No.70:フルスイング
『『フォアボール!!!!!!朴昌圭、この回少し制球が乱れ、ツーアウトフルベース!!!!!!!!』』
『9番、ショート、島谷倫暁くん。』
島谷が独特のオープンスタンスで打席に構える。
ビュッ!!
スバン!
『ストライク!!』
島谷倫(くそ…アウトローギリギリか…。)
野中『ここ最近島谷兄は守備でこそチームに貢献しているが…』
川越『バットではサッパリですもんね…。』
野中『ああ…。3点差の終盤7回裏…ツーアウトフルベース。ここで一本出さないと流れ的にも邦南はもっと不利になる…。もし一本出れば次のバッターは…』
野中&川越『鬼頭!』
ビュッ!!
カクッ!
『ストライク!!ツー!!』
『さあ2球目も得意のカットボールでストライクをとり簡単に追い込んだ!!』
野中『ダメだ…狙い球が絞れていない…』
島谷倫(昔っから俺は打撃よりも守備の方が大好きだった…。だけど…だけど…それだけじゃ高校野球なんかやっていけねえ…。だから毎晩気の済むまでバット振り続けてきた…。なのになぜ打てないんだ…。)
『第三球!!』
ビュッ!!
ズバーンッ!!!!!!
島谷倫(くそっ!ストライクか!?)
『ボール!!!!!!ボール!!!!!!!』
島谷倫(た…助かった。)
島谷涼『兄貴!』
島谷倫『?』
島谷涼『しけたつらしてバッターボックス立ってんじゃねえよ!!そんないい場面なんだからもっと楽しめよ!!!!!!試合出たくても出られねえやつがいるってことを忘れるんじゃねえぞ!!!!!!!』
島谷倫(!!)
島谷倫(そうだ…俺はなに諦めていたんだ…。応援してくれる人のため…ベンチを暖めてくれてる奴のため…そんでチームのためにバットを振るんだ!!!!!)
(やれることはやった!勝つために何千本何万本とバットを振ってきた!!これで打てなきゃ…)
『しょうがねえよ!!って言い訳ができる!!!!!!!!!』
カキーン!!!!!!!!!
『内角直球にひるまずフルスイング!!!だが少し詰まったか!?打球はショート正面のあたり!!』
島谷倫『まだだ!まだ内野安打がある!!』
『あーっ!ショートの榊原、2塁ランナーと交錯した打球を弾いてしまった!!!!!2塁は無理!!急いで拾って一塁へ送球!!!!!!』
『セーフ!セーフ!』
『セーフだ!!9番島谷倫暁くんの相手のタイムリーエラーを誘う執念のフルスイングで一点を還して5-3!!!!!とられたあとすぐ一点を返した!!』
野中『よくあの厳しいコースに手が出たな…。なにか気持ちに変化があったのか?』
川越『結果オーライは必然だ。それ相応のことをしてやっと奇跡は起きる。あいつの場合は迷いのないフルスイングが奇跡を呼んだ。これで次のバッターは…』
『1番、ライト、鬼頭くん。』
鬼頭『meで決める。見てろよみんな!!』