5月10日 文学少女?
5月10日、天候くもり時々晴れ。
うろな駅からうろな北線の電車に乗って、一駅乗り継いだ先にある北うろな。その北うろな駅から、さらに自転車で15分ほど走り抜いた所にある背後に緑溢れる山があるとされるうろな図書館。そこでは沢山の書物や映像作品と一緒に、貴重な書類が人知れず貯蔵されている。
そんな図書館で1人の少女が1冊の本をぺらぺらとめくりながら、本を読んでいた。そんな彼女の横には『ギターの解説書』、『写真の撮り方』、『モテるメイクの秘訣』など様々な本が平積みされていた。
キラキラと流れるように伸びる、光る金色の髪。藍色の瞳の上にかけられた、琥珀色の綺麗な眼鏡。薄い水色のワンピースの上に黒いジャージを着た、中肉中背の背丈の彼女は、本をぺらぺらとめくりながら読んでいる。
それは日差しの効果もあって、文学少女のような印象を与えるような絵であった。
けれども1つだけ変な事があるとすれば、その文学少女が読んでいる本だろう。普通の小説ならば、普通に文学少女が読んでいるただの小説だろう。しかし、その本が厚さが凄い分厚い、『全ての貴重品の記憶』と書かれた辞典のような書物だった場合、どうだろう?
「たった、7024ページの小説……ですか。簡単な話で良かったです」
ぺらぺらと、まるで些細な書物のように、凄く簡単そうに本をめくって、読む彼女。そして読み終えた彼女はその本棚に返す。そして、呪文のような物を唱え始める彼女。
「琥珀の水晶、緋色の欠片……」
それは先程まで、彼女が読んでいた『全ての貴重品の記憶』に書かれていた宝物の名前であった。ゆっくりと、しかし着実な様子で彼女はその本に、ぺらぺらと読んでいただけでじっくりとは読んでいない本の内容を1つ1つ羅列していく。
「……fコード、それからギターの音感も記憶、っと」
その前にぺらぺらと読んでいた『ギターの解説書』、『写真の撮り方』、『モテるメイクの秘訣』などの本の内容も全部彼女は記憶していた。そう、彼女にとっては本など、ただの情報を引き出すための部品に過ぎない。肝心の部品を集めるサーバーさえ優秀ならば、何度も部品を見返さなくても良いのだ。
「……さて、と。これでひとまずは、この図書館の内容は全て頭に入りましたね」
このうろな図書館はさほど広いと言う訳では無いが、それでも確かな蔵書数と映像作品などがあり、全ての内容を記憶するなんて普通の人間だと何日も、いや何年、何十年とかかる話である。
そう、普通の人間ならば。
「―――――――さて、これくらいの情報を記録して置けば、十分でしょう。もしもの時のためにと、このうろなの山に情報源として図書館を立てるとの進言は無事に果たされたようですね。そして無事に、それは果たされたみたいですね」
そう言いながら、彼女は『全ての貴重品の記憶』、『ギターの解説書』、『写真の撮り方』、『モテるメイクの秘訣』などの全ての本を元々あった場所へと片付けて行く。
「――――――――さぁ、行きましょうかね」
彼女はそう言いつつ、とことこと歩き始めて、図書館の扉から外へ出る。そして、図書館の扉を閉じて外へと出て行った。
「―――――――さよなら、私の図書館」