No.5:小宮 絵梨
翌朝、朝練の時間…
小宮は疲れはてて眠っていた。
すると外から声がする。
氷室『キャプテ~ン!部室からボール持ってきますか~?』
副島『当たり前だろ。お前はボールを使わずにダッシュ100本でもするつもりか?昨日いっただろ。朝練は打撃だ。ついでにバットも五本くらい持ってこい。木のやつな。』
氷室『は~い。』
小宮はこのまま自分が血だらけで倒れてたらあまりにも不自然なため、とっさに横の壁にかけてあった10本くらいのバットをわざと自分の顔にむかって倒した。
(ガチャガチャ…ガチャッ!)
氷室『やっとあいた~ってえぇ!テッチャン!どうしたん!?』
小宮『あー昨日ね、部室の掃除しようと思ってここにいたらバットが突然倒れてきて、痛すぎて気絶してたんだ~。さっき眼が覚めたところ。』
氷室『なんかそれにしても随分と顔がボコボコだよ~。なんか誰かに殴られたあとみたいだねー。』
小宮は一瞬ドキッとした。しかしどうやら氷室はバットが突然倒れたと言う設定を理解してくれたらしい。さすが、何をやるにしてもやる気のない佑介だ。疑うことを知らない。
そして野球部は栄華高校との試合。
初回に一挙8点をあげ、4回の裏にも打者一巡の猛攻で11点。結局24-0の5回コールドで勝利した。
試合後、小宮は急いで家に帰った。
『おかえりー!』
小宮『ただいま!今すぐ飯作るからちょっと待ってろ!』
小宮に現在、親はいない。10年前、小宮が5歳の頃、父親が釣り好きの父親が、大型台風接近中にも関わらず、海で釣りをしていた。その結果荒波に飲まれてそのまま帰らぬ人になった。
そして2年前、小宮が中学二年生だった頃、お母さんが交通事故に遇い、死んでしまった。
それっきり小宮は2つ年下の妹の絵梨と二人で生活してきた。
小宮は絶対にプロ野球選手になって大きな家を建てて妹と暮らすという夢がある。
絵梨『お兄ちゃんはなんで昨日帰ってこなかったの?うち、心配したよ。』
小宮『昨日は野球部でミニ合宿みたいなのがあってさ。なにも言わないでいて悪かったね。』
絵梨はふーんという顔をしながらこういった。
絵梨『お兄ちゃん、最近元気ないけど…しかもその顔…誰かとうまくいってないの?』
小宮『なに言ってんだよ!兄貴はいつも元気だぜ。』
絵梨『ならいいけど…。あっ!いつかお兄ちゃんの野球部の練習見に行っていい?』
小宮『ダメダメ!お前は勉強して、テニスも練習しないと!プロテニスプレイヤーになるんだろ?』
絵梨『ケチー!』
(まぁどっちにしろこっそり見に行っちゃえばいいや♪)
そして…
『三回戦の相手は、春の大会ベスト4の高校、愛農大名林だ。』
大場『今の俺たちなら、絶対いい勝負ができる。自信持とうぜ!』
《《おう!!!》》
赤崎『ねぇ!哲都はまだ大会でヒット1本しか打ってないから明日は猛打賞を前提に打ちまくって守りまくってね!!』
小宮『任せろ!明日翔!』
この二人は付き合ってもう一年がたとうとしている。
『フフフ…。許さねぇぞ…ぜってぇにな。』
この二人のほほえましい会話の背後で不気味な笑いをしている者が、一人いた。