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溜め息と共に一言

本編は今回で終了です。それではどうぞ。

 

 ピッピッピッピッ


 ベッドの脇の目覚まし時計が鳴っている。

 恭一は眠い目をこすりながら起き上がり、目覚ましを止めた。


 「今日は交流会だな」


 時計に表示されている日付を見て呟く。

 両手で自分の頬と叩いて頭を覚醒させると恭一はリビングへ向かった。



 「おはよう、ルキエナ」


 その声と共にリビングに入る。

 そこに昨日まで居たルキエナの姿はなく、当然誰も返事をしない。

 恭一の心にどうしようもない喪失感が襲ってくる。


 「ハハハ……まだ寝ぼけてるな。顔洗ってくるか」


 恭一は力なく笑って、洗面所で顔を洗うと身支度を始めた。



 少し重い足取りのまま学校に到着し、恭一は下駄箱で靴を履き替える。


 「おはよう、恭一」


 奈月の声がして振り返る。


 「おはようございます、奈月さん」


 恭一はまた奈月に抱きつかれるのかと身構えながら挨拶を返した。


 「今日は交流会当日だな。私達の演奏、期待していてくれ」


 奈月は自信をにじませた笑いを浮かべて腕を組む。


 「はい、楽しみにしてます」


 奈月が抱きついてこないことにほっとしつつ、恭一は答えた。

 奈月は恭一の声にうなずくと、踵を返し、階段を上っていった。


 「ごきげんよう、恭一君」


 奈月が去った後、風香が声をかけてきた。


 「おはよう、風香さん」


 恭一は風香に顔を向けた返した。


 「奈月もああ言っていたけれど、私も精一杯演奏するつもりよ、でも少しだけ緊張しているから手を握って欲しいの」


 風香は恭一の右手を取って、両手で握ってきた。

 風香の細くて柔らかい手の感触が恭一の手に伝わってきた。

 恭一の動悸が早くなる。

 数分程経過して、風香は恭一の手を離した。


 「なんだか恭一君の元気をもらった気がする。ありがとう恭一君、私も頑張ります」


 風香は柔らかく笑って恭一に小さく手を振り歩き去った。

 取り残された恭一は嫉妬と好奇の視線が集まってくる前に自分の教室へと逃げた。



 交流会では、合唱、ダンス等の出し物が見られた。

 恭一達のクラスの演劇は、多田の全身タイツ姿が意外にウケて会場を沸かせた。

 生徒会役員による演奏は、その素晴らしさに大いに感動を呼び、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

 こうして交流会はつつがなく終了した。

 


 放課後になり、恭一は教室をでて生徒会室に向かう。


 「あ、もう助っ人って昨日で終わったんだっけ」


 助っ人の仕事の期間が終わったのを思い出し、廊下を引き返す。

 突然、恭一の背中に誰かがぶつかってきてそのまま抱きつく。


 「どこに行くんだ恭一。会計監査になってくれるんだろう?」


 後ろから抱きついてきた奈月が恭一の肩に顎を乗せて囁きかける。


 (また胸当ててくる!)


 背中に当たる奈月の胸の感触に恭一の顔が熱くなってくる。


 「ウフフ、奈月に聞きましたわ。恭一君、素晴らしいアイディアだと思いますわ」


 いつの間にか風香もそばに来てきて、恭一の手を両手で握る。


 「えっと……」


 恭一が返答に困っていると、


 「!?」


 鋭い視線を感じてその方向を見る。

 どす黒いオーラをまとった桃花と千絵が、般若のような形相で、廊下の角から顔だけ出して恭一を睨んでいる。


 「前向きに検討しておきますから! 今日はこれで失礼します!!」


 声を裏返らせながら奈月を風香を振りほどき、今日一は大急ぎで学校を脱出した。


 

 無我夢中で家への道をひた走り、自宅近くの公園に来たところで息を整える。


 「……」


 昨日ルキエナが消えた場所に目が止まり、吸い寄せられるように近づいていく。


 「ルキエナ……」


 恭一の脳裏にルキエアとの日々の記憶が想い起こされる。


 「恭一さん」


 頭の中に優しげな眼差しで恭一の名を呼ぶルキエナの姿が浮かぶ。


 「恭一さん」


 「ハハハ、ルキエナの声が頭について離れないみたいだ」


 幻聴まで聞こえる自分の未練がましさに恭一は苦笑する。


 「恭一さん」


 声と共に肩を叩かれた気がして恭一が振り向く。


 そこには昨日居なくなったはずのルキエナが立っていた。

 

 「ルキエナ!!」


 恭一は目を見開かせて叫ぶ。


 「何で!? もう会えないって言ってたじゃないか!?」


 恭一は驚愕の表情のままルキエナに質問する。


 「実は、回収した『無気力の瞳』以外の宝玉でも私と同様の失敗が発生していて、異世界に宝玉を送り込んでしまったようです。しかも私が送ってしまった無気力の瞳の経路を辿って、他の宝玉もこの街に出現するので私がこちらに戻ってくることになりました」


 ルキエナがバツの悪そうな顔で説明する。


 「それで……また恭一さんに宝玉の回収を手伝っていただけないかと……」


 ルキエナが恭一を縋るような目で見つめる。

 その視線を受けた恭一が頭を掻きながら、少し嬉しそうな顔で一言こぼす。

 

 「また面倒な事になってきたぞ」


                          

どうにか完結させることが出来ました。ここまでお付き合い下さりありがとうございました。 

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