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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法騎士団編
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-受け継がれる遺志-

 

「おはようございます、セナ様。体調の方はどうですか?」

「おはようアナスタシア。問題無いよ」


 タウラス討伐から1週間が経った。

 俺は未だ病院のベッドの上にいた。

 あの後5日も眠ったままでいたらしい。

 フラムとベルはあの後すぐに目を覚ました。

 アナスタシアもこの調子で元気だ。

 ただ、ステラだけは閉じこもったままだった。

 原因は分かる。

 カルナの死は《魔法騎士団》の全員に影響を与えた。

 皆明るく振舞ってはいるが、少し影があるように思う。


「そういえば、カルナの葬式は明日だっけ?」

「えぇ。セナ様はどうしますか? 外出の許可は……?」

「もちろん行くよ。許可も取ってる。俺が行かないのも変な話だろ?」

「そうですね。皆さんにも伝えておきます。私はそろそろ……また明日お会いしましょう」

「うん。また明日」


 アナスタシアは少し悲しい笑顔を浮かべて病室から出ていった。

 俺は枕に頭を預けて目を瞑る。

 カルナの死以外にニュースはあった。

 俺が使う『ディバイン』、凜華の『瞑想』などの自己強化魔法の範疇を越えた魔法を新しい枠組みとして括り直すことになったのだ。

 その名も『覚醒魔法』。

 この対応に大した意味は無いが、王国のお偉いさん達がそう決めた。

 それと、タウラスやマリー達のその後の話だ。

 タウラスは俺が見た通り完全に消滅した。

 王国で最も広範囲を索敵出来る十二神獣天秤座・リブラを使役する魔法使いがタウラスの魔力を見つけられなかったと言っているらしいのだ。

 そうなればもう消滅したと言い切っていいだろう。

 次にマリーだが、彼女はまだ生きている。

 と言っても完全監視の中で療養中だ。

 もちろん魔道具によって魔法は一切使うことが出来ない。

 それでも死刑になっていないのはフラムがいたからだろう。

「こいつにはまだ利用価値がある」と言う理由でフラムの管理下にあるらしい。

 1番驚いたのは《背理教会》幹部のマナトだ。

 マナトもマリー同様に生きていた。

 俺が心臓を貫いてフラムの元へ向かった後に、ベルが微量ながらに治療したらしいのだ。

 それにより一命を取り留め、俺と同じ病院に入院している。

 もちろん《背理教会》の幹部という事実を伏せて、だ。

 幹部としての彼の顔を知るのは襲撃を受けた時に居合わせた数人の魔法使いのみ。

 フラムの手により大半の記憶を抹消されているので害は無い。

 彼はこれで良かったのだろう。

 最後にもう1つ。

 見えていなかった俺の左目が天使に力を借りた『ディバイン』以降視力を取り戻したのだ。

 これで左側に隙ができることも無い。


「何考えてたの?」

「ッ! べ、ベルか! びっくりさせるなよ……」

「酷いなー……ずっと居たのにー……」


 いつの間にか俺の病室にベルがいた。

 正直全然気づかなかった。

 流石は夜の王たるヴァンパイアの末裔。

 まあ、夜じゃないけど。


「お見舞いに来てくれたのか?」

「そうだよ。それ以外無いでしょー」

「それもそうだな。ありがとう。俺は元気だよ」

「そっかそっか! それは良かった! それと……ね……?」

「ん?」


 ベルが少し恥ずかしそうに顔を赤らめて下を向いた。

 一体何だろう?

 目を瞑って考える。

 まだ魔力切れのだるさが残っているのだろうか?

 そうだとすると大変だ。

 すぐにでも休んだ方が良い。

 顔色を見ようと目を開けると、すぐ目の前にベルの顔があった。


「ッ!」

「…………」


 驚いて声も出なかった。

 ベルは顔を真っ赤にしたままでいる。

 その状態のまま10秒ほどいた。

 さすがにこのままではいられない。


「べ、ベル……?」

「あのね、セナ……」


 俺が我慢出来ずにベルの名前を呼んだと同時にベルも口を開いた。

 その顔は真っ赤に染まりつつも真剣そのものだ。

 ベルは顔を少し離してから話を続けた。


「私と……『契約』してほしいの……!」

「け、『契約』ッ!? 一体何の……ッ!」


 いきなりの話題につい大声で驚いてしまった。

『契約』と言っても色々ある。

 精霊と『契約』するという意味でも使うし、召喚獣などを使役するための『契約』という意味もあるのだ。

 俺にとっては使役するという意味が強い『契約』をベルと……?

 何を考えているんだ俺は……!


「えっと……私のオリジナル魔法なんだけどね……」


 それから数分に渡ってベルのオリジナル魔法『ブラッド・リバース』について聞いた。

 その発動条件に必要な契約者を俺にやって欲しいと言うのだ。

 理由を聞くと、「それは秘密!」と言われたので何も言えない。

 だがまあ、断る理由も無い。

 戦力が増えるのならば喜んで力を貸そうじゃないか。

 ということで、『契約』することになった。


「で、『契約』ってどうするんだ?」

「えっと……んーっと……ちょっと……目を、瞑ってて……?」

「あ、あぁうん。分かった」

「じっとしててね!」


 言われるがままじっとしておく。

 あっても吸血程度だろうし恐ることはない。

 そう思っていたのだが……


「んッ!」

「!?」

「こ、これで『契約』したから! 私帰るね! じゃあね!」


 まさかキスされるとは思わなかった。

 それもかなり勢いよくされた。

 意外と柔らかいんだな……

 と感想を思い浮かべている場合では無い。

 本当にこれが『契約』の儀式なのだろうか?

 聞きたくても、もうベルは病室を出ていた。

 何と言うか、色々唐突すぎて驚いた。

 これは明日の葬式も少々先が思いやられる……




 ───────────────────────




 たくさんの花々に囲われ、カルナの遺影があった。

 カルナ・グランの葬式はちょうど終わったところだ。

 驚いたのは参列者の人数。

 家族と俺達だけだろうと思っていたが、命を救われたという名目で100人近く参加していたのだ。

 カルナの両親は泣きながらも喜んでいた。

「息子は立派に志を遂げて亡くなったんです……これで良かったんです……」と。

 皆が帰る中、俺は1人カルナの遺影に向かって、お前の遺志は俺が継ぐ、と誓った。

 カルナが居なくなっても俺達のやる事は変わらない。

 《背理教会》を潰す。

 そして王国の平和を取り返す。

 全員そのつもりだ。

 遺志を継ぐつもりなのは俺だけではないらしい。

 カルナの遺志は《魔法騎士団》が継ぐ。

 きっと彼もそれで喜んでくれる。


「セナー! そろそろ行くぞー」

「あぁ、分かってる!」


 悠斗が手を振って俺を呼んでいる。

 その周りには《魔法騎士団》の皆がいた。

 もちろんフラムとティルも。

 まだまだやる事は山積みだ。

 新しく入った情報によると、残る《背理教会》幹部の人数は2人。

 そして、トップの魔法使い。

 この3人を倒すまで俺達の戦いは終わらない。


「カルナ……約束だ。《背理教会》は俺達《魔法騎士団》が必ず壊滅させる……ッ!」


 立ち止まらない。

 カルナの死を無駄にしないためにも。

 いつか平和な魔法界を取り戻すのだ。

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