No.91:痛恨のスクイズ失敗
副島(5回表のタイムリー、9回表のタイムリー、両方とも小木曽のウイニングショットの高速スライダーを捉えての結果。もう俺に高速スライダーは使ってこないだろうな。)
渡辺(コイツは変化球を拾うのが巧い。長打力こそあまりないが邦南の中じゃミート力に長けた存在だ。ここはストレートで…)
渡辺がストレートのサインを出す。
小木曽(いや、違う。こいつが今スライダーに絞ってる確率は間違いなく「0%」。だからここはあえて連続で打たれている…)
(高速スライダー!)
渡辺(おいおい。強気だな。)
小木曽(あ?普通だろ。てか三振がほしい場面だし、こーゆー場面で三振をとるためには初球を確実に取ることが重要だ。)
渡辺(わかったよ。)
渡辺が高速スライダーのサインを出す。
小木曽は頷く。
副島(一回首を振った?とりあえず初球だ。ストレートに絞る。)
ビュウッ!!
カクッ!!
ズバーンッ!
『ストライーク!!!!!』
『さあ初球はスライダーでワンストライク!!!』
小宮『やっぱこの場面で確実に初球ストライクが取れるってのは流石だね。』
副島(ちっ。完全に予想が外れた。まさか初球からスライダーを使ってくるとはな。)
小宮『ここらで仕掛けますか?』
片野『ああ。次の1球が勝負だ。』
渡辺(次は直球で一気に追い込むぞ。カウント有利にもっていきたい。)
小木曽(おっけ。)
副島(ったく。ここでかよ。まあバント嫌いじゃないし。いいっか。ただ…)
(この場面がこの試合の行方を大きく左右する…。)
西口(副島せんぱい…。託しますよ…。)
副島(緊張なんかしてねえぞ…。俺はこの試合に絶対勝ってやる…!)
ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ…
副島(決める…決める…絶対に決める…)
『小木曽がセットポジションから…』
『投げる─────────!!』
西口『ゴォーッ!!!!!』
芝田『走った!!!!!!!!!!!!スクイズだ!!!!!!!!!!!』
小木曽『バントができるもんなら…』
『『やってみやがれぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!』』
ビュウウウッッッッ!!!!!!!!!
『スクイズだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
副島『決める!!!!!!!』
コン…。……!!
渡辺(ピッチャー!!!!!本塁!!!!!!!!!!!)
『ここで邦南高校勝負に来た!!!!!!スクイズ!!!!!!!!!しかしこれはピッチャー小木曽の正面の打球になってしまった!!!!!!!』
渡辺『グラブトス!!!!!!!』
小木曽『あいよぉ!!!!!!!!』
パスッピュッ!!
パシッ!!
ガザッーッ!!!!!!!!!!
『本塁クロスプレーは…!?!?』
『アウトォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
渡辺『っしゃあ!!!!!!ナイスフィールディング!!!!!!!』
小木曽『ツーアウトな!!!!!!』
『邦南高校決死のスクイズもホームクロスプレーはアウト!!!!!猪子石高校小木曽の素晴らしいフィールディングで勝ち越せず!!!!!!!!ここにきて非常に痛いスクイズ失敗!!!!!!!これは流れが猪子石に傾いたか!?!?』
副島(クソ!!!!!!!!!!!!!!!!!絶対にミスしちゃいけない場面だったのに!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
『さあ場面は変わってこれでツーアウト一塁!!!!!一死三塁から一気に二死一塁になってしまった!!!!!!』
『7番、サード、松坂くん。』
松坂(ミツルの馬鹿野郎。やっぱアイツはヒーローには向いてないな。この俺が少なくとも繋がないと…。俺が凡退したら次の延長15回は8番からの打順になっちまう…。それじゃあ最終回にもあまり期待できない。)
副島(くそ…絶対に俺がホームを踏んでやる…絶対に…。)
渡辺(一塁ランナーのリードが少しデカイ。一応一個牽制いれとけ。)
小木曽(りょうかーい。)
ジー…
ビュウッ!!
副島(ぬ!)
パシッ!
『セーフ!!』
鬼頭『あぶねえ…。アイツ…スクイズ失敗を走塁で挽回しようとしてんのか…。別に悪いことじゃねえが…さらにここでランナーアウトになるようなことがあれば…このチームは負けるぞ…。』
ビュウッ!
副島(なに!?また牽制!?)
『セーフ!!』
小宮『また逆つかれてますね。ノーサインなのにこの場面で盗塁でもするつもりでしょうか?』
大場『ああ。たぶんな。今キャプテンは完全に自分の世界に入ってる…。それがまずい…。』
渡辺(どうやらアイツ一人で自滅してくれるようだな。)
小木曽『ランナーを刺すか。どうやら刺されたいようだし。』
副島『はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…』
小宮『狙われてる!間違いない!!』
西口『副島さん!無茶しないで!』
鬼頭『聞こえてねえよ。今のアイツには。残念だが。』
スクイズ失敗を引きずる副島。バレバレな盗塁準備に猪子石バッテリーがほくそ笑む!!