表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/42

一か八かの跳躍

 

 恭一の目の前で、屋上から奈月が飛び降りてくる。


 (間に合わなかった!)


 非常階段に向かっていた足に急ブレーキをかける。


 (だけどまだ諦めない!)


 落ちてくる奈月を抱きとめようと、奈月に向かって走り出す。


 「会長おおおおお!!」


 必死に奈月に叫びながら走る。

 無我夢中で走っているうちに走ることすら煩わしくなって奈月に向かって飛び跳ねた。


 「うおおっと!!」 


 身体強化の影響か一気に校舎の二階くらいの高さまで飛び上がる。


 「うおお、ちょっと怖いかも」


 そのまま高度が上がり、落下してくる奈月の体が近づいてくる。


 「うおお! 会長おお!!」


 空中で奈月を抱きかかえることに成功する。


 「神楽屋君……」


 奈月が呆然とした顔で呟く。


 「しっかりつかまってて下さいよ。ってヤバい! ぶつかる!!」


 「え?」


 二人に校舎の壁が迫ってくる


 「きゃあああ!!」


 奈月が悲鳴を上げて恭一の首に縋りつく。


 「だりゃああ!!」


 ぶつかる直前で恭一が壁を蹴って難を逃れる。


 「って今度は木かよ!!」


 壁を蹴った反動で、二人が校舎のそばに植えてある木の方に、斜めに落下していく。


 「うわああああ!」

 「きゃああああ!」

 

 バキバキバキバキバキ

 

 木の枝を折りながら、辛くも着地に成功した。

 

 「痛ててて」


 木の枝で擦りむいたのか恭一の体のあちこちに擦り傷ができている。

 

 「ちょっと無茶しすぎたな。会長、大丈夫ですか?」


 恭一は抱きかかえている奈月が無事か確認した。


 「……」


 奈月は顔を赤くして恭一に熱っぽい視線を送っている。


 「会長?」


 「ん? ああ、すまない。気が抜けてしまって」


 奈月がハッと我に返って返事をした。


 「そりゃあんな目にあったら気も抜けますよね。待っててください。今おろします」


 抱きかかえたままの奈月を下ろそうとして、恭一は改めて自分の状態を見る。

 左腕は奈月の背中を支え、右腕は彼女の膝の裏に手を入れている。奈月自身はは落ちないように恭一の首の後ろに手を回して両手を組んでいる。

 まさにお姫様だっこだった。


 (これは恥ずかしい)


 恭一は赤面しながらも奈月をそっと下ろした。


 「ホントに無事でよかった。屋上から会長が降ってきたときはもうダメかと思いましたよ」


 恭一はため息をもらしながら声をかける。


 「本当にありがとう。助かったよ」


 奈月が力なく笑って恭一に感謝した。


 「もうこんなことしないで下さいよ? 自殺なんかしちゃだめですって」


 「そうだな……全く、いろいろな人に心配や迷惑をかけてダメな生徒会長だな」


 奈月は泣きそうな顔で笑って自嘲する。

 そんな奈月の様子を見て恭一は胸が苦しくなって何か声をかけたくなってくる。


 「あの!」


 「ん? 何だい? 神楽屋君」


 「あの、前にも言いましたけど、会長は――ってまた会長って二回言っちゃいそうだな」


 「フフフ、奈月でいい」


 「奈月さんは会長にふさわしい魅力的な人ですよ! そう思ってるのは俺だけじゃないと思います! もっと自信を持ってください!」


 「ありがとう……恭一」


 奈月は目尻に涙をためて嬉しそうに笑い、恭一に抱きつくと、


 チュッ

 

