No.87:ぶっつけ本番直球絞り
小宮(初球はストレート…。場内球速表示だと151km/h。愛農大名林の長岡も速球派のピッチャーでMAX148km/hとか言ってたっけ…。たった3km/h差でもこんなに違うのか…。小木曽の直球の方がかなり厄介だな。次の球…何かな…。)
渡辺(これは今の相手は完全に頭にないだろ。これで追い込むぞ。)
小木曽(おっけー。今日初だな。)
『小木曽がセットポジションから投げる!!!!』
小宮(ん………。)
西口『カーブか!!』
ズバン!
『ストライク!ツー!!!』
小宮『ふうーっ…。…。』
小宮がゆっくりと息を吐く。
『さあ代打小宮を2球で簡単に追い込んだ!!!!!!!あと1球で決勝進出!!!!!!!!!!』
小宮(ストレートがもう1球見たかったな…。最悪ウイニングショットの高速スライダーが確認したかったけど…。実戦から若干離れてる僕が彼の快速球についていける可能性は低い…。ましてや今日初打席…。次のボールは間違いなくストレート。初球の僕の怯み具合を見る限りストレートに全く対応しきれてなかったしね。3球で来るとも限らないけど。変化球だったらボールにしてくるはず。)
ビュッ!!
カクッ!
『ボール!』
『さあストライクからボールになるスライダーを見逃してボール!』
西口『小宮のやつ…。』
慶野『よく見えてるな。』
大場『いや、かなり動揺している。初球の怪物級の豪速球のイメージがぬぐえていないんだろう。勝負球は誰の目から見ても明らかなようにストレートだろう。それを小宮が打てるかどうか。それで決まる。』
ビュッ!!
『チェンジアップがショートバウンドになってボール!これでカウントはツーツー!!!!!!!!!勝負に来るか!?猪子石のバッテリー!!』
小宮(次だ!ストレートが来る!!)
渡辺(緩急もつけた。あとはコイツをヤスのストレートで三振に撃ち取るのみ。もし読んでるとしても今のヤスの直球に緩急とかの工夫を凝らしたんだ。絶対に抑えられる。)
渡辺がストレートのサインを出す。
小木曽『任せろ。カズキ。』
小木曽がニッコリと微笑む。
小木曽(俺には今度こそ勝たなくちゃいけねえやつがいる。こんなところでくすぶってちゃいけねえんだ。今度は絶対に…)
(桜沢をぶったおす!!!!!!)
西口(哲都…ごめんな…お前に1球しかチャンス与えられなくて…。ほんとに悪いと思ってる。この1球で仕留めてくれ…。)
小宮(もう…。拓磨の心の声なんか僕には聞こえてるんだよ?そんなのいいって。だって嬉しいもん。拓磨が昔の拓磨に戻ってくれてさ。それだけで十分。でも、ここは絶対に負けちゃいけない場面なんだ。僕が1球で仕留めればみんなが喜んでくれる。こんなしびれる場面。これからの人生でも経験できるかわかんない。)
西口(て…哲都…。)
小宮(でもね。これだけは言わせて。)
西口(…?)
(あんな陰気だった僕を、野球に誘ってくれて、ありがとう。)
根本『決めろ!!!!!!』
芝田『これで終わりだ!!!!!!!!』
大場『打ち返せ!!!!!!』
鬼頭『絶対打てよ!!!!!!!!』
西口『決めてこい!!!!!!!!!!!哲都!!!!!!!!!!!!!!』
小木曽『俺のストレートが、そう簡単に打たれてたまるか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
ビュウウウッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!
小宮『みんながこんな僕に期待してくれる。なのに凡退なんてしてたら…』
『『『僕の存在意義が無くなっちゃうじゃんかよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』
ガン!
ボールがバットに当たる。
『『『『いっけえぇぇぇぇっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』』
カァッッッッアッッッァッッッキーーーーーーーッイィーーンッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『『捉えた!!!!!!!!打球はセンターの後ろ!!!!!!!!センター坂本良太!!!!!バックする!!!!!!!!!!!!!!!!!!!バックする!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』
小木曽『捕ってくれ!!!!!!!サッチャン!!!!!!!!!!!!!!!』
坂本良『くそぉ!!ギリギリか!?』