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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法騎士団編
39/66

-魔力を奪う者-

 どうしてこうなった……?

 どうして俺達はなんの抵抗も出来ずに地面に倒れ込んでいる……?


「グオォォォ……ッ!」


 動けない。

 身体が重い。

 俺が倒れている地面は既に放射線状の亀裂が四方に走っている。

 呼吸も上手く出来ない。

 対する敵は十二神獣牡牛座・タウラス。

 アナスタシアはかなり離れた場所で気を失っている。

 もう為す術はない。

 タウラスが右前脚を上げ、そのまま踏みつけに来る。

 もちろん巨体に踏まれて生きていられるわけが無い。

 俺はトドメの一撃を無抵抗に受けるしかなかった。




 ───────────────────────




 時間は少し遡る。

 アナスタシアが精霊使いと聞き、その精霊が四大精霊の一角であると知ってから数十分後。

 生い茂る草をかき分けながら前へ前へと進んでいく。


「むぅ……草は苦手です……」

「が、我慢して……?」

「分かっていますが……虫がいないだけまだマシですよね……」

「確かに。虫までは用意されてないみたいだな」


 アナスタシアは一応王族なので、こんな草花生い茂る場所に足を踏み入れるなんてこと普通は無い。

 それでも、魔法騎士団の一員なのだからと頑張って我慢してくれている。

 なるべく早くクリアしないと可愛そうだ。

 それにしてもこの森林、歩いているだけで何故か魔力を消費している。

 連戦していた俺の魔力はもうほとんど残っていないというのに、これは少しまずいかもしれない。

 元々保有魔力が少ない人間だから仕方ないのだが……

 今は文句は置いておこう。

 このゲームをクリアするには、まずこの魔力消費の原因を見つけなければならない。


「アナスタシア、この森林に入ってから魔力が減ってないか?」

「そういえば確かに……おかしいですね。私には精霊の加護があるはずなんですが……」


 では魔法ではないということか?

 いや、そんなはずはない。

 魔力を吸うとすれば阻害魔法『ドレイン』程度しか思い当たる節が……


「魔力を……吸う……?」

「ん? どうしました? 私はまだ魔力に余裕がありますが……」

「アナスタシア、ちょっとジャンプして。高めに」

「こ、こうですか?」

「よし、"悟れ、旅の終わり。焦土すら凍てつかせよう。何も芽生えぬ氷土を生み出せ"ッ!」


 デュランダルを地面に突き立てる。

 同時に、バシィィィィンと激しい音を立てて辺りが一瞬にして凍土になった。

 氷系統領域魔法『フリージング』。

 発動後、魔力を消費している感覚は無くなった。

 やはり推測通りだ。


「ど、どうして『フリージング』を?」

「魔力消費の原因だよ。それはこの草」

「へ? 草ですか?」

「そう。この草は恐らく空気の代わりに魔力を吸って生きている魔法生物の一種だ」

「なるほど! この草達に魔力を吸われてたんですね!」

「そういうこと」


 一口に魔法生物と言っても動物だけではない。

 今回の草は良い例だろう。

 魔力を命の源とするもの。

 それが魔法生物だ。

 魔法使いも見方によっては魔法生物なのかもしれない。

 とまあ、俺の魔力が枯れる前になんとか魔力消費は防ぐことが出来たわけだ。

 だが、『フリージング』で少なからず魔力を使ってしまった。

 しばらく休憩して魔力を回復させるべきか……


「ッ! セナ様、セイレーンが魔力を感知しましたッ!」

「こんな時に……」

「かなり大きいそうですッ! フラム様と同等か……それ以上の……ッ!」

「タウラスか……ッ!」


 幸いまだ距離はある。

 タウラスが何故ここにいるかは知らないが、逃げることは不可能だろう。

 なんといっても召喚獣最強の十二神獣の一角である。

 その魔力索敵範囲はとてつもなく広い。

 アナスタシアの精霊セイレーンも広大な索敵範囲を持っているが、その範囲は大差ないだろう。

 ということは、こちらが気づいているのなら相手も気づいていると考えた方が良い。


「アナスタシア、いつでも戦える準備を」

「もちろんです! 私の実力、見せてあげま……」

「ッ! アナスタシアッ!」


 いつの間にか、隣にいたアナスタシアがかなり離れた所にある巨木に叩きつけられていた。

 明らかに致命傷。

 遠目でもわかる程の出血だ。

 長くは持たない。

 かといって、俺のも下手には動けない。


「どうやって攻撃を当てた……? かなり距離はあったはず……高速移動? あの巨体で? 不可能だ……ッ! この……ッ!」


 落ち着け。

 混乱してはダメだ。

 今は落ち着いて冷静に対処するべきだ。

 まず相手の位置を知らなければ。

 辺りを見渡す。

 が、何一つ手がかりは無い。

 次は魔力視で魔法の痕跡を探る。

 今度は発見出来た。

 一直線にアナスタシアから俺の視線の先に魔法の余韻が残っている。

 何らかの魔法か。

 系統は分からないが、透明な魔力の塊の可能性が高い。

 なら魔力視を発動してさえすれば……


「ぐぁ……ッ!」


 地面に叩きつけられる。

 それも、思い切り。

 何も捉えられなかった。

 叩きつけるだけでは飽き足らず、更に地面に押し付けられる。

 これは並の魔法ではない。

『重力魔法』だ。

 重量を操る超高難度の魔法。

 辛うじて前を見ることが出来た俺の視界に映ったのは巨体。

 十二神獣牡牛座・タウラス。


「グオォォォ……ッ!」


 更に押し付けられる。

 肺が酸素を受け入れてくれない。

 骨が悲鳴をあげながら軋む。

 なんの抵抗も出来ない。

 眼前のタウラスがゆっくりとその前足を掲げる。

 踏みつけが来る……ッ!

 けれど、動けない!

 死ぬ。

 死んでしまう。

 そして、タウラスの足が俺へと勢いよく下ろされた。

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