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No.42:快打炸裂!



島谷涼『あの人、試合に出ていいんですか?』


鬼頭の存在を知らない一年生部員が率直な疑問を述べた。


慶野『たしかに背番号10はいままでいなかったけど…。まさかあの人が?』


大場『ああ。あの人は3年生だが今日初めて邦南の野球部に顔を出した。鬼頭(きとう) 博行(ひろゆき)って言う人だ。』

慶野『翔真はあの人と知り合いみたいだけどあの人にこの場面任せて大丈夫なの?野球初心者じゃないの?』


大場『その心配は要らない。あの人はここにいる誰よりも中学校までの実績なら勝っている。』


氷室『大場先輩はあの人とどういう関係なの?』


大場『詳しくはいずれ話すときが来るだろう。そのときに話す。ま、言ってみれば俺の師匠ってポジションかな。』



島谷涼『でも大場先輩よりもすごい実績って…。』


大場『あの人は中学の頃…あのS・6と一緒に野球をやってて、当時は鬼頭さんを含めてS.・7って言われてたんだよ。そんでもってS・7は中学軟式出身にも関わらず硬式野球の世界大会に出場しててな、S・7を中心にした中学硬式野球日本代表は世界一になった。しかもあの鬼頭さんは背番号1。俺も中学硬式野球日本代表のエースだったが、世界大会では一回戦負け。実績でオレよりも上ってのはそういう意味なんだよ。』


そこにいる皆が驚いた。





鬼頭(さっきスタンドから見る限り持ち球は速いスライダーと遅めのスライダー、あとカウント球にカーブも持っているな。打たせてとりたい場面では速いシュートを多投。緩急自在なうえ制球力も抜群。ストレートも左のサイドハンドのくせして常時140km/h前半から中盤。勝負どころでは140後半を出してくる。かなりいいピッチャーだ。まず初球、何で来る?久々の打席でおそらくさすがのオレでもストレートには目がついていかないだろう…。代打への初球は変化球でいくのが鉄則だ…。なぜなら代打は初球ストレートを狙っているやつがほとんどだからな。ってことで初球は変化球がいいな…。)


鬼頭は今の自分のコンディションから直球はまず捨て、変化球狙いにした。



初球…


(ビュッ!!ズバーンッ!!)



『ストライク!!』


《 143km/h 》



鬼頭(初球はストレートか…。今ので143km/hか。やっぱストレートには目がついていかねえ…。)



2球目…


(ズバーンッ!!)


『ストライク!!ツー!!!』



《 140km/h 》


鬼頭(今のもストレート?たしかに球速はさっきよりも少し遅いがさっきほど球のノビは感じられなかった。)


鬼頭がピッチャーの谷の方をチラッと見る。


谷(さすがに序盤に飛ばしすぎたかな…。このバッター…ストレートの反応が悪い。このままストレートで押す方が安全だと思うが…まだ8回の裏…。9回にバテるわけにはいかない…。)


谷は顔には出さなくとも内心バテ始めていた。



鬼頭(しめた。次のボール、確実に変化球だ。)


鬼頭は谷のほんのわずかな表情の変化を感じ取った。


(バテてきたな。)



鬼頭(最終回のためにスタミナ温存しておきたいわけだろう。まあ無理もない。今まで7回2/3を18奪三振。序盤に比べて三振のペースが落ちてきた時点で少しバテてきていたのはわかっていたがな。次の1球…仕留めるしかない。)





ピッチャーの谷がセットポジションから投球モーションにはいる。



ゴウ!!!!!

カクククッッ!!!!!



鬼頭(いいスライダーだ。左バッターのオレに当たる軌道から入れてくるつもりだったんだろうけどね。今のオレに変化球を投げた時点でキミの負けさ。)







(カッキーーッッンッッ!!)







『打球は大きいぞ!!!!!大峰明館、外野の守備位置が浅い!!!!!』



(ボンッボンッ!!!!!!)



『破ったーっ!!!!!!!打球は右中間!!!!!!!!!!前進守備の外野を真っ二つ!!!!!!!!バッターランナー鬼頭、足が速い!!!!!もう二塁を蹴る!!!!!!素晴らしいベースランニング!!!!!!!!無駄のない走塁だ!!!!!三塁は……回った!!!!!回った!!!!!一気にホームを狙う!!!!!!大峰明館も素早い連携でボールを繋ぐ!!!!!!ホームはどうだ!?鬼頭はまもなくホームイン!!』





筧『うがっ!!!!』


『セカンドの中継に入った筧も渾身のバックホーム!!!!!!判定はー!?!?』



『セーフ!!!セーフ!!!』



『セーフだ!!タイミングは微妙でしたがバッターランナーの鬼頭くん、キャッチャーのタッチをうまくかわして見事なホームイン!!8回の裏、ここにきて邦南高校が代打鬼頭くんのランニングホームランで2点を返し5-4!!!ついに一点差まで詰めてきた!!!!!!』


鬼頭『よっしゃあ!!』


島谷倫『すげ…。』

松坂『こんなやつがまだいたのか…。』

大場『それは向こうのチームも同じ気持ちだと思いますよ。あのベースランニングなんかなかなか真似できるものじゃないですしね。』


鬼頭『よし!!あと一点だ!!』


大場『みんな。この人のことはまた違うときに話してもらう。だからこの試合はとりあえず勝つぞ!!!一点差なら絶対に追い付ける!!』


『『『 おう!!!!!!!!!! 』』』



邦南の選手は鬼頭の登場にまだ唖然としているが序盤から味わっていなかった感覚が戻ってきた。


『勝てる。まだまだ諦める場面じゃない。』




その後次の打者慶野、大場が連続四球、4番の松坂も死球で出塁し、二死満塁となるもここで大峰明館はここまで好投していた背番号20の谷をレフト代えてエースの飯尾(いいお)を投入し、この飯尾が5番の島谷倫を打ち取りスリーアウト。




そして一点差のまま、9回を迎える…。




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