4月11日 2014年度の駄弁り部(予定)
4月11日、天候晴れ。
部員集めとは、非効率な物であると僕、天塚柊人は考えている。部活動において宣伝でその部活動に入ってくれる生徒と言うのは、ごく少数の人間であると思う。大抵の人間と言うのは、部活動に入るのに初めから決まっているのだから。野球部に入る人間の多くは、だいたい最初から野球部に入る事を決まっている。文芸部に入る人間の多くは、だいたい最初から文芸部に入ろうとするような人間である。まぁ、あまりにも部活動の宣伝が酷くて入るのを遠慮する人間が居るが、宣伝の力で多くの人間が入ってきた部活と言うのは後にも先にも聞いた事が無い。いや、あるけれどもあまり多くは聞いた事が無いだろう。
けれども、大切なのは1つだけある。我が学園生活環境部のような弱小部に見学に来る人達と言うのは、大抵その部に入部してくれると。
「いや、実際入部してくれるんだけれども。もう入部届を貰っているし」
去年までは僕と日向さんだけだったので、暫定的に僕が部長、日向さんが副部長と言う事にしている我が学園生活環境部、通称駄弁り部。そこに見学に来た4人の新入生。
1人目、孔雀小明。
孔雀明王の生まれ変わりであり、今年の新入生として入って来ていた。知り合いなのだが、彼女にはどうやら孔雀明王の力、悩みを無理矢理解決する救済の力を持っており、今後共にどう成長を遂げるのか心配な面がある女子生徒だ。綺麗と可愛いの中間あたりの、クラスの中でもアイドル的な立ち位置に立てるだけの美貌を持つ彼女なのだから、他の部活に入ってくれると嬉しいのだけれども……。他の部活で客寄せパンダをやって欲しかったのだが。
2人目、水鏡栗花落。
今年の2月ごろ、孔雀小明の手によって念願の悪霊に乗っ取られると言う体質から解放された彼女。しかし、未だに自我に乏しく、また善良な霊ならば乗っ取れるので大変なのだ。
「……いや、本当に大変な事をちゃんと書いておこう」
そう、水鏡栗花落が大変なのは霊に乗っ取られる事では無く、彼女のスペックである。考えてもみてくれ。多くの霊に乗り移られて、自我が無いと言うだけで体力が持つか? 知識が付かないか?
要するに水鏡栗花落と言うのは多くの霊に乗っ取られても大丈夫な体力と、多くの霊に乗っ取られた際に蓄積されてきた豊富な知識がある。要するに完璧超人と言っても良い。そんな水鏡栗花落をスカウトしようと多くの部活が狙って来たが、彼女の霊体質があるから気付かれない用にうちに入れた訳だ。
なのに、本人と来たら
『それがあなたの望む水鏡栗花落ですか?』
と相変わらずの言葉を返された。全く……いつも通り過ぎる。
さて、後の2人だがこの人物達は僕とあまり交流が無い生徒だった。まぁ新入生らしさを感じる面ではその方が良いのだけれども。
まず、その1人目。つまり、新入部員3人目。
名前は朝比奈風華。
素行の悪さが目立つ、所謂不良みたいな女子生徒だった。派手な金色の腰までだらしなく伸ばした髪、適度に着崩された制服。派手なネイルアートやメイクもきつい奴だった。喋る言葉にしても、ちょっとヤンキーっぽいって言うか、素行の悪いような喋り方だったし。
「木下って、先公を知ってやがるか? あいつ、苦手でな。まぁ、先生は全般的に苦手だがな。あいつは特になよっている所とか、ちょっと面倒でな。あぁ言う奴は、喧嘩なんかの暴力だとねじ伏せる事が出来なくてよー。だけどよ、言葉でねじ伏せちまえば関係無いよな。
駄弁り部の部長さんよ、俺にそう言った言葉でねじ伏せる方法を教えてくれよな」
との事だった。要するに、暴力が通じない相手に対して言葉の攻撃手段が欲しいのだそうだ。不純な動機だとは思うけれども、まぁ来る物を拒む事は出来ないし、良いんだけど……。とりあえず要注意人物である。
もう1人は波里万里。
黒髪を女性のように綺麗に長く伸ばした、眼鏡をかけた男性。いかにも几帳面な感じの優等生。何でも、人の役に立つ事が趣味なんだと。
「変わった奴だ……」
僕はそう思いながら、部活申請届に2人の名前を新たに書きこんだ。
YLさんより、名前だけですが木下先生をお借りしました。