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見習い魔法剣士の英雄譚  作者: 清水 悠燈
魔法騎士団編
21/66

-異変-

 自己紹介をしてから数日が経った。


「で、これみんなの鎧。後ろの壁沿いにあるやつ」


 活動は一応今日からなので必要な情報を伝えておく。

 まずは魔法騎士団の制服となる騎士鎧からだ。

 この鎧はそこそこの硬度まで上昇させたマジックメタルで出来ていて、軽量化の付与魔法の加護により布の服の様に軽い。

 更に、魔力を流すことで魔力障壁を展開することもできる優れもの。

 魔法使いが鎧というのも変な話なのだが……


「次、これが本題なんだけど……」


 俺はそう言って、黒色の球体を投げた。

 球体は丁度いい高さで静止し、6人の前にスクリーンが映し出される。

 そう、この球体は記録した動画を映し出すことが出来る魔法具だ。

 映し出されたスクリーンには白髭に赤いマントを羽織った老人、グラム・レティーナ王が満面の笑みでいる。


『やあやあ魔法騎士団の皆! 元気しとるかー? ワシは元気! ワシから伝えたいのは魔法騎士団の仕事についてじゃ!』

「おじい様……」

「アナちゃん、王様はいつもこうでしょ……」


 相変わらずのハイテンションに孫のアナスタシアが頭を抱える。

 いつの間にかベルがアナスタシアと仲良くなっており、呼び方も『アナちゃん』になっていた。

 仲が良いのは良いことなのだが……


『魔法騎士団には、《背理教会》の解体を任せたいんじゃ。良いな? 決して楽ではない。命をかけて戦うんじゃ』


 王の顔が少し真剣になる。

 命をかけて戦う。

 それは酷く残酷なことかもしれないが、世界を守るためには必要な事だ。

 それに、ここにいる全員は命をかける覚悟があるから入団した。

 恐らく、王の孫であるアナスタシアも。


『まあ、気楽にやってくれてもいいんじゃよ!』

「おじい様は本当に……はぁ……」


 最後の最後でふざけた王にアナスタシアがため息をこぼす。

 俺もため息をこぼしたくなるがグッと我慢した。

 こんなところで疲れてはいられない。

 今日はまだやる事が残っている。


「とまあ、重い話はここまでにして……少し皆で城下町に行かないか? 色々小物が足りてなくてな」

「いいねー! 俺も行ってみたかったんだよ魔法界の店!」

「うちもうちも! 行ってみたい!」

「私も行きたいな! アナちゃんも行こ!」

「はい! 私も行きたいです!」


 という事で、城下町に行くことになった。

 買い出しも本当だが、皆が仲良くなるためにこういう交流は必要だと思ったのだ。

 騎士団たるもの、連携のためのチームワークが大事。

 ましてや、7人の少数で連携が出来なければ話にならない。

 騎士団長として、頑張っていかねば……




 城下町はフラムの領域魔法『リセットゾーン』によって一瞬で復興された。

 自分で壊して自分で直す。

 なんとも言えない気分だろうな。

 そんな城下町だが、事件からほんの少しというのに活気で溢れている。

 俺達は一応まとまって行動する。

 仲良くなるためなのだ、バラバラになっては意味が無い。


「なんですか? あまりボクを見ないでください」

「いや、ちょっと変わったなー……と」


 コミュ障のステラも、初めは嫌がっていたが付いてきた。

 未だにツンとした顔だが、初めに会った時よりは柔らかくなったと思う。

 そして、問題のカルナはあの喧嘩腰な態度はどこへやら。

 約束通り俺に従ってくれてはいるのだが、何だか違う。


「団長、喉は渇いていませんか? すぐに取ってまいりますので!」

「あ、いや……大丈夫……」

「では、他に僕に出来ることは!?」

「い、今は普通にしておいて……」

「わかりました!」


 執事か!

 そういう意味での従うだったのか。

 もう訳が分からない。

 と言っても、下手に喧嘩を売られるよりはマシなのだが……

 何より気まずい。

 団長とはこんなものなのか……?

