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閑話・ある少佐の憂鬱

ミトラウス公国親衛軍、軍務支援団情報対策部門長。



ガウナー・ライデンクルス



彼の友でもあり主でもある男が、彼にある程度以上の権限と自由さを持たせ得意とする分野で動けるようにしつつ。



周りからの嫉妬や反感を大きく買わせない為に頭を捻り、わざと微妙そうな印象にした役職名がそれ。



階級は少佐。




貴族ではあるものの下級に分類される家の出身で、公主の友人の身。


友でもある彼の主はもう少し彼の働きに報いてやりたいと考えているのはわかっているが。




これ以上の分かりやすい出世をすると【お偉方】の反感が強まるのを嫌って、昇進や恩賞を固辞しているのが最近の彼の悩みの一つだ。





何せ喧しい連中は彼が昇進の話を受ければ、当然渋い顔をするのに断れば断ったで「拒否するなど何様か」「図に乗っている」と反感を抱いてくれるのだから。




若く小さく、貧困層が今だに大半以上を占める国においての派閥争いや出世競争、腐敗。



・・・全く笑えない話だが、近頃は本当に笑う笑えない所では済まないレベルになってきている。




毎年出ている餓死者が減るに連れ飽食を愉しむ連中が増え。



民間の医療体制が、最低限とはいえやっと広まり始めたと思えば、高価な医療を金儲けに使う連中が増え。



学問を育てようと思えば、下層民が知識を付けるのが気に入らないからと、それを邪魔する連中が増え。



技術が育ち備わって来たと思えば、深い考えも無しにそれを売り飛ばす連中が増え。



先祖が苦労して国を育ててきたのだから、子孫の自分が国から益を貰うのは当然だと考える連中がまた、面倒さを増してくれる。



色々な問題に対して、己に任された権限で対応出来る範囲以上に対策や解決策を練るのが彼の、友に対する礼であり趣味であり、仕事をする上での姿勢であるが。



限界も無いではない。







夜。



幾つか用意した簡単な住居にも帰らず。



ため息をつく暇すら惜しみ頭を回転させる彼を、今最も悩ませているのが机の上に置かれた紙片、・・・書類とは言えない単なるメモの束。


正確にはその紙片に記載された人物の、テスト内容と査定値らしき物が、だ。




「・・・有り得ないだろうが・・・」




彼は普段口にしない、しかし今日に限ってはもう何度目になるかわからないセリフを又も口にしていた。




魔力──動物や植物が、種族差や個体差があれど、およそ全ての存在が持ち合わせる自然界に働きかける力の総称。




人の場合の話として。



50%近くの個体が、今日は勘が働くとか、今日は運が良い等のちょっとしたレベルに留まり。



残りの50%近くの個体が、魔導器を使っての多種多様な現象を起こすに到る。



歴史を重ねるにつれ、その50%の中でも強弱や向き不向きはあるのが分かってくれば。



優秀な素質を持つ者を見つけたいと願うのが当然であり、それを何とか分かりやすい形に表せないのかと考えられ出来上がった物の一つが、ミトラウス式魔力査定だ。



ミトラウスが帝国からの強制的な独立の際、独立に参加させられた人材の中に帝国の魔力査定のやり方を学んでいた者がいた事と。



独立して多少の後、部分的ではあったものの教国からの支援の中で魔力の分析、能力査定に関わる技術、専門知識の一部を提供してもらえた事が重なり。



後はミトラウス国内での大量の査定の経験と、結果によるノウハウの蓄積。

そして度重なる修正が現在のミトラウス式の魔力査定になる。



どちらかと言えばそのやり方は兵士として、戦闘に関する所で秀でてくる物を優先して査定されるように出来ており、体力測定に始まり知識、判断力や性格といった肉体面及び精神面と。



