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宝玉<無気力の瞳>

今回文章部分長めです。

 イーゼリア。 剣と魔法が活躍するファンタジーRPGのような世界。

 先代の主神イアーレによって管理されていたその世界には地球に居るような人類の他にも、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族といった多くの種族の知的生命体が存在していた。

 元々それぞれの種族でまとまって各地に国を作り、平穏に暮らしていた。

 ある時、人間達の間で、主神イアーレが聞いたことのない謎の神、アーギス神を崇めるアーギス教という宗教が誕生した。 

 人類の間に瞬く間に広まり。多くの人間がアーギス教を信仰するようになった。

 アーギス教の教義の中に「人類こそがアーギス神に最も愛された種族であり、他の種族を従えて正しく導かねばならない」というものがあり、その教義の元、他種族を見下すようになった。

 他種族の国に侵攻し占領して、捕獲したその種族を奴隷にして強制的に働かせるようになった。

 また、他種族との争いを繰り返すうちに、さらなる力をもとめ、強大な魔法を使う触媒にするために、イアーレが世界の均衡を保ち守るために配置した守護竜とその眷属を狩り始めた。

 挙句、その討伐のために他の世界の力ある人間を召喚と称して誘拐し勇者として祭り上げて言葉巧みに唆して、討伐に向かわせる始末。これには連れ去られた側の世界を管理していた神からイアーレに苦情が来た。

 居もしない神の教えのもと非道の限りを尽くす人類に対し、ついにイアーレは愛想を尽かす。

このまま人間達に好き勝手にやらせていては世界が荒れ果ててしまう。

 そう考えたイアーレは世界に及ぼす影響を最小限に抑えて、人類だけを滅ぼす事を決意する。

 そのためにイアーレは人類の精神にだけ悪影響を及ぼす宝玉を作り出し、人類の勢力圏に散らばらせて出現させた。

 イアーレの目論見通り、権力をめぐって争いが起きたり、抜け殻のように気力のない人間達で溢れかえって誰も働かなくなり社会そのものが崩壊したりして人類は衰退の一途と辿り、やがて滅亡した。

 しかし、世界の流れを自分の思い通りにするために神力を使って直接的に一部の種類の生命体を滅亡させることは神々の掟では禁止されていた。

 イアーレ神は邪神とされ、力を奪われて封印された。

    

 人類を滅亡に追いやった宝玉。

 その過程で多くの人間の精神を糧に力を強めていくことにより、宝玉自体も変化しはじめた。

 本来人類だけに効果を及ぼすはずだったものが、他の種族にも影響が出始め、果てには神々にまで及ぶようになった。

 また宝玉そのものが知性を持ち始め、力に取り込まれた者たちを意のままに操りはじめた。

 イアーレに成り変わり、新しい管理神となったウアルフェは、早急にイーゼリアにある宝玉を回収することにする。

 他の神々の協力もあり、どうにか宝玉の回収に成功する。

 神界で厳重に封印される事になったが、封印する作業にウアルフェが直接関わることは他の神々から止められた。

 もし宝玉の力にウアルフェが侵されてしまうと、イーゼリア世界そのものに影響が出る恐れもあるし、最悪の場合暴走してウアルフェが邪神となる可能性もあったからだ。

 そこでウアルフェが、自分を補佐する神々に指示を与えて、宝玉を封印することになった。 


 宝玉<無気力の瞳>

 人々から集中力や意欲、希望を奪って無気力化させ、抜け殻のように気力を失った人間を大量に作り出した非常に危険な宝玉だ。

 ルキエナはウアルフェに代わってこの宝玉を封印する作業に当たっていた。

 多くの神々が力を合わせて絶妙なバランスをとってようやく力を抑えられているため、封印は凄まじい程の集中力を必要とし、その作業は難航していた。

 封印ももうすぐ完了というところで、少し気が緩んだ瞬間、僅かにバランスが崩れた拍子に、無気力の瞳の力が漏れ出してしまう。

 慌てて元に戻したルキエナだが、漏れ出した宝玉の力でどんどん集中できなくなり、思考力が低下していく。


 「はあ、なんで私こんな面倒なことしてるんだろう。こんな面倒な事するくらいなら、私たちの管理する世界とは関係ないずっと遠い異世界にこの宝玉捨てちゃえばいいのよ」


 ルキエナはそう考えるようになり、近くに次元の穴を開けると、そこに宝玉を放り込み、再び閉じてしまう。

 宝玉から離れ、その力から解放されて正気に戻ったルキエナは、自分の取った行動に顔を青ざめる。


 「私、なんてことを……」


 大急ぎでルキエナはウアルフェに状況を報告する。


 「な、なんじゃと!急ぎ宝玉の行方を追って回収せねば、流れ着いた世界が大変なことになってしまうぞ!?」


 ウアルフェは宝玉の行方を追って回収に向かおうとする。


 「お待ちください! ウアルフェ様自ら行かれては、イーゼリアの方はどうなるのですか!?」


 慌ててルキエナが止める。


 「バカモノ! それどころではない!急いで行かねば取り返しのつかないことになるのだぞ!!」


 「ならば私に行かせてください。これは私がしでかしたことです。私に責任を取らせて下さい」


 ルキエナはウアルフェに跪いて頼み込む。


 「わかった、良かろう。 行方を特定したらお主を送り込む、じゃがそのまま行っても再び宝玉の力に取り込まれるのがオチじゃろう。防御術を展開しておくように」


 「はい! わかりました!」


 ウアルフェとルキエナは急いで準備に取り掛かった。 


 

 宝玉の飛ばされた先である、<地球>という世界の<宝天市>という街にルキエナは顕現する。

 ルキエナは宝玉の反応を辿って上空を飛んで探す。

 すると、道端に次々と人が倒れているのを発見する。そこに降り立つと、道路の真ん中で怪しく光りながら空中に宝玉が浮かんでいる。


 「ウアルフェ様 発見しました」


 「よし、その気配だとワシとお主の力だけで宝玉の力を抑えこめるぞ!」


 「はい!」


 ルキエナがキューブを左手に乗せて右手を宝玉にかざす。右手とキューブから神秘的な光が出て、宝玉に照射されると、宝玉の光りが消え地面に落ちた。

 宝玉を拾い、振り返って倒れている人々を見る。気力を奪われ、無表情に一点を見つめて動かない。


 「倒れている人たちはどうしましょう?」


 「悔しいがワシらにはどうすることもできん。管轄外じゃからな。宝玉の回収を優先するぞ」


 「そうですか……」


 ルキエナが申し訳なさそうに倒れている人たちを見る。


 「おそらく、一晩経てば元に戻るはずじゃ」


 「それより、こちらの世界の神に頼んで帰り道を開けてもらうから所定の場所に戻るんじゃ」


 「はい」


 ルキエナが再び空へ飛び上がる。


 「所定の場所……あの公園ね?」


 呟きながらルキエナは公園に向かう。

 公園に降りようとした瞬間、突然宝玉が光りだす。


 「いけない!防御術の効果が……」


 手に持っていた宝玉を取り落とし、急速に動く気力を失ってルキエナは公園に墜落していった。


お読みいただきありがとうございます。


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