No.56:Y・H-LOVE ZUKKYUN-ボール
『さあ2回途中で上社西高校、邦南高校のエース大場をノックアウトしました!尚ノーアウトフルベースで好打者の1番バッター、正親くんが打席に入ります!代わった氷室くんは今大会初登板ですがこの悪い流れを断ち切ることができるか!?』
ドクッドクン…
氷室の心臓が高鳴る。
氷室(しっかり撃ち取って、いや…絶対に撃ち取って…)
氷室が独特のヘンテコ投球モーションから第一球を投げる。
氷室『佳美ちゃんを振り向かせるんだぁ!』
バーン!
正親『…む!?』
『ストライク!ワン!』
《 89km/h 》
西口『ナイスボール!!』
正親(こりゃ…球速以上に遅く感じるな。相当伸びてないボールだ…。)
正親がバッターボックスの1番前に立つ。
西口(まあ…。そうなるわな。打たれたら…しょうがねえか。)
2球目…
ヒュッ!
正親(思いっきり…フルスイング!!)
カキーン!
『遅いストレートを痛烈に引っ張ったぁーっ!打球は切れるか!?切れるか!?』
『ファール!ファール!』
『惜しくもファールです!いやぁ、しかしいい打球を飛ばします。上社西高校のリードオフマン、正親 勝成』
正親(あの投げ方、そしてアバウトなコントロール、さらには遅いストレート。完全にピッチャー経験は浅い。たとえ変化球を持っていようとも、確実に俺なら仕留められる!さあこい!!)
西口(何がなんでも打たせてとりたい。見せ球は不要だ。三球で片付ける。)
西口が縦カーブのサインを出す。
(氷室曰く、【Y・H-LOVE ZUKKYUN-ボール】)
氷室『よっしゃあ。遂に禁断の魔球…Y・H-LOVE ZUKKYUN-ボールを解禁するぜ…。くっくっく。(※実際は縦のカーブです。)』
西口(よし!こい!お前のM・J-LOVE 注入-ボール!)
ヒュッ!
シュルシュル…ピュッ!
正親(なんだ!?)
西口(よし!引っ掛かったな!)
氷室(佳美ちゃん…佳美ちゃん…佳美ちゃん…!!!!佳美ちゃんの為に撃ち取られてくれ!)
正親(案外キレがいい…!!くそ…。)
(バットが止まんねえ…。)
カスン!
『バッターの正親、変化球に対して泳いでしまった!ちょこんと当てただけの打球はサードへ!!サードの松坂くん、捕球してすぐサードベースを踏む!そしてセカンドへ送球!!!!セカンドの副島くんも流れるように一塁へ送球!!!!!一塁の判定はどうだ!?』
『アウトォォ!』
『なんとまさかの三重殺成立!!!!!!!!邦南高校の2番手の氷室くん!ノーアウト満塁からの登板でしたが、なんとトリプルプレーでこのピンチを退けました!!』
氷室『どんなもんじゃぁーい!!!!!!!!!!!ダァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
氷室がマウンドの上から空に向かって、拳を突き上げた。
『見てください!!この闘志溢れるガッツポーズ!これは2回の裏の攻撃も乗っていけそうです!!』
西口(まったく。やりやがって。)
小宮(なんか氷室くんがピッチャーってスリル満点で楽しいね。)
西口(ああ。これで流れが変わるといいな。)
『2回の裏、邦南高校の攻撃は、5番、ピッチャー、氷室くん。』
嫌な流れを断ち切った氷室のピッチング!
この男が今度は先頭打者としてバッターボックスに登場する!!