No.9:新球の進化した変化
(ザーッ!ザーッ!)
この回の途中から雨が降り始めている。
小宮『ツーアウト満塁…。』
明日翔『哲都!落ち着いて!いつもの哲都のピッチングをすれば大丈夫!!今1番いけないのは逃げのピッチングをすること!!攻めるのよ!!いける!!勝とうよ!!この試合!!』
記録員の明日翔がマウンドの小宮に向かって大声で叫んだ。
小宮(ありがとう。明日翔。気持ちがずっと軽くなったよ。)
西口『…。ちっ。』
小宮『彼女にこんなこと言われて燃えねぇ男は…』
小宮が投げる。
小宮『野球をやる資格はねぇ!!』
(ズバーン!!!!!!!)
『ストライーク!!』
健太『割とはえーな。やるじゃんか。』
第2球目…
健太『だが…』
(ブン!!!!!)
(ズバーンッッ!!!!!!)
小宮『どや!!』
健太のバットが空を切る。
健太(コイツ…。確かに速い…。まだ変化球も見せてきてねぇしな…。次は何でくる?このままストレートで押してくるか。いや、なにか決め球の変化球を持ってるのか?…とにかくこのままじゃ圧倒的に分が悪い…。必要なのはあと一点。ワンヒットでコールドゲームだ。ここはバットを短く持って…。……。いや…。短く持って打つなんて俺のプライドが許さねぇ…。)
小宮『あれ?あんなに振り遅れたのにバット短く持たないんだね。まったく。意地っ張りなやつだ。それじゃ簡単に料理させてもらうよ。』
明日翔『いっけぇー!!哲都!!』
西口『…。』
ビュッ!
健太『ストレート!!』
(カクッ!)
健太『クソッ!シュートかよ!!』
(コン!)
打球は完全に詰まってキャッチャーファールグラウンドへ。
しかし。
小宮『西口君!!上!!』
西口『…っ!!』
『ファール!』
西口は反応がかなり遅れ捕球することができなかった。
大場(なるほどな。大体わかってきた。小宮と西口の間の亀裂はあの女が原因か。)
翔真は哲都と拓磨の関係に既に気づいている。
健太(助かった。シュートを持ってんのか。)
南『あれれ?珍しく健太のやつ随分とテンパってんじゃない?』
小宮『この雨のお陰で手が少し濡れてボールが滑りにくくなってる…。』
西口がストレートのサインを出した。
小宮は首を振った。
西口(小宮が中学ん頃得意球だったこれか?)
西口はチェンジアップのサインを出したが小宮はまた首を振った。
西口(じゃあ…これか?)
カーブのサイン。小宮はこれも首を振った。
西口(まさかとは思うが…これか?)
小宮は頷いてワインドアップから投球モーションに入る。
西口(このボールは…アイツが中学の頃猛練習しても習得できなかったばかりか…これの投げ込みのしすぎで肘をぶっ壊した。そんなボールを…自信があるのか…?)
小宮『いつもならうまく曲がる確率は20%もないところだが…。この今の指先の感覚なら…きっといけるはず。』
下村(もうストレートは捨てる。シュート系のボールと緩いボールだけに狙いを絞って…)
小宮が注目の1球を投げる。
ビュッ!!!
健太『高い!?いや!もらった!カーブ!!』
(ギュギュギュッ!!)
健太『な、なんだこの変化は!!!!』
西口『…!!!!』
(バン!!)
眞野『あーあ。』
長岡『それはないぜ。』
『ストライク!バッターアウト!チェンジ!!』
氷室『すげぇ。ベンチから見てても並の曲がりじゃなかった。』
藤武『今のカーブスゴいですね!』
大場『いや。今のは恐らくドロップだ。ただし並のドロップじゃなかったがな。』
西口『今のは確かにドロップですが、ドロップではないんです。小宮のドロップは、三段ドロップなんです。中学の頃よく練習してたけど結局習得できなかった。』
小宮『まさかこんなにうまくいくとはいかなかったけど、今のボール、三段ドロップじゃないんだ。』
西口『…?』
小宮『三段ドロップを越えた変化を見せる…【【四段ドロップ】】これがこのボールの名前なんだ。』
舞『くぅーっ!今の場面健太に決めてほしかったなーっ!!』
健太『なんなんだ…?今の変化は。』
誠『ったく。早く帰りたいんだから打ってよ。もう。』
健太『…。』
長岡『帰宅が遅れちまったぜ。』
江澤『ホントホント。』
(ザーザーッ!!)
慶野『雨がさらに強くなってきた…。』