 恭一の頬にキスをした。


 「へ?」


 その身に起こった事態についていけずに恭一が間抜けな声を上げる。


 「フフフ、今言ってくれた事と助けてくれたことのお礼だ」


 奈月が頬を赤くしてウインクする。


 「いや、えっと、どういたしまして」


 恭一も赤面しながら頭を掻いて答えた。


 「……」

 「……」


 気まずい沈黙が流れて居心地が悪くなると同時に、恭一は病院に向かった風香の事が気になりはじめた。


 「あ、あの、俺そろそろ行かなきゃいけない所があるんで、これで失礼しますね」


 「そうか、わかった」 


 「雨で濡れてますからキチンと体拭いて下さいよ?」


 恭一は奈月の体に目を向けるが、制服が濡れて張り付き、彼女のグラマラスな胸が目立って慌てて目を逸らす。


 「フフフ、わかった」


 奈月が悪戯っぽく笑って両腕で胸を挟んで寄せ上げ、わざと胸を強調させながら答えた。


 「会長、はしたないですって」


 恭一は目を逸らしたままやめるように言うが、


 「ウフフ」


 奈月は笑ったままやめようとしない。


 「そ、それじゃあ失礼します」


 恭一は奈月に背を向けて逃げるように走り出した。


 「ああ、またな」


 奈月は恭一の後ろ姿に熱っぽい視線で見続けた。


 奈月の元を逃げるように走り去った恭一は、校舎に入って奈月の姿が見えなくなると、立ち止まって呼吸を整えた。


 「ふう、奈月さん、ちょっと変だったぞ」


 胸を見せつけるかのようにわざと強調した奈月の姿が頭に浮かび、それを振り払うかのように頭を左右にふると、なかなかおさまらない心臓の動悸を落ち着かせるために深呼吸しはじめた。


 「恭一さん」


 深呼吸している恭一にルキエナが声をかけて近づいてきた。


 「ルキエナ? そういえばそばにいなかったけど、どこにいたんだ?」


 「恭一さんが落ちてきた奈月さんに向かって突然飛び上がったので、恭一さんに神力を送って体のバランスをとるサポートをしてたんですよ。普通の人はあんな高さまで飛べないんですからいきなりうまくできるわけないでしょう?」


 ルキエナが恭一にジト目を向ける。


 「ああ、そうだよな、ごめん」


 恭一は頬を掻きながらルキエナに謝った。


 「もう! 無茶しないで下さいよ! 恭一さんと奈月さんが壁にぶつかりそうになったときはホントにヒヤッとしたんですから! その後もバキバキバキッって枝を折りながら木にぶつかっていくし! 木の幹に激突しないようにこちらからサポートしたんですからね!?」


 「ああ、あれはヤバかった。マジでサンキュー」


 恭一は木の枝を折りながら自分が落下していく場面を思い出して少し顔を青くさせてルキエナに感謝した。


 「サポートしてくれたのは助かったけど、着地した後どうしてこっちに来なかったんだ?」


 「えっと、それはですね」


 ルキエナが言いにくそうに口ごもる。


 「ん? どうした?」


 「なんかいい雰囲気だから空気を読んで近づかないでやれとウアルフェ様がおっしゃいまして……」


 ルキエナが恭一から顔を背けながら答えた。


 「それは……」


 恭一は奈月が頬にキスしてきた事を思い出して赤面してうつむいた。


 「えっと、一部始終見られてたってことか?」


 「……」


 遠慮がちに答えたルキエナの言葉に恭一は耳まで赤くなった。


 「フフフ、見ておったぞ。『ホッペにチュー』この色男め」


 ウアルフェが愉快そうに恭一をからかう。


 「よく助けたな。でかしたぞ。しかし奈月殿の件を見ると、まだ他にも宝玉の残滓が悪さをしている可能性も考えねばならん。ここまで交信したまま様子を見てきたが、一度切ってこちらの管理神と悪影響が残ってないか調べることにする。ルキエナは風香殿に合流して彼女のサポートをしてあげなさい」


 「わかりました」


 「俺も行くよ。やっぱり気になるからさ」


 「そうか、それなら恭一も行くが良い。それでは交信を切るぞ、風香殿の父君が助かると良いな」


 キューブの光が消えて交信が終了した。


 「涼英総合病院へ向かおう。タクシー呼ぶからさ」


 恭一はケータイを取り出した。


 「タクシーですか、乗ったことないです」


 ルキエナが不安そうな表情になる。


 「そんな大層なものじゃないって。後部座席に座ってればなにもしなくてもたどり着くからさ」


 恭一はルキエナに安心させるように言うと、ケータイでタクシーを呼んだ。


お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