4月18日 犬と猿
4月18日、天候雨。
「万里、お前が居るとはな……。交渉力は俺の物だ!」
「風華、お前が居るとは面倒だ……」
うろな高校駄弁り部の部室にて、朝比奈風華と波里万里の2人は睨み合っていた。
どうも不良の風華さんと、いかにも優等生の万里さんの相性は悪いみたいである。しかも、並み大抵の中の悪さではないらしく、示し合わせた訳でもないのにも関わらず、朝比奈風華と波里万里が駄弁り部に来たのは一日置きだったくらいである。あれは……示し合わせたわけでもないし、本当の本当に仲が悪いみたいである。
とは言っても、ここまで仲が悪いとは思っても見なかったけれども。
駄弁り部の仮入部期間が終わって、こうして本入部の日が来たんだが、その初日がこれである。
「本当にお前は……嫌な奴だ。優等生ぶっているのも気に喰わないしな」
「まぁ、お前と一緒って言うのも気に喰わないですがね。不良なんかと一緒だと、私の優等生指数が下がります」
どれだけ気に食わないのだろうか……。まぁ、こちらに被害が及ばないのならばどうって事はない。
日向さんは副部長としてどうにか争いを止めようと思っているみたいだけれども、怯えていて話にならない。水鏡は相変わらずボーっとしているだけだし、孔雀さんはこちらをじっと見てさっさとやれみたいな感じになっている。
「はぁ……」
やっぱりここは、部長であるこの僕、天塚柊人がなんとかしないといけないだろう。
倫理的な問題とか以前に、部内の争い禁止なんて言っても、通常時の波里万里さんならば話を聞いてくれるだろうが、今の状態では話が出来そうにない。
「じゃあ、ちょっとやってみるか」
僕はそう思って、電話をかける。
「あぁ、もしもし。突然で悪いけど……」
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「聞いてくれてありがとうねー! 新曲、『双子はいつも笑う』もよろしくねー! ボク達、双子じゃなくて兄妹だけどねー!」
「先日、とある記者さんに双子と間違われましたが」
「そんなの関係ないよー、ギアちゃん♪ 笑い話で終わらせるのが、真のミュージシャンであり、コメディアンだよ♪」
とまぁ、こんな感じに、僕達の目の前では歌を歌い終えた瀬島蒼龍と大神義愛の2人がそう言っていた。そしてその2人の目の前で呆然としている風華と万里。
「な、なにを……」
「したかと言われれば、まぁ、心情操作」
戦争の空しさ。
争いの不憫さ。
そして、幸せとは何か。
そう言った海外の音楽を蒼龍と義愛の2人にお願いして、演奏してもらった。勿論、何を言っているのか僕には分からない。英語だって、完全に出来ている人がこんな高校に居る訳ないし、英語以外にもポルトガル語やタイ語と言った物まで用意しているので彼女達には分からないのかも知れない。
けれども、蒼龍と義愛に演奏してもらったのは戦争の悲惨さを知らしめるような音楽作品を選別して演奏して貰った。音楽と言う物は、言葉を知らなくても人の心を動かす物である。
「ううっ……」
「凄い、良い作品……」
2人も音楽に感動していただいたようで、満足である。
さて、音楽による心情操作も終わったし、これからはお話の時間だ。
その日には、彼女達はもう順々な一年生らしい一年生になってくれた。いやー、良い一日だった。