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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法騎士団編
31/66

-2つ目のオリジナル魔法-

 王室は朝から忙しかった。


「王、ご報告です」

「ふむ。なんじゃ?」

「やはり敵勢力は予想を遥かに上回っていました」

「やはり……か……」


 グラムは眉をひそめて考える。

 かなり前から側近のクロエに頼んでおいた情報が、やっと手に入ったからだ。

 それは『《背理教会》のおおよその戦力』。

 《背理教会》も元々は普通の教会のひとつだった。

 けれど、リーダーが『あの男』に変わってから目に余る行為が増えているのだ。

 そして、極めつけはエレナ・フェレラルによる王都襲撃。

 流石に潰さねばならない。

 だが、その前に敵の戦力を少しでも把握しておく必要がある。

 そう思って依頼したのだが、思った通り予想を上回ってきた。


「大体50人弱くらいかと思ったんじゃが……」

「恐らく、100人は所属しているかと」

「エレナ程の実力者が他にいると考えると、今の王国の戦力では押し切れないかの……?」

「遠征中の神獣使いの2人を帰還させればなんとか。けれど、相手は未だ未知数です」

「神獣2体で立ち向かえるかどうか……ということじゃな……」


 王国最強戦力である王専属魔法使い2人と十二神獣の2角。

 これで防ぎきれないのであれば、この王国は終わりである。

 だが、もし教会が王国を上回れば、この王国だけでなく、未来ある優秀な魔法使い達も犠牲にしてしまう。

 それだけは防がねばならない。


「あーもー! むしゃくしゃする! ワシ、仕事辞めていいかの!?」

「バカ言ってないで働いてください! 殴りますよッ!?」

「ひどい! 部下までワシを虐めるんじゃぁ……」


 ちなみに側近であるクロエは『魔法格闘術』と呼ばれる格闘術の師範代である。




 ───────────────────────



 チラッと魔力が見えた。


「魔力は……見える……ということは、魔眼は右眼か……」


 ポツリと呟いて窓から空を見上げる。

 俺は一応騎士団長なので、事務もしている。

 今日は王国の戦力のおおよその計算。

 どうして俺が……

 これは王の仕事じゃないのか。

 いきなりクロエという男が半泣きで擦り付けてきた仕事だが、可愛そうだったから受けてあげた。

 けれど、これがなかなか面倒くさい。

 王国に存在する様々な団。

 例えば俺達の所属する《魔法騎士団》、十二神獣の一角天秤座・リブラを擁する《魔法神官団》、蠍座を擁する《魔法格闘団》などがある。

 その団個々の総魔力を計算し、それを戦力とする。

 一団でも面倒くさいのに、これがかなりの数あるのだ。

 左眼の失明以来戦闘に参加出来ない俺は、最近ずっとこの仕事に没頭している。


「最近、幹部まではいかないけど、《背理教会》の魔法使いが各地で破壊活動を行っている……魔法騎士団の数人が遠征しているけど、数が数だからなぁ……」


 やはり《背理教会》に所属する魔法使い達は、ほぼ全員が王国の魔法使いよりも強い。

 中には自らに呪術をかけ、強制的に強化されている魔法使いもいると報告があった。

 まあ、《魔法騎士団》に所属する魔法使いの皆はただの魔法を使う魔法使いではない。

 武器や特異な魔法の戦闘が得意な俺達は、魔法にしか耐性のない魔法使い達には天敵と言えるのだ。

 だから、《魔法騎士団》は幹部でもない《背理教会》の魔法使いには負けることは無い。

 遠征には他の団の魔法使いも同行している。

 《魔法騎士団》はかなり頼りにされているらしい。

 自分が出向けないのは歯がゆいが、騎士団自体が活躍しているのは喜ばしい事だ。


「早く左眼を治療しないと……それに、まだ謎のデュランダルの性能……」


 完全に忘れていたが、俺の武器『魔法剣デュランダル』がエレナとの戦闘で見せたあの姿。

 何か特別が力が働いているのか、詠唱を思い出せない。


「"掲げよ、約束の剣"」


 俺はデュランダルを召喚し、観察してみた。

 特徴的なのはやはり切っ先の形。

 持ち手に長い長方形を差し込んだ様な、変な形だ。

 そして、剣の腹には魔力を通しやすくする『魔力線』がびっしりと張られている。

 これといって変なものは無い。

 試しに魔力を流し込んでみる。

 属性を意識せず、ただただ純粋な魔力を思い切り込めた。

 だが、効果は何も無かった。


「うーむ……」


 付与魔法『エンハンス』に似た効果の様な気もしたが、何かが根本的に違うのか、性能の伸び方が違う。

 仕事も忘れ、ボケーッと考える。


「『エンハンス』が外的要因とすれば……あの魔法は内的要因……?」


 ふと、変なことを思いついた。

『エンハンス』は付与魔法なので、術者が対象に施す魔法だ。

 要するに、対象が『術者の魔法』という外的要因により強化されていると考えられる。

 だが、あの魔法は対象が術者に施しているのではないか?

『デュランダル』が『俺』に何らかの魔法を行使したというのは考えられないだろうか。


「いや、でも、それならこの剣は魔法剣じゃなくて神剣か魔剣の類いになるよな……」


 とりあえず、『あの魔法』と呼ぶのも分かりずらいので、『ディバイン』と名付けた。

 俺の2つ目のオリジナル魔法だ。

 使えないけど。

 すると突然、俺のいる団長室の扉が勢いよく開かれた。


「レイズ団長ッ! ご報告ですッ!」

「ど、どうした?」

「王都から南東の方向にあるトウナ村にて《背理教会》が出現ッ! リーダー格の魔法使いは、黒のローブで『アルデバラン』と名乗っておりますッ!」

「アルデバラン……ッ! 状況はッ!?」

「現在王国の魔法使いが交戦しておりますッ! ですが、あまり状況はよくありません……」

「わかったッ! 俺が行くッ!」


 やはり現れた。

 だが、運の悪い事に『魔法騎士団』は俺を除いて全員遠征に出ている。

 たしか、トウナ村の近くには悠斗が遠征していたはずだ。

 鎧を装着し、外へ駆け出す。

 トウナ村に行ったことが無いので、『スクロール』は使えない。

 だったら、無理矢理だ。


「南東に遠征に出ている悠斗に『増援を頼む』と伝えてくれッ!」

「わ、わかりましたッ!」


 報告に来た魔法使いにそう言い残し、魔力を両足に集中させる。

 自己強化魔法『クイック』が発動し、俺の姿が王都から消え去った。

『クイック』の強化を両脚に集中させることによる高速移動。

 かなりの荒技で身体も痛むが、今はそんなことはお構い無しだ。

 一刻も早くトウナ村に到着し、アルデバランを倒さねばならない。




 だが、俺がトウナ村に到着した時には、既視感のある凍土が広がっていた。


「これは……あの時の……」


 俺がアルデバランと交戦した場所と同じだ。

 何もかもが凍っている。

 家も、井戸も、もちろん魔法使いも。

 全て氷に閉じ込められていた。

 唯一生き残っていたのは黒ローブと水色のローブの数人の魔法使い達だけ。

 恐らくアルデバランと他の《背理教会》の魔法使いだろう。


「アルデバランッ!」

「おやおやッ! これまた奇遇ですねッ! この前の傷、かなり痛かったんですよ? 治癒するのに本当に苦労したんですから。けれど、私には主がおられるッ! 神は私に癒しをくださったッ! 故にッ! 私はまた貴方と戦うことが出来るッ!」

「黙れッ! これ以上被害は広げさせないッ! ここで……殺すッ!」

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