No.59:桁外れの洞察力
藤武『鬼頭さん…目が…』
一塁ランナーコーチの藤武は鬼頭の殺気に満ちた鋭い目に驚いている。
『いやぁ~大きなリードをとります。一塁ランナーの鬼頭くん。』
朴昌秀(バカメ…。昌圭ノ牽制ヤクイックノジツリョクハカナリアル。)
昌秀が牽制のサインをだす。
昌圭(狙ッテヤル。大事ナノハ焦ラスコト。)
ビュッ!!バン!
『セーフ!』
昌秀(ヨクセーフニナッタナ。ホメテヤル。)
もう一回昌秀が牽制のサインを出した。
牽制が来ても鬼頭のリードの大きさは変わらない。
ビュッ!!バン!
『セーフ!』
昌秀(ナニ!?サッキヨリモハヤクモドッタダト?)
鬼頭『牽制は上手いって評判だったのに、いざランナーとしてでると全然上手くないじゃん。こりゃ、あと2歩いけるな。』
昌圭(クソッ、更ニリードガデカクナッテヤガル。舐メヤガッテ…。)
昌秀(サシコロセ。)
ビュッ!!バン!
『セーフ!』
鬼頭『うんうん。まだ出れるね。』
ガッ!ガッ!
鬼頭がもう一歩リードを大きくした。
端から見れば、なぜあんなにリードしているのにピッチャーは牽制で刺せないのか?と思う状況だ。
副島『おい…さすがに出すぎじゃ…』
大場『大丈夫です。鬼頭さんはピッチャーの足を見てリードをとってるんじゃない。ピッチャーの上半身を見てリードをとっているんです。』
松坂『どういうことだ?』
小宮『並外れた観察力、洞察力でピッチャーの心理を読み取って、牽制が来る少し前にピッチャーの心の変化を読み取って塁に戻るんですよ。あの人は。だからあの人は盗塁を仕掛けるときも、完全にモーションを盗むし、ランナーとしてあの人に勝る人間は一人しかいないんですよ。』
島谷倫『なんだ?一人って。』
小宮『S・6の1人、静岡の晟西高校の水仙です。鬼頭さんはあいつをランナーに出したら一点相手に渡すようなもんだっていってました。あいつだけがオレが認めたランナーだって言ってました。』
『ランナー走った!!』
小宮『ほら、完全に盗みました。』
カン!
『エンドランだ!!打球はセカンドへ!!二塁は無理、一塁へ送球ワンナウト!!あーっと一塁ランナーの鬼頭くん、サードまで向かうぞ!!セーフセーフ!なんとセカンドゴロでサードまで到達です!!これで一死三塁!』
副島『すげ…今ので三塁かよ…。』
『3番、ファースト、大場くん。』
カキーン!
『打球はセンターへ!!これはタッチアップには十分か!?』
邦南高校、同点なるか!?