魔力を使い、自然界に働きかけ発現させる力の大きさ、精密性、継続力や回復力、応用性などの対自然交渉力。



そして人造生体との魔力的な相性。



それを組み合わせた複合的な、半日から一日がかりのテストになる。




重量のある物を方法を問わず移動させる。


離れた所に居る他者と、方法を問わず意思の疎通を図らせる。


劣悪な環境を方法を問わず快適な物に変えさせる。


わざと性能の悪い魔導器を渡し、もしくは逆に性能の良い魔導器を渡し。




目的を変え、状況を変え、しかし正解や達成を求めず、結果を誉めもせず不足を咎めもしない。



曖昧かつ自由度の高い内容。



専門にそれらを扱う者でない限り理解出来ないような、意味がわからないような事の連続なのだ。



その為に受けている方は、今自分が何を試されて何を期待されているのか、何をするべきだったのか、してはいけなかったのか。



かつて受けたであろう親が分からないのだから、立身出世の為良い結果を出せるように頑張れ、と激励される子供にも分かる事もなく。




査定終了後に郵送で送られる結果通知と言えば。



貴方の魔力査定はランクEでした、兵士になるには厳しいかもしれません、だの。



ランクBです、優遇しますよ志願をどうぞ、や。



貴方は魔力を運用するより、○○に向いているかと思われます。等といった。



上限下限が分からないランク一つと、無責任な一言が記載されただけのこれまた不親切な物なのもあって。



世間一般の常識では、魔力査定と言うものは曖昧な所しか測れない代物なんだと認識されているのが現状だった。




が、曲がりなりにも国家事業である。


最低でも半日がかりの大仕事、曖昧な通知や上手く誤解させた常識を隠れみのに、実際にはかなり精密に測れるのが魔力査定だ。




その魔力査定の、嘘偽りないの無い方の結果らしき物が、今ライデンクルスの目の前にある。



今日、昼間に脅しを含めた尋問を食らわせた若い下士官。


タキと呼ばれる人間の物だ。




──今日の昼に自分の所で話をしました、行動支援はやります・・・多少の不安がありますが何とかやってみます──そうライデンクルスに言われた友人が、公主が迷いながらも寄越してきた幾つかの紙片だった。




魔導局の人間が表向きは偽物を用意して、実際の所を公主である自分に直接持って来た物・・・そう言われてライデンクルスも面白くなかったが、今はその局員を責める心境になれない。


何十年も前に頭に叩き込み、今も修正を繰り返されている魔力査定の判断基準を思い出し、手が震えていた者が書いた事が簡単に見て取れる字で記されたメモ書きと比べる。




ミトラウスにおいて、およそ一般的な魔導の素質をランクで表す場合。


火力、機動、精密性。


運搬、通話、索敵。


治療。


容量。


そして、生体魔導兵器適性。


これらを測り、全体的にD以上を確保していれば魔導器を使用する歩兵として一般的なレベルと言える。




もちろん同ランクと判別された者達であっても、個々の素質により能力の水準は一定ではなく。


加えて、肉体面のテストと合わせた場合、総合で見た能力はランク別に限らずばらつきが出て来るのは当然だ。



・・・訓練を重ねる事により容量の増加や、経験を積む事による精密性の向上などはもちろん可能。



しかしながら劇的な向上は見込める類の物ではない為、査定時に最も重視されるのはやはり、生まれ持った素質。




それらを踏まえ、育成に対する手間と実働させられる時間を天秤にかけ、兵士として運用に耐えると判断されるのはミトラウスでは査定項目の大半がD以上から、そういう話になっている。


