2話
よろしくお願い申し上げます。
── そんな事は無いわ。貴方はしっかりと自分の役目を果たしているわよ。
はっと顔を上げると、そこには黒い髪をツインテールにし、ヒラヒラと溢れんばかりの黒を基調としたレースのドレスに身を包んだ幼女がいた。しかし、幼女の姿をしていながら、何処か神気を纏い神々しい雰囲気を漂わせている。
(…幼女…?)
そう考えたらハリセンが飛んできた。
「いてっ‼︎」
「失敬な!幼女などと!…まぁ確かに好きでこの姿をしているけど、貴方に幼女と思われる筋合いはないわ。」
彼女(※)は澄まし顔で言い放った。
「失礼いたしました。ファナリス様でしょうか?」
「流石竜王。我の事が分かるようね。」
アウルディスは姿勢を正し、膝をついた。
彼の言葉に機嫌を直し嬉しそうにした。
「やはり、ファナリス様であられましたか。しかし、一体どういうご用件で?今の今迄お声だけでお姿等お見せにならなかったのに。」
彼女の嬉しそうな姿とは、裏腹にアウルディスはキラキラした笑顔の背後に黒いモノを漂わせた。
「アウルディス。そんな怖い顔をしないでよ。」
「おや。私の名を存じて頂けていたのですか。」
「ゔっ…そんな嫌味を言わないでよ。」
「申し訳ございません。貴女のお考えが少々…いぇ…かなり分からなくなっていましたので…つい。」
「事前に神託を告げなかったのは悪かったわ。けれど私達にも、色々あるのは察して頂戴。姿をとったのはまぁこの方が貴方も聞きやすいだろうと思ったからよ。」
「?聞きやすいとはどういう事です?」
ファナリスの言葉に、アウルディスの気配は元に戻り、膝をついたまま彼女の言葉…神託を聴いていた。
「まず、最近の妖魔の大量発生に関しては何処まで感知してる?」
「負のエネルギーが例年より急激に増えたことによると思います。そしてそのエネルギーは、我が領地側の大海に現れた島が原因かと…。」
「そうね。正解。」
「あの島は、一体なんなのですか。」
「我らにも取り除けないモノがある場所…とでも言っておこうかしら。」
「あなた方でも取り除けないなら、我らにも不可能では、ないですか!」
神々にも取り除けないモノと聞いて、絶望に打ちひしがれるアウルディスを横目に話を続けるファナリス。
「そうでもないわ。今回私が来たのはコレを言いたかったの。太陽が光の輪となる日に精霊王が目覚める。彼に詳細を話しなさい。さすれば世界の平和は近付く。」
ファナリスはそう言って姿を消した。
「精霊王…。はっこの事を他国にも…。」
『大丈夫よ。私の部下が伝えたわ。言い忘れたけど、精霊王は封印の地に居るわよ。じゃあと頼むわね。』
消えたと思ったファナリスが、アウルディスの言葉を返し、今度こそあるべき場所へと帰っていった。残されたアウルディスはというと…。
「…精霊王とやらに丸投げですか…。はぁ…。」
アウルディスが呟いた後、ドアを叩く音が聞こえる。
コンコン…。『フィリクスです。』
「入れ。」
「失礼致します。…あの方は本当に、どんな時でも自由奔放な神ですからね。」
「聞いていたのか…。」
「流石に、高度な霊力が陛下のお部屋に現れたら中を伺うなという方が無理な話です。」
「だろうな。で…各国とは?」
「先程、飛竜を飛ばしました。いつもの会合場所にて。」
「分かった。すぐに出る。白虎を用意せよ。」
かっ…神様が…幼女…。
バコっ!
いてっ!
『馬鹿者!だれが幼女よ。』
すっすみません!
『うん。分かればいいのよ。』
…どこから見ても幼女なんだけどなぁ…。
『ん?なんか言った?』
…いえ!なんでもありません!
以上※が彼女になっている訳でした。
次回、王達が集合。