1話
よろしくお願い申し上げます。
─── とある場所…。
『やはり…解けてきましたか…。』
『仕方ないじゃない。アレは貴方がどうこうできる存在じゃない。貴方にはアレに止めを刺せなかった。そして、私達も出来るはずもない。』
『しかし、我が不甲斐ないばかりに…。』
『これはあの子達への試練としとこうじゃない。』
『そんな…身も蓋もないだろ…。』
『なら、貴方は出来るの?私達は××。その力で手を下していいのはこの場にてだけ。』
『そうですわね。私達は彼の者達を信じるだけですわね。』
『『『『彼の者達の幸福があらん事を…』』』』
─── グラヴァル帝国…。
「陛下。ここ最近のカザトの町の状況です。」
資料を見ながら、報告をする水色の髪をした妖精族の青年はフィリクス・瑞穂・ロットー。このグラヴァルの宰相を務める。
かたや執務室の机に座りフィリクスの話を黙して聞くは、真紅の髪をしたクラヴァル帝国の皇帝、アウルディス・焔・グラヴァルその人だ。
「これは、本当の事か。」
「はい。ここ最近は、妖魔の活動が活性化し、カザト以外からも被害届が多く届いております。」
アウルディスが読んでいた資料には、カザトの住人250名の内、半数が妖魔の被害に遭っていた。
【妖魔】とはこの世界ファナリスに舞う負のエネルギーを体内にため過ぎた魔物が更に進化したモノで、魔物に体制のあるこの世界の住人も妖魔には、頭を悩ませていた。
本来魔物の凶悪化は40年に一度太陽と月が力を低下させる時期に増えるだけで、ほかは一年に一体見つかるか否かである。
だが、今回は様子がおかしい。数年前にグラヴァル帝国側の大海の沖に、新な島が突如出現しその島が現れた時期から、妖魔の数が格段に増えている。グラヴァル帝国だけでなく他国にも被害が出ており、各国合わせて一年に見つかるか否かの妖魔がこの一年ですでに5体見つかっている。
そこでグラヴァル帝国を始め、各国の王達は連絡を取り合い対策をとっているが、中々良い策が浮かばない。遥か昔敵国関係にあった魔国でさえも、彼の妖魔には手間取っている。各国にある冒険者ギルドにも要請し、なんとか被害を最小限にとどめるのが精一杯だ。
ファナリスにある国は、全部で20カ国。大小さまざまな国から成り立ち、中でもグラヴァル帝国を始め、セントクラリス皇国、アルマリア王国、そして魔国は4大国と称されている。そんな国ですら妖魔は狂気の存在なのだ。
「一体今年はどうなっているんだ…。今となっては最強の戦士といわれた我が一族も我も不甲斐ないばかりだな…。はぁ…。」
「そんな事はないわよ。貴方はしっかりと自分の役目を果たしているわ。」
フィリクスからの報告も一通り済ませ、ため息をついて頭を垂れるアウルディスに、幼い声がかけられる。
次回、神降臨。
ありがとうございました。