火力D、機動D、精密性D。


運搬D、通話D、索敵D。


治療D。


容量D。


そして、生体魔導兵器適性のみCから。


これが所謂合格ライン、兵士として最低限以上は力を有すると判断される基準。



Eが混じっても可となる場合もあるがそれは、項目の中にBに届く所が出てきた場合の話で、得意分野を持つ、もしくは素質で秀でる所を持つと判断されるからで。



項目の大半にC、Bが目立つようならベテラン、または優秀な素質を持つとされ志願時に優遇措置が付き始め。



Aが一つでも付くようなら精鋭扱いに、志願前の査定でそれならば下層出身だとしても将来の士官として高等教育が約束されている。




項目ごとにバランスが悪い者も含む、と前置きが付くがAを付けられる者もそれなりに出る。


数百人から千人に一人、志願前の査定で項目にAを一つ付けられる割合はその位は居る。


毎年、軍への志願が数万あり。


内の数十から数百人が項目の一つ二つにAを付ける事が出来て、そこから戦闘に向く素質と期待されるのは5、6割程に減り。


後方、支援の人材はともかく、訓練を施されて実戦を生き延び、精鋭として存在し続けるのは最終的に二割。



素質に優れ実戦に向き、実際に強い者は非常に貴重。




ライデンクルスも50を超した今は衰えが始まっているが、9歳の時に査定を受け、天才と評される位に優秀な結果を出した一人。



戦闘には向かないタイプのだが。

体力テストと合わせた総合はB。


生体魔導兵器適性はEで搭乗士には不適格、治療と容量でD、火力はCとしか出ず前線配置には縁はなかったが、機動と運搬でBを。



精密性、索敵でAを出した事で彼は後方支援に生きる事になった。



思う所はあったが努力を怠る事なく火力と治療をBに、容量をCに引き上げたのを魔導局の人間はさすがだと言ってくれたのは素直に有り難く思ったものだ。




だから解る。



今、彼の手の中にある紙片、このメモの内容がどれだけ凄まじいか。





最初の文が、酷く震えた文字で【異常あり】である。


続いて、


【テスト開始、魔導器が被験者の魔力使用と同時に次々と故障、損失。用意した中で最高の品質、性能の魔導器が問題無く稼動。

原因は被験者の魔力にあると思われる、被験者に疲労見られず容量、発現量、共に大・・・極めて大】




次に実施されたテストと結果。


【小石から巨石まで数百個ある石材を、赤い線のサークル内から離れた場所の白い線のサークル内へ移動させよと指示。


被験者、了解と共に魔導器発動、石材が全て同時に浮かび上がり離れたサークル内に歩行で向かう被験者の後を追尾。


途中脱落無し、サークルに到達、石材、ゆっくりと降着、破損僅かに見られる。


終了。


平均所用時間3時間の査定を一分余りで完遂。


被験者に疲労見られず、発現量、容量共に大、雑さが残るものの精密性優れる事疑い無し。

運搬力大。】




【森林第3訓練場において、隠れている者を見つけ出せと指示を下す。


被験者了解と共に魔導器発動、5分程迷っていたが魔力をどう運用するか決定したらしく索敵開始。



森へ入らず外縁部にて立ったまま十秒後、森林内に17人確認と返答、正解は19人。


二人認識に至らず。



どのようにしたのかと聞けば魔力を棒状に伸ばし、端から端へ薙いだとの事。


シンプルなアイデアだが最も遠い者までは五百メート以上、射程優れる、精密性高し、即応性優れる。


被験者に疲労見られず】




【軽い降雨。査定に利用。

増幅器、発振機の回路が断線、故障している魔導器を正常な物と偽り被験者に与える。


必ず査定に一つは組み込む理不尽な要求をここで行う。


雨を止ませるように指示。



被験者から指示内容に誤りはないか確認が来る。


再度指示、内容変わり無し。


被験者了解と共に運用開始、正常に動作しない魔導器に不可解な表情を見せるが続行。


しばらく魔力の運用に悩んでいたが、上空に向け放出。



近くに居た私の心臓が止まるかと思える程の波動。



数秒、数秒だが確かに雨が止んだ。

止んでしまった、再度雨は降り始めたが、有り得ない。


何が起きたのか不明。



何をしたのか聞いた所、雨雲を移動させようとしたと発言。



軽くとは言え雨雲がかかっていたはずの空色が僅かに明るくなった気がする、確証無し。


被験者の疲労特大、ただし回復力は優れるように見受けられる。


・・・査定終了後にこの項目を読み返すも記憶に自信が無い、見間違いの可能性】



【治療は平凡、他者への回復魔術式は可も無く不可も無し。

一つ不可解な点あり、被験者自身の魔力は回復力異常、測定は困難】




