9月15日 母は心配性
9月15日、天候晴れ。
「ワン・ツー・サン! はい!」
「良いわ! お母さん、良い調子で嬉しいわ!」
うろな町のとあるダンススタジオ。飯田夏音と花織優華の2人はそれぞれ踊りをマスターするため必死に練習していた。飯田夏音の頑張りによって知名度も上がり、頑張りを認めて貰えて来た2人。
この前も、『株式会社・兎山』のアイドル担当の社員である忘路光世からお褒めの言葉を貰えたのだ。
「あの眼鏡めー! 何が『色気が出て来て、売りやすくなった』よ! 完全に優華さんの要素じゃないですか!」
「まぁまぁ。私達『お母さんと一緒』が売れているのには間違いないんだから良いじゃないの。怒るのは肌にも悪いし、お母さん心配だわ」
「いやそんなアイドルグループの名前じゃないですから!」
と、夏音が突っ込んで、優華が「冗談よ」と大人びた笑みを返していた。
「けれども私、心配だわ。こんな薄暗くちゃあ気分も悪くなっちゃうし」
「そうですか? 晴れ渡るような青空だと思いますけれども」
と、窓の外からさんさんと照りつける太陽を見てそう言う夏音。「そう言う意味じゃないのよ」とそう言う優華。
「どこか感覚的な感じでね。何か良くない物が感じられるのよ。お母さん、昔からそう言った霊的な話やおまじないは好きでね」
なんかおまじないが好きとか、さらにお母さんっぽいなあとそう思う夏音。そして頭の中で「ちちんぷいぷい、痛いの痛いの飛んで行け~」とそう言いながら自分の痛い部分を撫でてくれる優華の姿を頭の中で考えていた。
「それでね。昔、ちょっとした霊視を扱う一族に"視"て貰った事があるんですよ」
「れいし?」
何それと、言う感じで首を傾げる夏音。そんな夏音を見て、優華は本当に可愛いなぁと言う顔をしていた。
「要するに、人には見えないもの、幽霊や聴力などを"視"る人達が居るんですよ。芦屋梨桜さんが幽霊を退治する者だとすれば、その一族、水方さんは幽霊を見る専門家と言う感じでしょうか」
「へぇ、そんなのもあるんだ……」
「その人によると、私はどうもそう言った霊的な、良く分からない物に惹かれやすい傾向にあるんだそうです。そして最近、うろな町全体で何かよくない物を感じるんですよ」
よくないもの、と言う言葉にちょっぴり不安を覚える夏音。それを見て、すぐさま優華はなんでも無いような顔で話を始める。
「だ、大丈夫よ。私達のアイドル活動に悪い影が落ちている訳ではないのだからね。ただ、ほんのちょっぴり悪い気配を感じるだけですよ」
「なら良いんだけどね。あんまり悪いこと言わないでよ。マネージャーが心配するんだから」
「ごめん! ごめん! そうね、子供を心配するような事を言うのは親として失格よね。本当にごめんなさい、夏音ちゃん」
「そうやってまた子ども扱いして!」
「も~う!」とぷりぷりと怒る夏音をなだめつつ、本当に何かを感じ取る優華であった。
寺町朱穂さんより、飯田夏音さん達アクセル、また芦屋梨桜さんを名前だけお借りしました。