No.61:大場翔真の過去
『七回の表、上社西高校の攻撃は、3番、センター、朴昌龍くん。』
『さあ打席にはさっきセンターから好返球で同点を防いだ朴昌龍。今日は4打数3安打と当たっています!』
氷室『とぉっ!』
朴昌龍『しょきゅうをたたく!!』
カキーンっ!
『大きいっ!!!!これは伸びるぞ!越えた越えた!!バッターランナー朴昌龍は二塁ストップ!!七回の表、上社西高校の攻撃、この回先頭の3番朴昌龍のツーベースヒットでいきなりノーアウトランナー二塁です!!』
氷室『チックショー!!めっちゃくちゃいいボールだったのに!!』
西口(確かに、今のはいいボールだった。落ち込まなきゃいいが…)
氷室『みんなー!注目注目!!!!!!!』
副島『ん?』
島谷倫『どうしたんだ?』
氷室『いきなりツーベースヒットを打たれまして、申し訳ないが、これからも打たせてとりたいと思っています!!どうか守ってくだされ!!ハッハッハー!!』
邦南メンバー全員(※ただし氷室を除く)
『…、…………、……は?』
大場『ったく、あいつのせいで、思い出しちまうじゃねえか。あのときの俺を…』
回想シーン↓↓
『ツーアウト!ツーアウト!』
『しっかり抑えろよ!』
『楽に楽に!』
『自信もって投げ込め!』
『まだ3点も余裕あるからな!』
安田 翔真『オッケー!!打たせてとるからな!!しっかり守ってくれよ!』
カキーン!
翔真『レフト!!!!!!!』
坂田『くそっ!』
打球はレフトの頭上を越えた。
『回れ!回れ!』
『カット!!カット!!』
結果はツーベース。満塁から二人のランナーが入って点差は一点差、翔真の所属するチームはわずか一点リードとなった。
そのときマウンドに立っていたのは、
安田 翔真
今で言う、大場 翔真
のことだ。
『タイムお願いします。』
『タイム!』
内野陣がマウンドに集まる。
山本『安田!まだまだ勝ってる!強気にいこうぜ!!』
杉山『打たれるのはしょうがない!』
そして…
『おにぃ!次のバッターで仕留めるよ!』
この声の主は、
翔真『おう!わかってるって!慶大!』
安田 慶大
翔真の一つ下の弟だ。
ちなみにポジションはキャッチャー。
そして…
『プレイ!!!』
カキーン!
慶大『ショート!!!』
杉山『あいよ!』
『アウト!!!』
翔真『よっしゃあ!公式戦初勝利!!!』
この安田兄弟は翔真が小学校4年生(慶大は小学校3年生)のときまで愛知ではなく、福岡にいた。
4人家族で、いつも明るく、とても仲の良い家族だった。
が、悲劇は突然起きた。
…
ブーブー!
悲劇の起きた日、慶大と慶大のお父さんは車でスポーツショップに向かっていた。
お父さん『慶大!新しいグローブの色は何色がいいんだ?』
慶大『んーと、今までは黒だったから、黄色がいいなぁ。』
お父さん『そうか、キャッチャーミットは高いんだから、大事にしろよ!』
慶大『うん!大事にする!』
そして…
お父さん『よし!帰るぞ!』
慶大『やったぁ!ありがとうお父さん!』
ブーブーブー!
二人が車に乗って家に帰るとき、遂に悲劇の時がやって来た。
お父さん『最近楽しいか?』
慶大『なにがぁ?』
お父さん『野球だよ!野球!!』
ブブー!ブブー!
慶大『うん!楽しい!!』
お父さん『よし!これからも…』
お父さんは一瞬固くなった。
そして…
ガラガラガッシャーン!
『救急車だ!!!!』
『早くしろ!!!!』
『お、おい!まさかこの軽自動車が大型トラックと正面衝突したのか!?!?』
『中の人は大丈夫なのか!?』
ピーポーピーポー!
二人は、病院に搬送された。
ドクターの懸命な努力も実らず…
『残念ですが…お二人ともに…もう二度と息を吹き返すことはありません…。二人とも…即死のようです…。』
お母さん『……。翔慶…慶大…。』
翔真『お母さん…お父さんと慶大…どうしちゃったの…?』
お母さん『翔真、これからは二人で生きていかなくちゃならないの…。』
翔真『え…。それって…。』
お母さん『二人とも…死んじゃったのよ…。』
そのとき、翔真は何も考えられなかった。