6月9日 真相究明
6月9日、天候雨。
「どちらも本物で、どちらも偽物。それが神代と神代ひとみの姿なんでしょう」
と、僕は眼の前に居る神代ひとみに対してそう言うのであった。そう言われて、神代ひとみは何も言わずにじっとこっちを見ていた。
「…………」
「神代さんに昔、話を聞いていたんだけれども、生前は普通の巫女だったらしい。これからは僕の想像なんだから、間違ってたら指摘してください」
「…………」
そう言って、僕はその内容を神代ひとみに話す。
生前の神代、これを神代(現代)とする。その神代(現代)が死んだ際に、うろな町を守ろうと言う意識のみが分離した。そしてそれが幽霊の神代だ。それとは別の死者となった神代(現代)はそのまま生まれ変わったんだろう。その生まれ変わったのが、神代ひとみなのだろう。
つまり、どちらも神代であり、どちらも神代ではないのだろう。
「それが神代と、神代ひとみが同時に居る理由だ」
「……それが本当だとして、こちらはどう言えば良いの?」
と、神代ひとみは戸惑うような感じでこちらを見つめていた。
「別に合っているならば、合っているで良いし、合っていないのならば間違いを指摘して欲しい。
これでも僕なりに調べたから、それが正しいかと言う事を知っておきたいんだ。僕は答えが合っているのか確かめたいだけなんだ」
「それならば……その答えは……正しいと答えておきましょう」
やっぱりそうですか。まぁ、なんとなくそんな感じはしたけれども……。
「確かにその推理は正しいです。私達はそうやって分離しました。けれども、それをちゃんとあなたに分かって貰えて私としては嬉しい限りですよ。勿論、生霊の神代さんも同じ気持ちでしょう」
「それは良かった……」
「あなたも当てて貰えて嬉しいですよ」
「これでようやくあなたに託せそうだ」とひとみはそう笑いながら言っていた。
「あなたならば、私と神代(幽霊)を同時に存在させればその謎の究明に乗り出して、そして見事突き止めてくれると信じてました。なんだかんだで、あなたは多くの事件を解決し、そしてみんなを幸せにしてきたんですから」
「…………」
「今度は天塚さん、あなたがだんまりですか?」
「それも楽しそうですね」と彼女は笑いながら、そう言った。
「天塚さん。これから先、うろな町にはもっと不可解な謎が現れます。それは多分、どんな謎よりも明確な答えが存在すると共に、どんな謎よりもそれが隠されている」
「心理的に変ですね。明確な答えが存在しているのに、答えが隠されているだなんて」
「例えですから。
その謎を解き明かすのは、他でも無い――――――」
「止めてください」
と、僕はひとみさんの言葉を遮る。
「その先は言ってはいけない」
そう。
誰しも全てを叶えられるわけでは、ないのだから。