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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法騎士団編
37/66

-マリーゲーム-

 全員が各々の武器を取り出して構える。

 そうだ、俺達ならやれる……!


「揃いも揃って中途半端な魔法使いばかりね……でも、アレには丁度いいわ。折角集まって貰ったけれど、さようなら」


 マリーがパチンと指を鳴らす。

 すると、パシュッと音がして、皆が消えた。

 正確には何らかの魔法か魔法具で別の部屋に飛ばされたのだ。

 数で押し切れると思ったが、そう簡単にはいかないらしい。

 一面に広がるのはジャングルもかくやというレベルの森林地帯だった。


「どうしたものか……」

「どうしましょうかぁ……」

「おわっ! アナスタシア!?」

「はい! セナ様のアナスタシアですよ!」


 水色の髪がピコンと跳ねる。

 なんだか可愛らしい。

 ではなく、なるほど、2人で1ペアといったところか。


『ようこそマリーゲームへ。あなたたちにはこれからゲームをしてもらおうと思うわ! ルールは至ってシンプル。ゴールを目指すだけ。障害物はもちろんあるけど、ゴールすればフラムを返してあげるわ。せいぜい頑張りなさい』


 ゲームとな……

 まだまだ余裕ということか。

 まったく、腹立たしい奴だ。

 それにしても、気分が冴えないな。

 ここはそういう効果のあるエリアなのか?


「セナ様、大丈夫ですか?」

「いや、大丈夫。アナスタシアこそ気分が悪いとかないか?」

「私は大丈夫ですよ。仮に阻害系の領域魔法の範囲内でも『精霊』が護ってくれますから」

「『精霊』……?」


 聴き捨てならない単語が聴こえた気がする。

『精霊』?

 そういえばアナスタシアの戦闘スタイルを知らない。

 まさか世にも珍しい『精霊使い』なのだろうか?


「あ、言っていませんでしたね。私は『精霊使い』です!」

「な、なぬ……!」

「驚きましたか? 褒めてくれてもいいんですよ?」

「よ、よしよし。どうして黙ってたんだよ?」

「むふー。それは聞かれなかったからですよ。いくら味方といえど、いつ敵に回るか分からない。その中で下手にこちらの情報を開示するのは得策ではありませんから!」


 意外とよく考えている。

『精霊使い』とは『精霊』と呼ばれる特別な魔法生物の加護を得て魔法を使う魔法使いの事を言う。

 "自分から魔法を放つ"ではなく、"自分から精霊を通して魔法を放つ"というプロセスを踏むことで、通常よりも強力な魔法を使うことが出来るのだ。

 精霊自体数が少ないし、更には精霊にもはっきりと強い弱いがある。

 弱い精霊を介して魔法を使ってもそれほど変化は起きないということだ。

 それに、精霊に気に入られるということも大前提として必要となる。

 精霊と息ピッタリ合わせなければ、魔法もろくに発動しなくなるからだ。

 要するに、条件が多すぎる故に人数が少ない。


「で、アナスタシアの精霊は?」

「聞いちゃいます……? 目を凝らせば『魔力視』の魔眼があるセナ様なら見えると思いますよ?」

「むむむ……」


 ちなみに精霊というものは基本魔力の塊が時間をかけて命を得たもので、特別な力が無ければ、精霊が興味を示した魔法使いにしか見えない。

 今回の場合、俺は『魔力視』が出来るので辛うじて視覚することが出来た。

 アナスタシアに似た髪と顔、ただし、大きさはりんご2つ分程度。


「紹介しますね。『水の四大精霊・セイレーン』です。以後お見知りおきを」

「よ、四大精霊!?」

「やっぱり驚きましたね? そのお顔、見てみたかったんですよー」


 四大精霊とは火、水、風、土の四属性最上位の精霊の事を指す。

 これが本当だということは、アナスタシアはただの精霊使いではない。

 最強の精霊使いの一角だ。

 普段あまり目を凝らして見ていなかったから、こんなとんでもないものが近くにいたとは……


「では、気を取り直して進みましょうか! 私だってたまには役に立って見せますから!」

「お、おー……頼りにしてるよ」


 驚きで言葉も出ない。

 本当に大丈夫なのだろうか、このペアは……

 一抹の不安を抱きながら、俺達は先へ進んだ。




 ───────────────────────




「どうしてこうなったのかなー……」

「うちと悠斗のペアって……悪意あるやんー」

「確かに。動けない凜華を遠距離の俺が守れってか? 無茶だよなー。しかも砂漠って……」


 凜華と悠斗のペアが飛ばされたのは砂漠。

 蒸し暑い上に風もなかなか強い。

 更には風が砂を飛ばしてくるので、アポロンでの射撃も長距離は不可能だろう。


「難しいな……このゲーム」

「ん、悠斗は人間界におったとき、ゲームよくしとったん?」

「そうだなー。ゲームはよくしてたな。けど、得意ではなかった!」

「なんやねん……このゲームの役に立つ何かないんか……」

「わ、悪かったなッ! 無理矢理にでもクリアするぞッ!」

「はいはい。わかったわかった」


 所々矢印の書かれた看板が突き刺さっているので、それに従って歩いていく。

 一応『イーグル・アイ』を装備しているので索敵は完璧だ。

 それにしても、しばらく歩いたが凜華がやけに静かな気がする。


「凜華、大丈夫か?」

「…………」

「ん……? 体調でも悪いのか?」

「……うるさい……」

「え……?」

「『瞑想』中! 集中してたら歩きながらでも出来るようになったんや!」


 なるほど。

 言われてみればさっきよりも威圧感がある。

 凜華の姿がふた回りほど大きく見える気がしないでもない。

 俺も集中しなければ。

 遠距離以外は本当にダメなのだ。

 ならば、出来るだけ広い範囲を索敵し、出来るだけ離れた距離から障害物を撃破する必要がある。


「まあ、師匠を助けるためだ! なんだってするさ……ッ!」

「ん……悠斗はフラム様の事、ほんまに好きやなー」

「んー……好きというか、尊敬してるって感じだな!」

「尊敬……?」


 改めて聞かれてみると、確かに深く考えたことは無かった。

 だが少なくとも恋愛感情は無い。

 師匠は俺の命の恩人であり、一生ついて行きたいと思える師匠なのだ。


「で、『瞑想』は?」

「あと10秒あればいける。やけど、残りは敵の目の前でやるわ。10秒位守ってや?」

「お、おう……任せとけ?」

「なんで疑問形やねん……頼りないわー」

「う、うるせ!」


 更に歩く。

 歩いて歩いて歩きまくる。

 流石に体力も限界に近いかもしれない。

『瞑想』の魔力を保ち続けている凜華は、恐らく俺より疲労が溜まっているだろう。

 この状況で敵が来たら……考えるだけでゾッとする。

 けれど……


「どうしてこのタイミングでくるかなぁ……凜華、準備」

「了解。あんまり無理しやんようになー」

「おう!」


 敵らしき気配を感じた。

 それもかなり大きく禍々しい魔力。

 未だ敵の姿も形も分からない。

 だが、戦うことに変わりはない。

 恐らくこれがマリーの言った障害物だ。

 ならば、戦闘開始だ。

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