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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法騎士団編
44/66

-絶望は狂気へ-

 どうしてだ……?

 どうしてまたこうなる……?

 どうしてまた失う……?

 どうしてまた目の前で……仲間を失うッ!


「お前が……お前がやったんだな……?」


 足下で眠るカルナを見て、目の前の男を睨みつける。

 巨大な両手斧を持った魔法使いを。


「壊す……邪魔者も……全て……全てだ……全て壊すッ!」

「そうやってお前らは……自分の欲のために殺しやがってッ!」

「セナッ! 落ち着いてッ! 辛いのは分かるけど今は冷静になるべきやッ!」


 エレナもアルデバランもマナトもマリーも……

 《背理教会》の奴らは自分の欲望の為に魔法使い達を殺めてきた。

 何人も何人も何人も……

 もう嫌なんだ……

 響也みたいに誰かが死ぬのを見たくないんだ……


「ならもう、原因を断てばいいじゃないか…………そうだろ……? 異常者!」


 怒っているんじゃない。

 呆れているんだ、こいつらに。

 もうどうなったっていい。

 身近な仲間すら守れないこんな身体、どうなったって構わない。


「"剣よ"ッ!」

「セナッ! それはあかんッ! 約束したやろ!?」

「ごめん凜華……俺、抑え切れそうにない……」


 身体から魔力が溢れる。

 デュランダルから魔力が供給されているのだ。

 だが、デュランダルに主導権は渡さない。

 あくまでも俺がこいつを殺す。


「壊す……お前らを……壊すッ!」

「黙れよ……」

「ウガ……ッ?」


 男が両手斧を振り上げた瞬間、血が吹き出た。

 男の両腕からだ。


「ガァァァァッ!」


 男は叫びながらも魔力を解き放つ。

 そうかこいつ、どこかで視たことのある魔力だと思ったら、そうか。


「お前、タウラスか?」

「ウガァッ……人間風情がオレの正体に気付くかッ! だが、関係無い……壊すのみィィィッ!」


 道理で魔力放出なんて技を使うわけだ。

 固有能力の『無限魔力放出』だろう。

 壊すしか言えないと思っていたが意外と喋るのか。

 まあ関係無い。

 殺すだけだから。


「だから黙れよ。殺すぞ?」

「人間……ッ! 貴様ァッ!」


 デュランダルを軽く振るう。

 それだけでタウラスのがっしりと筋肉のついた右脚が根元から消し飛んだ。

 血が吹き出る。


「お前も獣風情で調子に乗るなよ? 狩られる側の気持ちを教えてやるよ」

「グァァァァッ!」

「なあ、カルナにもこうしたんだろ? 痛みつけて殺したんだろ? 答えろよッ!」

「人間がぁぁぁぁッ!!」


 話にならない。

 元々狂人と語らうつもりなんて無いが。

 もういいや、殺そう。

 デュランダルを思い切り横に斬り払う。

 それだけでタウラスの首が宙に舞った。


「アハハ……ッ! これでいいんだ……これでッ! アハハッ! クハハッ! カルナの仇は俺が取るんだッ!」




 ───────────────────────




「あれが……レイズ団長……なんですか……?」

「あんなん……セナやない……別人が乗り移ってるみたいやん……」

「セナ……お前は……」


 俺はセナが目の前の敵、タウラスを痛みつけて殺すのを見ていることしか出来ない。

 王城へ走り込んできて、真っ先にカルナが死んでいる事にセナが気付いた。

 ボロボロになりながらもなんとか喋れる程度には無事なステラから話を聞き終えた瞬間、セナの目の色が変わった。

 あれはいつものセナじゃない。

 あんなに憎悪の篭ったセナの目を俺は知らない。


「それじゃあ奴らと変わらないじゃねぇか……」


 セナは良い奴なのだ。

 人間界の学校に通っていた時だって、めんどくさがりながらも人のために動いていた。

 それなのに……それなのに今のセナはなんだ……?

 アルデバランなんて比じゃないくらい破壊衝動に溢れている。

 響也が死んだのは俺だって悲しかった。

 何も出来なかった無力な自分が死ぬほど嫌になった。

 だから、次は無いと言い聞かせて修行を積んだ。

 そしてまたこれだ。

 やっと打ち解けて来たはずのカルナを殺された。

 俺だって絶望したさ。

 周りにある何もかもをぶっ壊したくなった。

 でも、それは違う。

 死んだ響也とカルナ、王国の魔法使い達はそんなこと望んでいない。


「目を覚ませよセナッ! お前は守るんだろッ!? 壊してどうするッ!」

「クハハハッ! アハハハハーッ! もういいんだ悠斗……全部壊せばいいんだよ……こうやってッ! 全部壊せば守れるんだよッ!」

「やめないんだな……? 意地でもやめないんだなッ!?」

「当たり前だろッ! もう嫌なんだよッ! 仲間が死ぬのを見たくないんだよッ! 見ろよ……タウラスも首を撥ねたくらいじゃ死なないんだよ……なら、徹底的に壊してッ! 壊して壊して壊し尽くしてッ! 殺すしか無いだろッ!」

「もう……ダメなんだな……お前……俺が……俺達がお前を止めるしか……無いんだなッ!」


 果たして俺に、人間の俺にセナを止められるのだろうか?

 いや、無理でも止めなければならない。

 仲間が死ぬのも嫌だが、狂ってしまうのも嫌なんだ。

 凜華もステラも俺と意見は変わらないらしい。

 戦闘準備は出来ている。

 セナ、狂ったお前に仲間のために戦う俺達が負けるはずがないッ!


「《魔法騎士団》ッ! セナを救うために……行くぞッ!」

「「了解ッ!」」

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