No.57:暴走こそが氷室佑介クオリティ
ポピィ!ポピィ!プブー!
ポピィ!ポピィ!プブー!
ポピィ!ポピィ!プブー!
ポピィ!ポピィ!プブー!
ポピィ!ポピィ!プブー!
氷室『ん?』
副島『この音は…?』
木村『ラッパ?』
慶野『あれ?なんで?』
藤武『僕が兄貴に頼んで来てもらうように言いました。』
小宮『あっ!そういうことね!』
西口『何がそういうことなんだ?』
藤武『僕の兄貴、吹奏楽部なんですよ。まあもう最後のコンクールは終わっちゃって引退してる身なんですけどね。3年生だけ最後の思い出作りのために来てくれたみたいで。最近猛練習してくれてたらしいです。』
松坂『へぇー。でもうちの吹奏楽部って超スゴいって事は期待していいのか?』
西口『何がスゴいんですか?』
小宮『拓磨知らんの!?邦南高校伝統の吹奏楽部のこと!』
西口『なんや。知るわけないやん。』
慶野『邦南の吹奏楽部はね、全国大会常連で全国制覇を通算で7回もしてるんだよ。今年は惜しくも準優勝だったらしいけど。』
鬼頭『だから当然部員も多かった。一学年で40人はいるはずだ。だから3年生だけでも迫力十分ってわけ。』
藤武『そういうことです。応援はあった方が燃えるでしょ!』
氷室『あれは吹奏楽部…。たしか…佳美ちゃん(1年生)も吹奏楽部だ!って事は来てくれてる…♪』
(※佳美ちゃんは1年生なので来ていません。)
『かっとばせー!佑介!』
島谷倫『あれ?いつもより声援が大きいような…大きくないような…。』
島谷涼『俺がサッカー部とラグビー部に招集かけておいたよ。』
副島『お前ら…。』
島谷涼『控え選手でもやれることはたくさんありますから。』
藤武『絶対勝ちましょう!』
大場(1年は呑気でいいもんだ…。次の回以降氷室が何点取られるか心配だな…。俺は…。)
氷室『燃えるぜ…。こんな声援の中、できる高校スポーツなんてまずないからね…。燃えるぜ!佳美ちゃんにいい格好見せるためにも、』
『初球!攻撃開始!!!!!!!!!!!』
『少し振り遅れたが真芯で捉えた!!!!!!打球はライト線際!フェアだ!打った氷室は二塁へ向かう!おーっと!ライトの岩見、クッションボールの処理に手こずっている!これを見て氷室は二塁も蹴る!一気に三塁へ向かう!ライトの岩見、ボールをセカンドの小山にわた…あっと!中継への送球が少し乱れた!!』
『ワァァッッァ!』
『あーっ!中継への送球が乱れた隙を狙って氷室が三塁を回っている!!一気にホームを狙うぞ!これは少し暴走気味だ!中継にはいったセカンドのカバーをしていたピッチャーが本塁へ送球!!!!クロスプレーは!?バッターランナー氷室はヘッドスライディング!!!!!』
『ア、アウトォォ!』
『アウトだ!』
『セーフセーフ!』
『いや、セーフだ!!キャッチャーの朴 昌秀、クロスプレーの際にボールを落球してしまった!!一点を返した!!これで3-2!1点差に詰めてきた!!』
副島『ナイスラン氷室!!』
大場『なにがナイスランだ…。キャッチャーがしっかり取ってたら完全にアウトだろ。暴走がたまたまセーフになっただけ。ノーアウトでやるプレイじゃない。』
『まっ。良いんじゃねえか?』
大場『鬼頭さん…。』
鬼頭『あいつ、一年坊のくせして、なかなか面白いヤツじゃん。俺次の塁を積極的に狙うの、嫌いじゃないぜ。』
大場『氷室佑介…か。』
氷室『大場先輩!!まだまだ諦める点差じゃないですよ!!いきましょう!甲子園!暴走こそが氷室佑介クオリティの真骨頂です!!』
大場『ポジティブなやつ。てか、諦めてねえし。』
鬼頭『なあ翔真?お前、昔のこと忘れてないか?お前がbaseball始めた頃のこと。』
大場『どうしたんです?』
鬼頭『初心忘れべからず!そういうことだ!』
その後、邦南は打線が沈黙。
打たせて取るピッチングをする朴昌圭から得点圏にすらランナーを置けない。
鬼頭『くそぉ…。』
副島『ドンマイドンマイ!切り替えていこうぜ!』
鬼頭(速球派は得意なんだけど…。こういうパッとしない技巧派の小さくピュッと曲がるような変化球を何個も持ってるやつは中学の頃から苦手なんだよな…。)
…
『空振り三振!!!氷室、カーブで空振りの三振に切ってとりました!!』
氷室『シャァァァ!!!!!!!』
大場『氷室…やるな…。』
そして氷室がなんとも気味の悪いテンポで投球して、ピンチも多少ありながらなんと6回まで無失点。
持ち前の遅いボールで強打の上社西を見事に沈黙させる。
『6回の裏、邦南高校の攻撃は、1番、ライト、鬼頭くん。』
『いやあ。先程から少々雨が強くなってきました。7回が終了しない時点で降雨コールドゲームとなりますと、再試合となります。』
ザーザーザーザー!!!!!
吹奏楽部『あ!今日天気予報見るの忘れてて傘持ってきてねえ!!』
『俺も!!』
『ウチもない!!』
『ヒャー!』
スタンドは少々混乱気味。
鬼頭(ここまで球数は5イニングを投げて47球。一イニングにコイツは平均して10球も投げていない計算だ。魅せてやるよ。過去に至高の7人組と言われたうちの1人、鬼頭博行の実力を!!)
『1番の鬼頭くんに朴 昌圭が投げる─────』
次回、鬼頭が魅せる!!