-仲間の祈りが-
いつの間にか真っ暗な世界にいた。
あれ……?
俺は一体何をしているんだろう……?
目の前には動画が流れている。
恐らく今俺が見ている光景だろう。
カルナが死んだ。
それを見て思い知った。
俺は響也の時から何一つ変わっていなかったのだ。
だから、カルナを死なせた。
あぁ、思い出した。
俺、暴れたんだっけ……
よく分からないけど、稀にあるのだ。
怒りで我を忘れることが。
本当に別の人格になっているような気がするのだ。
まあ、二重人格なんてありえないし、俺の心の闇が出てきているのだろう。
こうなったら俺は止められない。
ただ見ていることしか出来ない。
戻る方法はある。
差し伸べられた手を握ればいい。
今だって俺の周りに手は差し伸べられている。
けれど、ダメなのだ。
「俺には……戻る資格が無いッ! みんなを傷付けたッ! この剣でッ!」
叫んでも声はどこにも届かない。
響いて響いて消えるだけだ。
映像は俺の視点で映されている。
まただ。
また傷付けた。
今度はステラを。
もう止められない。
差し伸べられた手はもう消えていた。
そりゃそうだ。
自分を傷つけた奴に誰が手を伸ばす?
こうやって仲間が離れていくんだな……
「俺は……どうしたら良かったんだ……?」
意味の無い自問自答。
どうすれば良かったかなんて、わかるわけがない。
ベルとフラムを運ぶ仕事を任せなければ良かったのか?
いや、それでは別の誰かが犠牲になっていたかもしれない。
ならば、《魔法騎士団》なんてもの作らなければ良かったんじゃないか?
そうだ、それならカルナは死なずに済んだ。
ステラだって傷つかなかった。
『でも、それではまた別の方が犠牲になったかもしれませんよ? 例えばベルさんとか』
「じゃあどうしろって言うんだ……? 俺にはもうどうすることも……」
『なら壊せばイイッ! 嫌なものは全部拒絶しちゃえばいいのサッ! 今が正解だゼッ!』
『おやめなさい。本当に貴方は性格がねじ曲がってますね……主、いいですか? 下を向いてはいけません。主は悔やんではいけません。守るために戦うのです』
頭の中の天使と悪魔とはこの事を言うのだろうか。
確かに俺は悔やみ続けている。
響也が死んだ事も、カルナが死んだ事も。
全部俺に何か出来たのではないかと考えてしまう。
その答えはいつも「出来なかった」になる。
支えてくれると言ってくれた2人を、俺は今傷つけている。
大切な仲間をボロボロにして、時には死なせて……
こんな俺に何が出来るというのだ。
もう悪魔に身を委ねて閉じこもってもいいじゃないか。
俺に守る力なんて無かったんだ……
「俺は……どうしたらいい……?」
『その身を委ねなさい。私が力を貸しましょう』
こんなのただの妄想だと思う。
けれど、天使の言葉は俺を動かした気がした。
悔やむな……上を向け……
響也とカルナは死にたくて死んだわけじゃない。
殺された。
けど、2人とも悔いていない。
響也は笑っていた。
最後まで笑っていたんだ。
湖に身を投げるその時ですら。
カルナだって……
満足気な笑顔が死に顔だった。
そうだ、2人とも悔やんでいない。
悔やんでいたとしても下を向かなかった。
上を向いていたんだ。
「俺が……俺が悔やんでどうする……ッ! 俺は2人の遺志を継がなきゃいけないのにッ!」
目の前に1本の手が差し伸べられる。
2本、3本と差し伸べられる。
そして、画面に映るボロボロの3人。
あいつらはバカだ……
こんなに傷付けた俺に手を差し伸べるなんて……
「皆が悔やんでないんだ……俺は行かなきゃ……!」
『えぇ。それで正解です。貴方も早く主の身体から出ていきなさい』
『チェッ! 折角楽しんでたのにヨッ! まあいいカ!』
俺は差し伸べられた手を握り返す。
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もうボロボロだ。
やはり今のセナは普段とは段違いで強い。
「皆……大丈夫か……?」
「大丈夫……です……」「当たり前……やで……!」
「強がっちゃって……!」
タウラスが再生を始めている。
早く戻って来い……!
アポロンの弦を引き、思い切り放つ。
放たれた矢は5本。
だが、すぐに叩き落とされる。
セナから感じる殺意が一段と強くなった。
「俺は……壊すんだ……ッ! 壊さなきゃ……いけないんだよッ!」
「壊さなくたって守れるッ! お前は俺を初めて襲われた時に守ってくれただろッ!」
「うるさいッ! 守れないんだッ!」
魔力が見えない俺にでもはっきりと分かる。
セナが纏う魔力はただの魔力じゃない。
さしずめ負の魔力だ。
近くにいるだけでも鳥肌が立つような嫌な感じがする。
恐ろしい。
けど、それでもセナを取り戻さなければならない。
力ずくでも取り戻すッ!
「"一条の光"ッ!」
「邪魔するなぁッ!」
「うあッ!」
浅くだが斬られた。
血が滲み出る。
でも、戦えないほど負傷したわけじゃない。
「凜華ッ!」
「真田流双剣術……『夜桜』ッ!」
「邪魔しないでくれッ!」
「嘘やん……ッ!」
凜華の高速攻撃すらも軽々と受け流され、反撃を受ける。
全員満身創痍だ。
助けられないのか……?
いや、ダメだ。
諦めてはいけない。
「セナ……お前はこんなこと望んでるのか……? 本当は悔やんでるんだろ……? 帰ってこいよッ!」
「そうやッ! うちらが支えたるッ! やから帰ってこいッ!」
「団長……ボクだって信じてるッ! カルナはあなたに負けて悔しがっていたけど、尊敬していたッ! 団長が守れる人だと分かっていたからッ! だから帰ってきてくださいッ!」
俺達の心からの叫び、祈りだ。
ガクッとセナがふらついた。
「俺は……俺は……ッ! 俺は何のためにッ! 何のために……!」
せなが頭を抱えて倒れ込む。
何かがセナの中で起きている。
俺達は何もしてはいけない。
ひたすら祈るだけだ。
「そうだッ! 俺は……俺は守るために……ッ!」
セナが纏っていた負の魔力が消失する。
代わりに周りを温めるような暖かい空気が俺達を包み込む。
立ち上がったセナが明るい笑顔で俺達を見た。
「ごめん、みんな……俺はもう悔やまないよ……」
「セナッ! 帰ってきたんだなッ!」「セナァッ! 良かった……ッ! ほんまに良かった……ッ!」「団長! 団長……!」
デュランダルを握り、再生し終えたタウラスを見るセナの姿がやけに清々しく見えた。
そうか、お前……答えが見つかったんだな……
「みんなは下がってて。あとは俺1人でやるから」
「あぁ、任せたぞ……セナ」
「任せとけ!」
戻ってきたんだ……!
俺達の祈りは届いた。
もう指ひとつ動けないが、今のセナならきっと大丈夫だ。
俺達は心の支えになればいい。
だから、存分に戦え。
カルナの仇をちゃんと取ってくれ……!