【生体魔導兵器適性の査定。

訓練用の簡易製造型ドラグーンへ搭乗させる。



・・・念の為に第2訓練場での査定を中止、ティーンラウス周辺の森林内にて試験を行う。


生体魔力波長、人造魔力波長のいずれも短時間で同調に成功、搭乗一分で歩行制御を習得。



行われた試験方法は生体魔導兵器──訓練用ドラグーンを使用しての資材運搬と狭所通行、そして模擬弾による不意の衝撃への反応。



資材運搬、優れる。


狭所通行、優れる。

──地面より機体を僅かに浮遊させ、滑らかな移動を可能にする機動を行う。

被験者いわくホバリングと言うらしく詳細不明。


難点全く見当たらず。



狭所通行中に防御せよと警告、直後に模擬弾による不意打ちを開始、非常に滑らかな動きにて十秒間の内に放たれた8つの光弾を全て回避。



搭乗から三時間経っても動きに衰えは確認出来ず、適性きわめて優れる】



【計算式に当て嵌め査定値を出す・・・】




【火力推定SS以上(要塞砲クラスと見込む)

機動A以上

精密性B以上

運搬A

治療C(自分の魔力の回復速度はA以上)

通話B

索敵A以上

容量(現在の方式では測定不可、推測値SS以上)


生体魔導兵器適性SS以上。


体力テストと合わせ総合はAになってしまう。


・・・自分の目が信じられない。】



書き記した者の気持ちがライデンクルスにはよく分かった。



始めにデータを見た時、どこぞの貴族の子弟が己に箔を付ける為に金を積んで、自分のデータの捏造を依頼したと思ったのだから。



酷く読みにくいメモを何度も何度も読み返すライデンクルスは、どうしてもその内容が嘘にしか思えなかった。




異常の一言に尽きる。



全体的に非常に高いレベルで纏まりおよそ、隙が見当たらない。



比較的ランクがおとなしいのは【治療】ではあるが、特筆が付いている時点でまともではない。


戦闘に向く能力の査定値と、そこから類推される応用性、限界を見ていないという記述、推測混じりの物が多いとは言え完全に才能である。



育成前、志願する前の素質がこれ。


歳を考慮に入れずに考えても、この時点で既にミトラウスの最精鋭と言える所すら飛び越え、もはや大陸でも屈指。


これまでに入手してきた帝国が誇る加護持ち達、最強と呼ばれるその幾つものデータに比べても勝るとも劣らない値。


(才・・・いやこれが、・・・なのか・・・?)



本物と偽物の文字がライデンクルスの頭をよぎる。


嘘ではないのか?


・・・しかしこの値は、虚偽のデータを使い他者を欺く目的にしてもやり過ぎだ。



本当に本物なのか?



生体魔導兵器適性がSSと言うのは何なのか?。



餌や休息を必要とする馬や牛、積載許容量以上は運べず補修を必要とする場車等の荷車。



対して人造の生体兵器は、搭乗士の魔力を食わせ続けさせえすれば、いつまでも動き能力の限界を超え物資を運び、多少の破損は許容する。


運用する個々により、むらが出る面倒な物。


しかし個によっては確かに有用。


だから使われる、重視される。


ただし、ただしそこには、人造生体魔導兵器を運用する為には、製造に使用された幾つもの生物の、波長が違う魔力を同調させ得る能力があるのが前提なのだ。



搭乗する者の同調次第で稼動時間、打撃力、耐久力、運動性から機動性、反応速度、搭乗士の疲労の軽重まで変わって来る。


その能力を表す生体魔導兵器適性が、高いというのはそれだけで素晴らしい事なのだ。



その適性がSS。



ミトラウスの生体兵器乗りとして主力に挙げられる部隊の平均練度は適性BからA。


(・・・どれ程か想像もつかんな)



ライデンクルスは明日にでも、ランクAの生体兵器乗りの訓練を視察に行こうと決める。



同レベルで異常な火力と容量。


ライデンクルスの火力は現在B。


単純な例として、自身の運動に影響が少ないサイズの魔導器【手の平大サイズ】を全力発動、フレイムアロー等打撃力に優れる兵装を選択、射撃。


これが頭部または胸部に直撃した場合、30メル内までの成人男性に致命傷を与える事ができる威力。



これが仮に条件同じく、火力がAとなった場合、脇をかすめただけで上半身が無くなる。




問題の軍曹はSS以上。


メモを見せる相手に、比較対象を出す事で分かりやすくしようと思ったのだろうが、要塞砲は言い過ぎだろう。


言い過ぎだと思いたい。



それなりのサイズの魔導兵器で全力射撃をすれば何がどうなるやら。



まさか部隊一つまとめて消し飛ばせる訳はあるまいが・・・。



(・・・・・・)



