No.49:さらに計算外
パラ…パラ…パラ…
鬼頭『雨…?』
慶野『空はそこまで曇りって訳でもないし…。』
西口(通り雨だ。今日、朝?ズバーン!(朝のニュース番組)でお天気お姉さんの江本 美緒ちゃんが今日は通り雨の可能性があるでしょうって言ってた。)
『2番、ライト、岩見くん。』
西口(コイツは強力上社西打線で唯一の繋ぎ役と考えていい。どうせバントか進塁打、こいつの打力じゃ長打は考えられない。)
岩見が右バッターボックスに立つ。
すでにバントの構えをしている。
岩見(いきなりやっちゃう?)
正親(しかけるか。)
ガッ!
一塁ランナーの正親が大きなリードをとる。
大場(でかいな…。こりゃ刺せるぞ。)
大場はフィールディングや牽制などにはかなりのものを持っている。
ジー…
大場がランナーを焦らす。
ランナー正親の呼吸を変える。
そこから…
ビュッ!!
ザッバーン!
『セーフ!!』
正親(牽制上手いな…。いつもみたいに余裕ぶっこいてたらアウトになってたかも。てかいきなり速い牽制か。まずは遅い牽制で様子を見てくると思ってたんだがな。まあいきなり速い牽制だったから次は勝負だな。)
正親がリードをとる。
大場(よし。さっきより一歩くらい小さくなった。盗塁はない…。)
正親(とか勝手に思ってくれたらラッキー♪)
大場がセットポジションから足をあげる。
『ランナー走った!!』
大場(マジで!?)
間に合わず打者に投げてしまう。
岩見(先頭バッターをストレートのフォアボール。そしていまボクはバントの構え。そして正親がピッチャーを揺さぶる。)
回想シーン↓↓
金丸(かねまる:上社西高校監督)
『お前ら、いいか?邦南は俺らと同じ打のチームだ。守備は決して得意じゃない。だが、エースの子、それから背番号12の今大会途中からサイドスローに変えた子、この二枚は非常にいいピッチャーだ。だがな…ここにきて背番号12の子が5回戦で松葉杖だった。つまり相手はいま一枚しかピッチャーがいない。そう、エースの子は大場っていうんだけどな、そいつは中学のとき硬式野球日本代表に選出されている。しかもその時もエースとして。いいか?だがその大場くんも今大会の防御率はかなり悪い。なぜか。そう、彼は序盤に失点を重ねてしまう典型的なスロースターターだからだ。だから今日は特に序盤にとれるだけとっておきたい。』
そして…
金丸『おい!岩見!お前に話がある。今日はまずほぼ百パーセント正親が先頭打者で出る。そうなったらお前の仕事だ。お前はバンとの構えをしろ。まあスロースターターの大場くんのことだ。バントは初球でやらせてくる。アウトが欲しいはずだからな。…でだ。ここからが本題だ。一塁ランナーの正親が揺さぶりをかける。牽制とかをはさんでくるだろう。そしたらもう序盤の大場くんはバッターに集中できてない。そしたらな…』
回想シーン終わり
『置きにきたストレート一本狙い!』
カッキーン!
『バスターエンドランだ!!打球はライト線に落ちる落ちる!フェアだ!一塁ランナーの正親はもう三塁到達!!そして三塁も回る回る!!打ったバッターの岩見は二塁へ!!先制しました!!1回の表上社西高校!!初回からいきなりバスターエンドランを仕掛けてきました!!!!』
西口(クソ…。ここでいきなりバスターエンドランか…。完全に頭になかった。でも…)
パラ…パラ…パラパラパラパラ
西口(…!?)
大場(雨が…)
鬼頭(強くなってきた…。)
西口(空が…黒くなってきた…。)
松坂(こりゃ本格的に降るんじゃねえか?)
西口(ここでの悪天候はさらに計算外だ…。江本美緒ちゃん…天気予報…しっかりしてよ…。)
名林戦の時のような雨が襲うか!?