不意打ち
その頃、恭一は朝食を食べ終わり、学校の準備を整え、家を出るまでの時間をルキエナとリビングで過ごしていた。
キューブの交信でウアルフェも交えて、前日の事について話していた。
「昨日は本当に大変だった……」
恭一が万感の思いを込めてしみじみと言う。
「本当にお疲れ様でした。恭一さん」
「うむ、よくやったぞ」
ルキエナとウアルフェが恭一の功績を称えた。
「朝からトラックに轢かれそうになったし、その後もハリセン持って大立ち回りしたし、飛んだり跳ねたりして体のあちこちが痛いよ」
「身体強化の反動ですね」
ルキエナが苦笑して説明する。
「うむ、しかも宝玉の回収に成功したかと思えば、最後に二人も道連れにしようとするしのう!」
ウアルフェが怒りの声を上げる。
「ホント奈月さんも風香さんのお父さんも助かってよかったよ」
「うむ、一時はどうなるかと思ったがな」
「宝玉の力の残滓ってやつはどうなったんだ?」
「あの後調べたがどこにも見当たらんかったから大丈夫じゃ」
「それを聞いて安心したよ」
ウアルフェの言葉を聞いて恭一はほっとすると同時に昨日の学校の惨状を思い出す。
「そもそも今日って授業あるのかな? 昨日は授業どころじゃないことになってたけど」
「うむ、そのことなんじゃが」
ウアルフェが少し間を置いて話し始める。
「こちらの管理神と話し合った結果、宝玉の力の被害者達は、まず宝玉の力の残滓の影響が出ないように一斉に浄化して気力も回復させておる。宝玉に気力を奪われている間の記憶も改竄され、昨日の事件は無かった事になる。多少記憶が残っておる者もいるかもしれんがすぐに忘れてしまうじゃろう」
「そっか、じゃあいつも通りに戻ってるってことか」
「それとのう……」
ウアルフェが言いにくそうに言葉を詰まらせる。
「何だ?」
恭一はウアルフェの様子に不安を覚えながら続きを促した。
「ワシら女神が関わったという痕跡も消す。ルキエナの姿を見た者は恭一も含めて、ルキエナがこの世界を離れると同時にワシとルキエナに関する記憶が別のものに書き換えられる」
「……え?」
恭一は一瞬何を言われたのが理解できなかった。
だんだんとウアルフェに言われたことの意味を理解していくと共に胸の動悸が早くなる。
「いつ……こっちを離れるんだ?」
動揺を隠しながら恭一が尋ねる。
「宝玉の影響が残っていないか確認するために今日一日はこちらの世界にいますが、夜には離れます」
ルキエナがうつむいたまま答える。
「今日……か」
夜になればルキエナは居なくなり、彼女と過ごした日々の記憶は無くなってしまう。
突然ルキエナとの別れを告げられた衝撃から立ち直るのに時間がかかり、恭一は高校は出発する時刻が遅くなってしまった。
お読みいただきありがとうございます。
ここまでなんとか日を開けずに更新できていましたが、この先を練り直したい事と仕事が忙しくなるため、次の更新が少し時間がかかります。暫くお待ち下さいませ。




