全ての距離に対応出来る俺達が相手では分が悪いというもの。

 それでも諦めないか……


「私は桐下(きりした)マツリ……貴方達を倒す為にここにいる」

「無関係の人間は出来る限り傷つけたくない。けど、引く気は無いな……?」

「無論。それに無関係ではあるまい。私は霧様を師に持つ真田流短刀術の使い手だ。ゆえに、全力でかかってくるといい」

「魔法を使わないからと言って、あんまり舐めるなよ……ッ!」

「あぁ、勿論だとも……だが……」


 俺は『魔法剣デュランダル』を呼び出し、己の脚力だけで一瞬にしてマツリの懐へ潜り込む。

 取った……ッ!

 だが、一抹の不安が俺を襲った。

 直後、攻撃範囲に入っていたはずの俺の身体が後方へ吹き飛ぶ。


「ぐぁ……ッ!」


 こんな現象、いくら真田流でも不可能だ。

 なら考えろ。

 こんなことが出来るのは……

 まさか、魔法……?


「私が魔法を使えないとは言っていないぞ……? と言っても魔法ではなく『()()』だがな」

「妖術……? そんなもの聞いたことないぞ……」


 地面に体をぶつけた痛みが引いてくる中、マツリがいつの間にか抜刀していた小太刀を鞘に音を鳴らせて納刀した。

 チャキン……

 そんな軽々しい音が静まった空間にひびく。

 そして……


「『真田流短刀術・五月雨』……」

「な……うぁ……」


 全身から血が吹き出た。

 斬られていた……あの吹き飛ぶ前の一瞬で……?

 速すぎる……目で捉えきれなかった……

 マツリは残った悠斗とベルの方を向いて言った。


「次。こうなりたい奴はかかってくるといい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