ー7ー
ーとりあえず、これでいいかねぇ。
のんびりと間延びした声。
大助は辺りを見回すが、姿が見つけられない。
ーどこ見とるんじゃ?。こっちじゃ、こっち。
声の主が大助を呼ぶ。
大助は声のする方に近づいていく。少しずつ少しずつ……ゆっくりと。
ーあ、危ないっ。下じゃ、下っ!!。
(……下?)
大助は足元を見た。濡れた草や小枝、それと掌大の石……が、動いた。
「!!。石が動いたっ!!!。」
大助は思ったままを言葉にした。
ー誰が石じゃっ!!。
「石が喋った!!!。」
ーお主……とりあえずわしを持ち上げてくれんかのぉ。
呆れたような声で石(?)が言う。
大助はビビりながらも石(?)を掴んで持ち上げてみた。表面に苔が生え、少しヌルヌルした石……から何かが出てきた。
「うわぁぁぁっ!!。」
大助は慌てて手を離そうとした。
「こ、コレッ!、命の恩人を落とす気かっ!!。掌に乗せんかっ!!。この若造がっ!!。」
石(?)は焦って大声で怒鳴った。よく見ると、その石(?)には手足と尾があり、顔をニョキッと大助に向けている。
(石……じゃなくて………亀?)
大助は観察してみた。確かに亀だ。どう見ても亀だ。
「……か、亀ですか?。」
「亀だが何じゃ?。」
大助が確認の為聞いてみると、石……もとい亀はそう答えた。
「「………………。」」
黙り込む1人と1匹。
「か、亀が喋ったぁ!!。」
大助は何も考えられなくなって、掌の亀をぶん投げた。
「この、バカ者がぁぁぁぁぁっ!!!。」
いきなり投げられた亀は、大きな叫び声をあげながら草むらへ飛んでいった。