表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/42

陳謝と感謝

 外にでると、雨が上がりスッキリと晴れていて、夕日が街を赤く染めている。


 「それじゃあ俺達そろそろ帰るよ」


 恭一が風香に別れを告げる。

 風香は恭一達を病院の外まで見送りに来ていた。


 「ええ、その前にこれをお返ししないと」


 風香はルキエナに気与の水晶を差し出した。


 「はい、確かに返していただきました」


 ルキエナが水晶を受け取る。


 「それじゃあ、また」


 恭一が風香に手を振って出発する。

 

 グルグルグル


 恭一の腹の虫が鳴り出した。


 「ハハハ、そういえば今日は朝食べたっきり何も食べてないな」


 恭一は片手で腹を撫でて苦笑する。


 「クスクス、そうでしたの」


 風香がクスリと笑った。


 「よろしければ、私にご馳走させていただけませんか?」


 「えっ、そんな、悪いよ」


 恭一が遠慮して断ろうとする。


 「遠慮なさらずに、何か食べたいものはありますか?」


 風香に笑顔で言われ、恭一は断るのを躊躇う。


 「それじゃあ、近くのファミレスでいいかな?」


 「わかりましたわ」


 風香に連れられて病院の近くにあるファミレスへ向かう。


 「私は水晶を返してこないといけないので、先に行ってて下さい。後程合流しますので」


 ルキエナが離れて先に行くように言い出す。


 「ファミレスの場所はわかるのか?」


 「はい、あの赤い看板ですよね?」


 ルキエナがファミレスの特徴的な赤い看板を指差す。


 「うん、わかってるならいいや。それじゃ後でな」

 

 「はい、また後程」


 (変だな? 急にこんな事言い出すなんて、まあいいか。大した事じゃないだろうし)


 恭一はルキエナの様子を奇妙に思いながらも、気にしないことにしてルキエナと分かれて、風香と共にファミレスに向かった。



 「悪いな、ご馳走になっちゃって」


 恭一は食べ終わったハンバーグ定食の皿を見ながら風香に謝った。


 「いいえ、それで足りたかしら?」


 風香は注文した紅茶を優雅に飲みながら尋ねる。


 「うん、充分だよ、ホントありがとな」


 恭一は風香に笑顔で答えた。


 「いいえ……お礼を言うのはこちらの方ですわ……」


 風香が表情が暗くなる。


 「もし、神楽屋君とルキエナ様のお力がなければお父様も奈月も命を失っていたでしょう。私が宝玉の力を使ったばかりに……神楽屋君は『あの宝玉が危険だから渡せ』ってずっと言ってくれていたのに」


 「涼原さん……」


 「それなのに、貴方のことを宝玉目当てだとか、お話したくないとか、ひどい事をいってしまったわ。本当にごめんなさい……」


 風香はうつむいて泣き出した。


 「……」


 泣いている風香を見て恭一は何か声をかけようと必死に頭を働かせる。


 「涼原さん、君は俺が宝石目当てで助っ人になったって言ってた。もちろんその目的があったのは間違いない。でも涼原さんの事を助けてあげたいって思ったのも本当の事なんだ」


 「え……」


 風香は顔を上げて涙に濡れた目を見開かせる。


「なんか最初に噴水広場で見かけた時も、気だるいような疲れた顔してたからさ、なんか気になっちゃって」


「神楽屋君……」


「それに今日も体育館で、涼原さんがみんなの期待に応えようとして押しつぶされそうになってた事を知って、ますます放っておけなくなっちゃって。ああ! もう! なんて言えばいいんだ!?」


 恭一は頭を掻きながら自分の言いたい事を整理する。


 「困ったときは助けてって言えばいいし、嫌なものは嫌ってはっきり言えばいいんじゃないかな? 他人にどう見られているかより、自分がどうしたいかを考えようよ。俺でよかったらいつでも力貸すからさ」


 「……」


 風香はまばたき一つせずに恭一を見つめてる。


 「って何偉そうなこと言ってんだろう俺。ごめん変なこと言った」


 「いいえ、とっても嬉しいわ。ありがとう」


 風香は頬を赤くして嬉しそうに笑った。

 その笑顔があまりにも綺麗なのっで恭一は見とれてしまった。


 「ねえ、神楽屋君」


 「ん?」


 「早速お願いしたいことがあるんですけど」


 風香が上目遣いに頼み事をしてきた。


 「何?言ってみてよ」


 恭一が微笑みながら内容を訊く。


 「私のお友達になってくれませんか?」


 「うん、わかった。俺で良ければ涼原さんの友達になるよ」


 「お友達なんだから『涼原さん』はダメです」


 風香が口を尖らせた。


 「えっと、何て呼べばいいのかな?」


 恭一が尋ねる。


 「風香で」


 「呼び捨てはちょっと……じゃあ風香さんでいい?」


 「ええ、それでいいですわ。それじゃ恭一君って呼んでいいですか?」


 「ああ……いいよ」


 恭一は頬を掻きながら許可した。


 「それじゃあ試しに呼び合ってみましょう」


 「ああ、わかった」


 「恭一君」


 「風香さん」


 「恭一君」


 「風香さん」


 「ウフフフフ」


 風香は恭一の顔を見ながら楽しそうに笑った。

 恭一は照れくさくなって居心地が悪くなってきた。


 「ああ、そういえば、ルキエナが来ないな。心配だから迎えに行かないと」


 「そうですか。ルキエナ様によろしくお伝え下さい」


 「ああ、わかった。それじゃあ風香さん、ごちそうさま」


 「ええ、ごきげんよう、恭一君」


 挨拶もそこそこに恭一は逃げるように店を出た。

 風香を熱っぽい視線で恭一を見送った。



 店を出てきた恭一は、ホッとため息をついた。


 「恭一さん」


 ルキエナの声が聞こえてきて、恭一がその姿を探す。


 「こっちです」


 ルキエナが恭一の後ろから近づいてきた。


 「え? 後ろに居たってことはもしかして店から出てきた?」


 「正解です」


 「え? でも店で見かけなかったような」


 「えっと……ウアルフェ様が、きっといい雰囲気になるから姿を消してこっそりと見守れと……」


 ルキエナが言いにくそうに説明する。


 「またかよ! 交信切ってたんじゃなかったのか!?」


 「ちょっと手が空いたから様子を見に来たんじゃ。ククク、初々しかったのう、楽しそうに名前を呼び合って。この女タラシめ」


 「もうやだ! この女神」


 恭一は頭を抱えて叫んだ。


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