9月24日 雨のち闇
9月24日、天候雨。
「なんなんだ、これは……」
と、僕は雨のために傘を差して歩きながら曇天の空を見ていた。空を見ると雨を降らせる黒い曇り空が浮かんでいた。いや、それ自体は本当に普通通りの事であった。けれどもそれが普通でないのを証明するかのように、いつもの曇り空ではなくなってしまっていた。
僕の頭上では黒い雲が渦を巻きながら、普通ではない雲である事を証明するかのように文字が刻まれていた。そこには《天岩戸》と言う文字が書かれてしまっていた。
「なんだろうな、あれは……」
と、僕は雲に書かれている文字を読みながら「ハァー……」と溜め息を吐いていた。
――――《天岩戸》。神話にて登場する太陽の神である天照大神がひきこもるような場所であるのだけれども、その文字がどうして雲なんかに書かれているのかが謎である。しかもこんなにはっきりと。
「なんか怪しいな……何かあるのか?」
今日は雨模様だからそこまで変化に差はないけれども、それでもここ最近は昼間だろうと夜と同じくらい暗くなってしまっている。とは言ってもそれは感覚的な物であり、うろな町に居る者全員が感じている訳ではないらしいが。
けれどもうろな高校駄弁り部の面々は全員それを感じている。それも、水鏡栗花落と孔雀小明の2人が特にそれを強く感じている。
(なんか黒い影が見えますと、あなたの知る水鏡栗花落は申しております)
(あれは……人の恨みや妬み……)
栗花落と小明の2人はそう言って、黒い雲を見ていた。
本当だったらこう言った異常事態を対処する為に陰陽師といった者が居ると思われるのだが、うちの町の陰陽師は相当にぶい。もしくは気付いていないご様子なのである。
だからこの雲についての事はこちらで対処するか。それともあちらがどう出るかの待ちである。
「まぁ、どうも孔雀小明が何か考えているみたいだし、今回はその反応待ちと言う事で良いだろう」
腐っても神様の生まれ変わりなのだから、どうにか出来るのだろう。
僕はそう思って目の前の光景を考えないようにした。
「あぁあぁあぁあぁ……」
目の前で変な奇声をあげながら歩んでいる黒い影の事を。




