No.92:敵を騙すにはまず味方から
副島(ピッチャーのモーションの癖はもう十分インプットしてある。あとは行くだけだが…。)
松坂(ミツルのやつ…。走る気だろ…。バレバレだって…。まあ…俺はなにもすることはできない。唯一できることは、打ってミツルの進塁を助けること…。)
渡辺(とりあえず初球はずすぞ。)
小木曽(了解。)
ビュッ!!
ズバーンッ!!!!
『さあ猪子石バッテリー、1球はずしてボール!!!!ランナーを警戒してウエストしてきました!!!!』
渡辺(走らなかったか。まあアイツが走るのは決定的。あとはどこで走るかだ。)
小木曽(そんなところでこそこそしてんなよ!!)
ビュッ!!
松坂『牽制だ!!』
『セーフ!!間一髪!!』
小木曽(もう一丁!!)
ビュッ!!
『セーフ!!』
松坂(いい加減にわかれよ!!ミツル…。)
ビュッ!!
ズバーンッ!!
『ボール!!ツー!!』
鬼頭(もしかしてミツルのやつ…。いや、ミツルがそんな器用なことできるわけ…。)
『さあもう1球牽制を入れた!!これもギリギリセーフ!!一塁ランナーの副島が危なっかしいリードをとります!!』
小木曽(走ってみろよ。そしてカズキの餌食になれ!!!!)
ビュウウウッッッッ!!!!!!
ズバァーーッッッーッン!!
『ボール!!』
『さあカウントを悪くしてしまった!!これでノースリー!!!!!!』
鬼頭『やっぱり、そういうことか!!!』
渡辺(まさか…あの一塁ランナー、ハナからこれを狙っての…え、ん…ぎ?…なのか…?)
小木曽(いつの間にノースリー…。ランナーに気をとられてストライクの意識が薄れちまってた…。)
大場『確かに…副島キャプテンはこれを狙って…。』
副島(やっとみんな気づき始めたか。ノースリーだもんな。そりゃ気づくか…。俺のこのヘタクソランナーが演技だってこと。まあスクイズ失敗した俺がドヤ顔出来ることでもないけど。まあ敵を騙すにはまず味方からって言うだろ。)
小木曽(くそっ…。騙された…。アイツ…わざとヘタクソなランナー装って…?俺をバッターに集中させないために。)
小木曽(ノースリーだからって、この俺がそう簡単にフォアボールなんて出すと…)
『『『走った!!!!!!!!!!!』』』
『一塁ランナー副島がスタートを切った!!!!!!!!!!!』
小木曽(ここでかよ!!!!!!!でも空振りをとれば!!!!!!)
ビュウウウッッッッ!!!!!!
ズバーーーーーッッッッッーッン!!!!!!
『ボール!!!!フォアボール!!!!!!』
『最後は高めに大きく浮いてしまってフォアボール!!!!!!!7番の松坂に対しストレートのフォアボールを出してしまった!!!!!!!!!』
小木曽『はぁはぁはぁ…はぁ…』
渡辺(ここにきて浮き始めたか…。まあしょうがねえか…。延長14回だもんな…。だがツーアウト一二塁。二塁ランナーの副島はあんな器用なことができることから…走塁は下手じゃないはず。ヒット一本で還られる可能性も十分だ。)
『8番、レフト、藤武くん。』
松坂(まさかミツルがこの状況でこんなに融通の利いたプレーをするなんてな。ビックリだぜ。てっきりスクイズ失敗のミスを引きずって切れちまったのかと思ったぜ。やっぱお前はスゲーよ。)
藤武(ツーアウト一二塁。俺が繋げばもっとチームに勢いがつく。)
渡辺(8番打者にはカウント有利の状態で常に主導権を握っていたい。ここは無難に外角直球でカウントを取りに行くぞ。)
藤武『愛知屈指の進学校。愛知の公立高校ナンバーワンの偏差値を誇る邦南で学年順位3位の俺。相手の心理くらい読むのは容易いことだ。』
氷室『正直フジにはバットでは期待できないな…。』
慶野『まあアイツ運動神経抜群だし。転がせば全然わかんねえよ。俊足だし。』
副島(ここで一本出せよ。フジ…。)
小木曽『はぁ…はぁ…はぁ…』
ビュッ!!!!!!
藤武『バテバテなところ悪いね!!!!』
コン!
『ここで意表をつくセーフティバントを仕掛けてきた!!!!!!!』
渡辺『ピッチャー!!!!!!』
小木曽『わかってる!!!!』
渡辺(疲労からかヤスのダッシュが遅い!!)
パシッ!
渡辺『ファーストを刺せ!!!!!』
ダダダダダダダダダダ…
『バッター藤武足が速い!!!!!!!!!!!!』
小木曽『嘘だろ!?』
渡辺『こんな俊足のやつが控えてたんか!!』
『ピッチャー小木曽は一塁へ送球!!!!しかし判定は余裕のセーフ!!!!!!!!』
藤武『っしゃあ!!!!!』
島谷涼『ナイス!!!!!!!!』
『これでツーアウトフルベース!!!!!!!8番の今日途中出場している藤武のセーフティバントが内野安打となり二死満塁!!!!!!!!!!!!!』
渡辺『そんなに際どいバントでもなかったが…。』
小木曽『足速いな…。』
氷室『フジは元バスケ部だからな…。脚力はチーム1って言われても不満無しだよな。』
『9番、ショート、島谷倫暁くん』
小木曽『大丈夫だ…。9番バッターだ…。』