No.39:エラーの連鎖
結局4回の表は邦南のエース大場が4、5、6番を三者連続三振に討ち取りスリーアウト。
これで4回までで11奪三振。
しかし味方のエラーで3点をこの回失った。
大場は完全に孤立無援だ。
『4回の裏、邦南高校の攻撃は、1番、キャッチャー、副島くん。』
打席には先制のパスボールを献上してしまったキャプテンの副島。
副島『くそ…。』
副島は去年の敗戦を思い出していた。
副島達(今の三年生)が1年生だった頃は部員不足で夏の大会には出場できなかった。
そして去年、大場と慶野が入って部員がちょうど9人になり、夏の大会を経験した。
副島が2年生だったときは、キャッチャーはひとつ上の先輩がやっていたので、副島は捕手ではなく二塁手だった。
回想シーン↓↓
『1回の裏、港西高校の攻撃は、1番、ショート、高橋くん。』
(カキーン!!)
打球はセカンドの副島へ。
しかし…
『あぁーっ!!!!』
副島は初回の先頭打者の打球をトンネルしてしまう。
その後も失策や四球が絡み、この回ノーヒットで2点を先制される。
しかし大場の二打席連続のホームランで同点にする。
その後、港西はまたもエラー絡みで1点を追加。対する邦南も二死一塁から大場のタイムリースリーベースでまた同点にする。
が、9回の裏…
一死一二塁。
ゲッツーがでればチェンジの場面。
(カキーン!!)
打球はサードの島谷へ(島谷倫)。
注文通りのダブルプレイコース。
しかし
(バスッ!!)
サードの島谷は弾いてしまってアウト捕れず。これで一死満塁。
バッターは3番の川口。
港西高校で1番の好打者を迎えるが、大場はなんとか三振に撃ち取る。
『4番、キャッチャー、安藤くん。』
(カキーン!!カキーン!!カキーン!!)
追い込んでからもファールで粘る安藤。
絶対に勝つ!!という強い気持ちでいたが…
(カキーン!!)
打球はファーストファールフライ。
安藤が打ち損じてしまった。
ファーストの松坂が手をあげる。
だれもがスリーアウトだと思った。
だがあなたが思う通り…
『うわっ!!』
松坂は落下地点にうまく入れずばんざいしてしまいチェンジならず。
このプレイで大場の集中力が切れてしまった。
無理もない。この試合、自分がずっとマウンドを守ってきて何個アウトを損したことか。今のも疲労感たっぷりの自分に対し元気一杯の4番バッターにかなり手こずっていた。しかし打ち損じてくれた。
ラッキーだった。だがアウトを野手がとってくれない。
普通のピッチャーならこれまでに何度崩れてもおかしくなかったはずだ。
それを我慢して未だ3失点の投球。
しかしこの一年坊には限界だった。
顔には出さなくとも、これじゃあ勝つチームの試合じゃないと思った。
負けてもいいと思った。
そして次の1球…
(バン!!!!)
『ボール!!フォアボール!!』
投げた瞬間明らかにわかるボール球だった。
三塁ランナーがホームベースを踏む。
『ゲームセット!!!!!!』
邦南はこの試合、打たれたヒットはわずかに2。
一方の邦南は大場の4本。
大場は4打数4安打2本塁打3打点。
ちなみに邦南の失策は8。
回想シーン終わり↑↑
(バン!!)
『ストライク!!バッターアウト!!!』
『見逃し三振!!!!これで大峰明館の谷くん!!10者連続!!!!!』
『2番、センター、慶野くん。』
…
(バン!!)
『ストライク!!バッターアウト!!』
『空振り三振だ!!これで11者連続!!』
『3番、ピッチャー、大場くん。』
大場『まだ4回だ…。負けるわけねえ!!』
(カキーン!!)
『打ったぁ!!!痛烈な打球は右中間へ!!打った大場は三塁へ向かう!!!!余裕のスリーベース!!!!!このヒットが邦南の初ヒット!!』
しかし…
『ストライク!!バッターアウト!!チェンジ!!!!!』
『4番の松坂くんも三振でスリーアウト!!!邦南!!!一点もとれず!!!』
大場『まだ…まだ…。…。』
…試合は両投手の好投でテンポよく進み、七回の表、大峰明館の攻撃。
点数は未だ3-0で大峰明館がリード。
『7回の表、大峰明館高校の攻撃は、4番、サード、高橋くん。』
カキーン!!
