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誤字脱字は気をつけていますが、ありましたならお知らせください。
その日は予約の電話も飛び込みの客もなく、のんびりとした午前中だった。
朝から腹の調子が良くなかった大助は、スマホで小説を読みながらトイレにいた。
最近ハマっている小説……異世界に飛ばされた少年の物語……の続きを読んでいた。
(異世界かぁ……俺だったらどうするかなぁ)
別に今の生活に不満はない。
最愛の妻に2人の息子。しかも下の子はまだ産まれて5ヶ月。可愛くてしかたがない。
仕事はサービス業で万年人手不足だが、やりがいのを感じている。
まぁ、土日休みがとれなかったり、帰りが20時半を過ぎるのは辛いが、それは諦めている。
(さてと……店に戻らないと)
ジーンズを上げ、水を流す。
(そろそろ小林さんが来る時間だ)
スマホで時間を確認しながらドアを明け、トイレから出た……ら鳥の囀りが聞こえた。
(へ?)
不思議に思いながらスマホから顔を上げると、そこには見慣れた鏡がなく、青い空と広い草原が広がっていた。
(……あれ?)
大助は後ろを振り返ってみた。
そこにはあるはずのトイレのドアはなく、巨大な岩が1つあるだけ。
(……あれ?)
辺りを見回してみても、トイレどころか職場の建物もない。
「……あれぇぇぇ?」
これが中橋大助が異世界に飛ばされて最初に発した言葉だった。