6月26日 温泉PR
6月26日、天候全国的に晴れ。暑い。
――――――いつものように暑い日が続いている6月26日の夕暮れ時。
うろな高校学園生活環境部では、皆で宣伝用のポスターを作っていた。そう、天塚旅館のPR活動である。これは温泉津春日先生の方から貰って来たものである。どうも最近は、客足が悪いからこそ宣伝用のポスターを作って欲しいんだそうである。だが、軽い気持ちで引き受けたポスター作りと言うのがかなり難しいのである。
うろな町の鉄道には、温泉快速と言うものがある。うろな線の湯海駅~うろな北線のうろな温泉駅(温泉地)を結ぶ『温泉快速』の運行しているこの路線。うろな町で温泉旅館を求めている方は、温泉快速は全ての車両に個室車両を連結、一時間あたり一本の運行のこの路線を選ぶだろう。
しかし、件の天塚旅館は、うろな本線より、うろな駅から4駅乗り継いでうろな高原。そのうろな高原より、さらにバスで揺られる事15分。さらにそこから山道を歩く事5分となかなか遠いのである。うろなの『温泉快速』にも当てはまらないし、なかなか難しい。
既に作られているポスターはあるが、今回はそれとは別のポスターを考えて欲しいのだそうだ。なかなかに難しいな、これは。分かってはいたが。
まぁ、今は案だけ考えて欲しいとの事だそうで、僕達は作っている。
「で、出来ました!」
と、蓮華がそう言って僕にポスターを向けて来る。どれどれと、僕は蓮華が考えたポスターを見る。
……いや、文字小さいだろう。確かに星は綺麗だけれども、何か違う気がする。
「と言う訳で却下」
「そう、ですか。残念です」
本当にがっかりと言う形で頭を下げる蓮華。ちなみに今日は皆に手伝ってもらうために1年生達だけでなく、霧島恵美、温泉津=ヒューズベルト=来夏に『DQN's』の2人も企画に参加するように呼んでいる。最も『DQN's』は夏祭りに忙しくて来なかったみたいだけれども。ちなみに水鏡栗花落は文字通り呼んでも居ないから欠席だ。あいつは任せれば良いポスターは出来る。何せ、前のポスターを作ったのはあいつだからだ。なので、今回も水鏡栗花落は外してあるのだ。
「出来ましたよ」
「えぇ、自信作でしょう」
「皆の望む形だと思うわよね」
と、1年生連中、孔雀小明、朝比奈風華、波里万里の3人がそう言う。おぉ、3人で作っていたのかどんなのか楽しみだと思いつつ、僕は受け取る。
おぉ、なんかそれっぽい。いかにもポスターな感じがする。まぁ、何か所か手直しは必要だろうが、十分良いだろう。
「良くやったな、3人とも。少し手直しすれば大丈夫そうだ」
僕がそう言うと、3人はお互いの顔を見つめ合い、笑いあう。
「先輩の助けになれて嬉しいです」
「それもそのはずですけれどもね」
「3人の力は凄いのですよ」
朝比奈風華と波里万里、最初は険悪だったのにポスターを一緒に作るくらい仲良くなって、部長として僕は嬉しい限りだよ。1年生の結束は固いようだ。
「Hey,シュート! MeもCompleteしましたよ」
「そうか。じゃあ、見せて貰おうかな」
来夏も出来たらしく、ちょっと見せて貰う。どれどれ……。
なんだろう。こいつのは。
一応、この出来に関してはスルーしておこう。なんか反応に困る。
「ま、まぁ、良いんじゃないか。良く出来ていて」
「Oh! そうSayされるとHappyです!」
まぁ、多分この案は使われないだろう。何せ、どう考えてみてもあの旅館と違う旅館だし。なんか人、映ってるし。ダメだろう。
ちなみにその後、「やっぱり折角、魔女っぽい格好をした女将が居るんだからこうでしょう!」と出された恵美の案がこれだ。
なんでそんな危ういイラストを採用するんだ、お前は。