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幼女という名の上司

 デザートも食べ終わり、紅茶を入れて和やかな雰囲気で二人で飲んでいると、突然ルキエナの服の一部が光って点滅し始める。 

 ルキエナがポケットに入れていた立方体を取り出して手のひらに乗せる。

 立方体が青白く光り続ける状態になった。


 「おお、ルキエナ、今度はすぐに応答できたようじゃな。」


 立方体から声が聞こえる。


 「はい、ウアルフェ様。ご心配をおかけしています」


 ルキエナが立方体に向かって返事をする。

 それを見た恭一が、


 「お?連絡が来たみたいだな。よかったじゃないか」


 安堵の表情を浮かべてルキエナに声をかける。


 「ん? その声は先程の現地人か? まだそばにおったのだな」


 「ええ、先程の交信のあと行く宛もなくどうしようかと途方にくれていたら、こちらの恭一さんのお宅にご厄介になりまして、お食事までご馳走になったところです」


 ルキエナが恭一を紹介する。


 「なんと、そうだったのか。そこの少年、いや恭一殿だったか?ルキエナが世話になったようじゃな。すまんのう。礼をいっておくぞ」


 「いえ、そんな、どういたしまして」


 「フフ、なかなか礼儀正しいようだな。では改めて自己紹介しよう。ワシの名はウアルフェ。<イーゼリア>を管理するものじゃ。そうじゃのう、わかりやすく言うといわゆる<神>というやつじゃな」


 「は?」


 「イーゼリアは、お主の居る世界から見ると異世界というやつじゃな。その世界ではワシは主神ウアルフェとか女神ウアルフェとか呼ばれて崇められておるぞ。いろんな所にワシを祀った神殿が建てられておって結構人気な女神様なんじゃぞ」


 「いやいやちょっと待てって!」


 話についていけず、あっけにとられていた恭一が我に返って慌ててツッコミを入れる。


 「いきなり異世界だとか神様だとか言われても信じられないって! っていうか女神? 言葉遣いからてっきりルキエナの爺さんかなんかだと思ってたのに!」


 「む?なんじゃ、その辺の事はまだ話してなかったのか? ルキエナ」


 「はい。『こちらの世界の人間に接した場合は、くれぐれも慎重にせよ』とウアルフェ様がおっしゃいましたので」


 「フム、確かにそんな事を言ったかもしれん。しかし短い時間とはいえルキエナに良くしてくれたようだし話してもよかろう。恭一殿、そこに居るルキエナも一応神の端くれでのう。ワシを補佐する役目についておる」


 「神の端くれって、ヒドイですよ、ウアルフェ様」


 不満げに眉をひそめてウアルフェに抗議した後、ルキエナは恭一の方に体を向けた。


 「改めまして恭一さん、女神ルキエナと申します。よろしくお願いしますね」


 「いや、よろしくって言われても……」


 こちらに向かって微笑むルキエナを見ながら恭一は考え込む。


 (確かにコンビニに初めて来たとか言ってたしなあ。こんなピカピカ光るサイコロ型のケータイなんて聞いたことないし、そもそも紫色の瞳なんてゲームかアニメの中でしか見たことないぞ)


 「む?なんじゃ黙りこくって、さてはお主信じておらぬな? それにワシの事もこともあろうに爺さんとか言っておったしな。よし、それならワシの姿を見せてやろう。ルキエナ、そちらからキューブに神力を送れ。経路を強化するぞ」


 「え?そんな事して大丈夫なんでしょうか?」


 「これくらい問題なかろう。それに声だけでは状況の把握も困難だしな。そちらの状況も見えるようにした方が良かろう」


 「そうですね。わかりました」


 そう言ってルキエナが立方体に向けて右手をかざす。

 右手から薄紅色の淡い光が出て立方体に照射される。


 「ずっと気になってたんだけど、その光るサイコロみたいなやつ何なんだ?」


 「これは<交信キューブ>。下界に顕現した神が神界と交信するための神具です。単純に<キューブ>呼ばれる事が多いですね」


 キューブから発していた青白い光が赤みがかって紫に色が変わった。


 「よし、うまく強化できたようじゃな。フフフ、今からワシの美しき姿を見せてやるぞ、見とれるなよ?」


 ルキエナが左手に乗せていたキューブをそっとテーブルの上に置く。

 キューブから発せられる光が強くなり、その光の中に美しい女性の姿が立体的に投影される。その姿を見て恭一が思わず一言こぼす。


 「え? ロリ女神?」


 「な!?」


 毛先がきちんと切り揃えられた銀髪に、天女を思わせる羽衣と白い着物を着てショックを受けてのけぞっているその顔は確かに美しいが、目が大きく幼く見え、小柄なことも相まってどうみても十歳から十二歳くらいの美幼女にしか見えない。


 「うう……確かに他の神からも、<ロリ女神>とか<ロリババア>とか言われておるが……ウアルフェちゃんとかちゃん付けで呼ばれるしのう……」


 頭をがっくりとうなだれてウアルフェが落ち込んでいる。


 「ちょっと! ヒドイですよ恭一さん! ウアルフェ様気にしてるんですからね!? 見た目がその――若々しくみえるのを!」


 ルキエナが目を吊り上げフグのように頬を膨らませて恭一に詰め寄る。


 (うお!打たれ弱いな女神様)


 と内心焦りながら恭一が、


 「ああ! すげー綺麗な女神様だ! 妖艶で色っぽくてこの世のものとは思えない! その姿を見てすぐに貴方が女神様だと信じました!」


 必死に見え見えのお世辞でフォローしようとする。

 それを見てウアルフェが力なく笑う。


 「よい、まあ言われ慣れておるしな。あと言葉遣いも今まで通りで構わぬ。ただまあ気にしてもおるので、ロリとか幼いとかあまり言わんでくれると助かる」


 「ああ、悪い……俺のことも恭一って呼んでくれればいいから」


 恭一はウアルフェに頭を下げて謝った。


 「それで、君たちが女神様だとして、ルキエナはどうしてこの街に来たんだ?」


 ウアルフェは真剣な表情になり、


 「そうじゃな、お主に説明してやろう」

 

 と語りだした。


お読みいただきありがとうございます。

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