No.40:やっちまった…
7回の裏に大場の2ランホームランで2点を返した邦南は後続がまた抑えられスリーアウト。
『8回の表、大峰明館高校の攻撃は、7番、セカンド、筧くん。』
大場『はあ…。はあ…。はあ…。…。』
副島(翔真はもう130球を越えてきてる。そろそろ疲れも表に出てくるはずだ…。だからこの回は変化球中心の攻めで体力温存するぞ。)
筧(今まで相当飛ばしてきたからさすがにまだまだ直球中心はキツいだろ。じきに変化球の割合が増えてくるはずだ。)
初球…
ビュッ!!ガクッ!!
筧(フォークだ!!曲がりがはやい!!!!打てる!!!!!)
副島(うがっ!!!)
(カキーンっ!!!!!)
『先頭打者の筧が捕らえた打球はセンターへ!!!!二点リードの大峰明館、先頭バッターが出塁です!!!!!』
副島(今のフォーク、明らかにキレが悪かった。これも疲れからか…?)
大場(…いける。さっきはダメだったけど、今の手の感覚ならいける気がする。まだまだ疲れてなんかいねえ。)
『8番、レフト、仲沢くん。』
仲沢がバントの構えをする。
川越『手堅いな…。』
野中『まあ当然っちゃ当然だろ。守備の安定しない邦南から一点をとるより堅守の大峰明館から一点をとる方が遥かに難しい。』
川越『大峰明館も打撃があまりよくない分取れるところでとらなきゃ苦しくなる可能性だってあるしな。』
野中『ただ。一つだけ懸念がある。』
川越『…………。いつバテるかだな。残念だが。』
野中『球数なら十分根性でなんとかなる状況だが…』
川越『球数以外での消耗量が半端無さすぎる。』
野中『味方の大量失策。それだけじゃないな。』
川越『打撃の時も休んでないしな。』
野中『普通ピッチャーは自分の打席以外の時は座って体力回復に当てるんだが、あいつはこの試合ベンチの最前列に立ってずっと大声で味方に声援送ってるからな。』
川越『ったく。見ててこっちが心配しちまうよ。』
大場『バントなんかやらせてたまるか。ここはぜってえさせねえ!』
初球…
ズバン!!!!
アウトローに見事に決まった直球。
2球目…
大場『ここで使う。副島先輩、頼みました。』
副島(おう。)
副島が下村フォークのサインを出す。
セットポジションから大場が投げる。
大場(身体脱力、決して力まずに、しなやかな腕の振りで、最後の最後…)
『指先だ!!!!!!!!!』
ビュウッン!!!!!!
仲沢(ストライク!!送らせてもらう!!!!!)
カクッッッアッ!!!!!!
仲沢(なっ!!)
副島(よしっ!!!!!!)
バン!!!!!
ボールがワンバンする。
仲沢はバントを空振りした。
そしてボールはホームベースの1番後ろのとんがったところに当たった。
バウンドが変わった。
ゴロバウンドになった。
キャッチング技術が未熟な副島は
腰が浮いていた。
体で止めようとした捕手副島の股の間をボールが抜ける。
これで無死二塁。
副島(やっちまった…。)
キャプテンの副島は下を向いている。
川越『負けたな。この場面でパスボールやってちゃダメダメ。股抜けなんて完全にキャッチャーの責任だよ。』
そう言って川越は席を立つ。
野中『どこ行くんだ?』
川越『ちょっと外いってくる。次の試合やるやつらがアップしてると思うからな。』
大場(ちくしょう…。負けられるかよ…。…。……。こんなところで。まだバント継続だな…。しかし。この試合、もう下村フォークは使えない。またワンバンになって暴投になっちゃったらもう終了だ。)
大場はここまで体力的、精神的に追い込まれているのにも関わらず未だ最善の手を尽くしている。
(コン!!!)
『うまい送りバントだ!!サードにうまく転がした!!これでワンナウトランナー三塁!!!!!』
『9番、センター、佐々木くんに代わりまして、代打、美濃島くん。』
大場(ここで代打か。代打には変化球中心の攻めが鉄則だな。)
谷『美濃島は俺らの代打の切り札だ。美濃島の異名は…』
『変化球キラー』
(カキーン!!!!!!)
『痛烈な打球はセンターへ!!!!犠牲フライには十分だ!!!!!!!』
これ以上点をとられることは敗北を意味する邦南、どうなる!?!?ベスト8争い!!!!!