なるほど、これは初めて見た時に友がどんな気持ちを抱いたか良く分かる。



イカサマを強制してくる気に入らない相手とのカードゲームで、なぶられ続けていた人間が何かの拍子に場を支配しかねない手札を呼び込んだようなものだろう。




「・・・だが・・・この手札は・・・」



露見しかかって・・・いや、間違いなく、相手に見られただろう。


査定を担当した者は異変を感じ、途中から目立たない場所を選んでテストを続けたようだが、まず無駄だろうとライデンクルスは感じる。



査定の日付はおよそ二年前。



・・・今までの間に魔導局に他国の人間が入り込んでいて、このデータに触れている可能性があるのと。


既に実戦に投入してしまった事実、観測されただろう結果。


「・・・新型三機は痛かった・・・」


帝国の損害を我が事のようにライデンクルスは悔いた。



人材は捨て駒か、期待のある者だったかは微妙な所だ、だが彼らが搭乗していた機体は紛れない新型。


どう考えても観測が付いているはず。


こちらのドラグーン改が、更に改良されていたフルカスタムタイプと勘違いさせようにもどうにも手遅れだ。


・・・指示の内容を間違ったと、部下に監視を優先させていたライデンクルスは心の中で、友に対し恨み言と詫びを同時に思った。



「・・・早く言ってくれれば・・・」


先日、手元に置いておく事にしたと言われて、慌てて体制を整えはしたが、それならやはり二年前に言っておいて欲しいのが本音になってしまう。



最近、各方向にフォローを入れつつも今日の時点で、やはり遅かったと思うからこそ、だからこそ味方になって欲しいと願いライデンクルスは今日、タキに接触したのだ。




しかし。



(・・・・・・何なのだろうな・・・)


あれは?


あれは何なのか?



好きになれない、否、激しい嫌悪、いや、根本的な所で排除をしたいと感じさせるあれ。


なんなのだあれは?



このメモを見た以上、やはり手元に置くしかない、どんな面倒が来ようとも。


そう思うライデンクルスは同時に、タキに嫌いなものを感じてもいた、それが分からない。


若い才能に嫉妬しているのかと自問自答してみたが、違う。



(・・・もっと違う何かが・・・?)


穏やかな圧迫と軽い脅しのハズが、顔を見た途端殺すべきと本能が騒ぎ立て始めたのだ



酷い嫌悪感?


出身に対する疑念?


性格に対する不快さ?



理由が分からない、分からないが奴の何かが、不自然さがライデンクルスには警鐘を鳴らされているように感じるのだ。


しかし生真面目な彼は単純に【嫌い】なのだと思わない、それだけでは自分を納得させられない。



疑念を抱いているのも確かだ。


どう考えても、両親や環境から学んでいくべき事を始めから知っているかのような行動が目に付く。



判断基準がおかしい。



同年・・・とまでは行かないが・・・老獪さが、社会に揉まれてきた者の生き方が見えるのだ

才能でも閃きでも感性でもない経験による行動指針、それがある。


不自然さが。



タキのそういった所はライデンクルスにとって、何かにより思想を偏向させられていると感じられ気に入らないのだ。



真実加護持ちだとして、冗談でなく【誰か】の声でも聞こえていると言うならそれは、生まれる前かごく幼い頃からに他ならず相手は祝福を寄越した存在になってしまい。



その神はミトラウスにとって都合がよろしくない存在の可能性があるのなら、タキがこの国に生まれてきた事は。



(・・・・・・)



それは・・・ミトラウスにどういった結果をもたらすのかがライデンクルスには不安だった。


とは言え今は・・・今はまだ、だ。



自分が名前を隠したように 奴も何か隠しているのだろう。



そういう物だからと、ライデンクルスは更に思考を加速させる。





タキを如何に使い、綺麗にいなくなってもらうかを。

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