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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法騎士団編
36/66

-最強の錬金術師-

 腰に付けた鞘から『無限剣イカロス』を5本抜き取り空中に放り投げる。


「"貫け"ッ!」


 クルクルと空中で回転した短剣達が、一斉に狙いを茶髪の女性に向けた。

 そして射出される。

 対象を触れずとも動かせるようにする上位付与魔法『コントロール』。

 普通の俺が使える魔法では無いが、『無限剣イカロス』には『コントロール』の補助性能があるので使用できるのだ。

 その速度は風魔法に匹敵する程。

 研究者の様な見た目の魔法使いには到底捉えきれる速度ではない。

 だが……


「それは面白いわね……」


 5本のイカロスはどれひとつとして直撃することは無かった。

 どれも障壁に阻まれた様に空中に留まっている。


「名乗る前に攻撃しないでくれるかしら? 私は《背理教会》研究者、マリー・グラフェス。あなたがさっき殺したマガトの母親よ」

「お前に名乗る名前なんて無いッ!」

「落ち着きなさいセナ・レイズ。冷静さを欠けたあなたでは私には敵わないから。そうね……これと遊んでなさい?」


 マリーが試験管の様なものを2つ放り投げた。

 それは空中で眩く光り、巨大な物体が2つ落下してくる。

 見たことがあった。

 岩石で作られ、自立して戦う魔法生物。


「『ゴーレム』か……」

「そこらの錬金術師が作ったゴーレムと一緒にしないでね? 少なくとも数十倍は強いわよ?」

「クソ……ッ!」


 茶色の魔法陣からいくつもの土系統魔法が飛んでくる。

 ゴーレムのくせに上位魔法も扱うとは、このマリーという錬金術師は並の魔力じゃない。

 デュランダルで応戦しつつ、イカロスを背後に投げて『コントロール』を詠唱してゴーレムにぶつける。

 ゴーレムとは土系統魔法で生み出した特殊な土に、『コア』という球形の魔力の結晶に付与魔法『コントロール』を用いて錬成した人造の魔物である。

 丈夫さ、魔法の威力共に、作成者の魔力に依存している。

 そしてマリーの創り出したゴーレムは魔力だけならカルナ程度の実力はあった。

 それが2体もいるのだ。

 かなりキツい。


「キリがない……ッ!"剣よ"ッ!」


 オリジナル魔法『ディバイン』を発動。

『リバース』も発動し、一気にカタをつける。

 色を失った世界で俺だけがデュランダルと踊る。

 正確にはデュランダルが俺を操って踊っているのだが……

 そして時間が動き出した頃には、2体のゴーレムは土塊に戻っていた。

 停止した時間の中では、フラムに勝ったであろうマリーでも動けなかったようだ。


「うふふ……待ってたわよ、その魔法ッ!」

「余裕ぶってて大丈夫か?」

「それは見てのお楽しみよ?」


『ディバイン』はまだ継続している。

 だが、ある程度は動けるようだ。

 今のうちに蹴りをつける……ッ!

 もう一度『リバース』を発動する。

 今更だが、『ディバイン』の影響下で『リバース』を発動しても、代償は必要とされないらしい。

 自分のオリジナル魔法だが、『ディバイン』は本当に謎が多い。


「フラムがやられた分のお返しだ……ッ!」


 思い切り踏み込み、マリーの首にデュランダルが直撃するその寸前。

 バチンッと身体に電撃が走った。


「え……?」

「うふふ……アハハハッ! 言ったじゃない……? 待ってたって」

「そんな……どうして……ッ!」


 世界は未だ灰色のまま。

 それなのに、どうしてこいつは動ける。

 そして、どうして俺は動けない。

 カウンター……?


「まずあなたはひとりでここに来たことが間違いよ。あのフラムが捕まっているのよ? あなた師匠の実力を把握してないのかしら? フラムが帰らない。捕まっているという情報。ここまで知ることが出来て2人で来たのかしら。フラムが何人分の魔力を持っているのか知ってる? 少し多い程度の魔法使いが2人で補える訳がないじゃない。本当に無能ね、あなたたちは……魔法使いも落ちたものね……」

「動け……ない……ッ!」


 どうして動けない!

 意識は動いているのに、身体はピクリともしない。

 まるで俺が自分に『リバース』をかけたように……


「察したかしら? あなたが動けないのはあなたの魔法の仕業なの」

「どういう……ことだ……ッ!」

「これ。私が錬成した魔法具『マジックミラー』よ。これを持っている者は自分に影響する分の領域魔法を使用者に跳ね返せるの! 最高の発明でしょう!?」


 化け物だ……

 魔力だけじゃない。

 発想力も普通じゃない。

 常人がこんな事を考えつく訳がない。

 もし考えついても創り出せる物なのか?

 無理だ……このレベルの魔法具を大量に所持しているとしたら、勝てるわけがない……


「でもまあ、今回はいいわ。あなたのその魔法も弾き返せる事が分かった事だし、見逃してあげる。逃げるなら逃げなさい」

「ど、どういうつもりだよ……ッ!」


 パチンッとマリーが指を鳴らしたと同時に『リバース』が解け、世界に色が戻る。

 見逃す? 見逃してなんの得があるというのだ。

 こいつにとって俺や俺達魔法騎士団は眼中に無いというのか……?

 悔しい……悔しすぎる。

 こんな時、フラムならどうする?

 考えろ……


「あら、逃げないの? なら殺すわよ?」


 死ぬのはダメだ。

 死んでは意味が無い。

 なら……逃げるしかない……

 俺がそう決意した瞬間、目の前の空間が歪んだ。

 それは見覚えのある歪み。

『テレポート』の歪みだ。


「諦めてはいけませんよ、セナ様。大丈夫です。私達《魔法騎士団》がいますからッ!」


 そこから現れたのは5人。

 全員が見覚えのある仲間達だった。


「みんな……ッ!」

「さあ、大逆転と行きましょう!」

「「「「「おうッ!」」」」」


 恐らく『ループ』で帰還したであろうベルを除いた《魔法騎士団》全員が揃った。

 マリーが舌打ちしたのが見える。

 まだ逆転の余地はある。

 よし、ここからが正念場だ……ッ!

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