 上の立場というのは奥が深い。

 と、色々あって1時間程で必要な物は買い揃えることが出来た。

 そうそう起きることではないが、いざとなったら必要になる『魔力結晶』。

 これは文字通り魔力が結晶化した物で、魔力切れなどを起こした時に使う。

 魔力は基本的には粒子で空気に溶け込んでいるので、結晶化することは珍しい。

 なので、意外と高価でもある。

 後は小物など、生活に必要な物を買っておいた。

 すると突然、悠斗が何かを思いついたらしく、提案してきた。


「男女で別行動しない?」

「どうして?」

「な、なんとなく!」


 怪しすぎる。

 悠斗の事だから尚更怪しい。

 しかし、女子陣は何故か賛成らしく、2グループに別れることになった。

 俺、悠斗、カルナの男子組。

 ベル、凜華、ステラ、アナスタシアの女子組。

 そういえば、魔法騎士団には大人がいなかった。

 こういうアホ悠斗の暴走を止める役はいない。

 ちょっとばかし面倒だ。

 俺が悩んでいる間に、いつの間にか女子組がいなかった。

 悠斗とカルナも少し先へ進んでいる。

 突然、頭の中が真っ白になっていく感覚。

 一歩足を進めた瞬間、バランスを崩した。


「あれ……?」

「何してんだよセナ。行くぞ行くぞー!」

「ごめん……最近ボーッとするのが多くて……」

「あぁ……? あんまり無茶するなよ」

「あぁ、ありがとう」


 悠斗が咄嗟に支えてくれた事により、なんとか倒れずに済んだ。

 団長なのだからしっかりしないと……


「団長、お疲れでしたら部屋にお戻りになった方が……」

「大丈夫だよ……悠斗、何か買いたい物があるんだろ? そこに行こう」

「大丈夫かよセナ」


 しっかりしないと。

 最年少のカルナに心配されているようではダメだ。

 本当は結構まずい。

 今すぐに帰りたい。

 けれど、我慢だ。

 強くならないと。



 ───────────────────────



「ステラ様、この髪留めなどどうでしょうか? きっと似合うと思いますよー!」

「ボ、ボクは……ッ! オシャレには興味が無い……」

「勿体無いよー! そんなに立派な胸があるのに……」

「べ、ベル……!? 怖い目で見るなーッ!」


 私、凜華、ステラ、アナスタシアの女子組は城下町で人気のアクセサリーショップに来ていた。

 今は皆ステラに無我夢中である。

 口調も服装も男性の雰囲気があるのだが、顔も胸も女性としては羨ましい程の美形だ。

 それなのに、綺麗なセミロングすらもしっかりと手入れしてないなんて、女子として許せない。

 という理由で嫌がるステラに色々している。

 髪を括ったり、髪留めを付けてみたり。

 結局小一時間ステラ弄りに費やした。

 普段は動きやすいズボンを履いているらしいので、ミニスカートを履かせたのが一番良かった。

 というか、可愛くなりすぎて少し嫉妬してしまった。

 私自身、フラムのメイドしかしてこなかったのでオシャレとは言いづらい。

 凜華も同じようなものだ。

 更に、王族であるアナスタシアは城下の事なんて全く知らないときた。

 でもまあ、お店の方々総出で可愛くできたと思う。


「ボクは嫌だと言ったんだ……うぅ……」

「可愛いですよステラ様! とても!」

「そうそうー! うちも可愛くして欲しかったわー」


 ステラの目が死んでる。

 相当嫌がっていたのでこうなることは予想していたが……

 それからまた数時間、色々な店を回った。

 わたし的には、美味しいと噂のカフェが一番良かったと思う。

 特にミックスジュースが美味しくて美味しくて……

 別にコーヒーが飲めない訳じゃない、断じて。

 辺りももう暗くなってきている。


「そろそろセナ達と合流しよっか」

「そうですねー! 今日はとても楽しかったです!」

「帰ろ帰ろー! うちも楽しかったなー!」

「帰りたい……帰りたい……」


 セナ達も既に用事は済ませただろう。

 完全に病んでいるステラを凜華が手を引いて走っていく。

 仲が良いなーと思う。

 もしかしたら今日の買い物は、セナが「皆が仲良くなれるように」と計画してくれたのかもしれない。

 流石セナだ。

 気が利いている。

 そんなことを考えていると、隣にいたアナスタシアが肩を叩いてきた。


「ベルちゃん今、セナ様の事を考えていませんでしたか?」

「え……ッ!?」

「図星ですねー? やっぱり、セナ様の事が好きなのですね?」

「わ、私はそんなのじゃないよ! ただ、優しいなーって……」


 本当に突然の事で驚いた。

 心を読まれているのではないか。

 それに、私がセナを好きだなんて……


「むー……そうですかー?」

「そ、そういうアナちゃんはどうなの? 婚約の約束をしたとか言ってたし……」

「私ですか? 私はセナ様が好きですよ? 小さい頃からずっとずっと想ってきました」

「そ、そうなんだ……」


 思っていたよりすんなりと答えられた。

 アナスタシアの目はブレずに真っ直ぐ正面を見ている。

 本当にずっとセナのことを想ってきたのだろう。

 魔法騎士団に入団したのも、セナと過ごす時間を増やしたかったのではないだろうか。

 それは尋常ではない覚悟だ。

 それほどセナが大切なのだろうか。

 なんだか、とても寂しい気分だ。


「ふふ……今、寂しいって思ったでしょう?」

「お、思ってないよッ!」

「私、心が読めるんですよ?」

「え……嘘……」

「嘘ですよ」

「もー! アナちゃんの意地悪!」


 セナが少し前に魔力が見えると言っていたので、心が見えるといった事もあるのかと思ってしまった。

 アナスタシアは不思議な雰囲気がある。


「まあ、認めていただけなくても構いません。セナ様は私が貰いますから」

「そ、そっか……がんばってね……」


 きっと私なんかの想いじゃアナスタシアの募らせてきた想いには勝てっこない。

 私は密かに想いを寄せているだけでいい。

 きっとそれだけで満足だ。


「おーい! ベルとアナー! セナ達見つけたでー!」

「わかりましたー! さ、ベルちゃんも行きましょう」

「あ、うん……行こっか」


 少し先で凜華が大きく手を振っている。

 どうやら合流出来たようだ。

 なら、早く帰ろう。

 今日は皆疲れただろうから。

 隣にいたアナスタシアがセナの元へ走っていく。


「セナ様ー! 元気していましたかー?!」

「あ……うん……」

「大丈夫ですか? どこか悪いところでも?」

「大丈夫……だ……よ……」


 突然、セナが倒れた。

 それから3日間、セナはベッドで眠り続けた。

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