『抜けた!!!大峰明館の4番高橋、三遊間を抜けるレフト前ヒット!!これで無死一塁!!』
『5番、ショート、太田くん。』
(コン!!)
『打球をうまく殺した!!いいバントだ!!ピッチャーの大場が丁寧に処理してこれで一死二塁!!』
『6番、キャッチャー、土佐くん。』
カン!!!!
『打ち上げたー!!!しかしこれはライトの氷室手をあげる。アウト!!!おっとしかし二塁ランナーの高橋はこの際にタッチアップしてこれで二死三塁!!!!!』
『7番、セカンド、筧くん。』
大場(このピンチを抑えればまだまだ十分勝てる。3点差ならまだまだワンチャンスで勝てる。今やっちゃいけないのは…)
『三塁ランナーをホームへ還すこと。』
初球…
ビュッ!!
(ズバン!!!!!!!!)
『ストライク!!!!!!!』
《 147km/h 》
筧(速いな…。こりゃバット短くシャープに打っていかなきゃあたんねえな。)
筧がバットを拳一つ分短く持った。
野中『ここにきて今日最速…。しかも自己ベスト更新か。やっぱこの子はすごいよ。』
川越『間違いねえな。俺の知り合いにスカウトがいる。そいつにコイツをマークしとくように言っておくかな。俺のお気に入りってことでな。』
野中『へー。ケイさんの知り合いにスカウトがおるんやな。ちなみにどこのチームの?』
川越『難波ライオンズや。ちょっと遠いけどな。』
『ストライク!!ツー!!』
《 146km/h 》
川越『くーっ、いい球だな!こんなチームにこのピッチャーはもったいねえな!!』
大場『よし…。追い込んだ。次はこのボール。』
大場がフォークの握りを試す。
この試合では旧フォークは使ったがまだ下村健太直伝の新球・下村フォークは使っていない。
なぜならまだ握力が下村健太レベルではないので多投は終盤に影響するからである。
大場『出し惜しみしてる場合じゃねえ。ここは一気に3球勝負で片付ける。』
大場が投球モーションにはいる。
ビュッ!!
シュルシュル!
大場『なっ!!なんで!?』
筧『絶好球!!』
(カキーン!!!!!)
痛烈な打球だが打球は三塁松坂の正面。
しかし
『トンネルだぁ!!!!!!大峰明館に追加点が入った!!!!!これで4点差!!大きな大きな一点が入りました!!!!!』
松坂『…わりぃ…。翔真。』
大場『お…おう…。気に…すんなよ…。』
《 121km/h 》
野中『今のは変化球かい?あまり曲がっているようには見えなかったけど。』
川越『今のは抜け球だろうね。まったくこんな場面で。大場くんがあんな精度の悪いボールを投げるわけないし。』
野中『だが4点目を取られちゃったね。』
川越『かわいそうだがこの大会でこの子を見るのは最後になりそうだ。』
野中『意義なしだが…このイニングで終わるのは勘弁だな。』
川越『考えてることは同じだな。栄嗣。俺もコールドにならないか心配してたところだ。』
野中『またエラーでの失策。ピッチャーの気分も最悪だろう。しかも今の投球、俺は確実に何か試しているように見えた。この場面で試すくらいだ。きっと賭けたんだろう。だがそれは失敗に終わった。』
川越『ピッチャー心理的にもう限界だ。とっくに集中力は切れているだろう。この回、まだまだ終わらないだろうな。』
(ズッバーッン!!!!!!)
《 149km/h 》
川越『怪物か…!?なんなんだこの精神力は…!?もはや高校レベルじゃない!!この場面でこの日出した自己最速を2㌔も更新するだと!?』
野中『去年から成長したね。俺はわかる。』
(ズッバーッン!!!!!!!!)
『ストライク!!ツー!!!』
《 149km/h 》
(ズッバーッン!!!!!!!!!)
《 149km/h 》
『ストライク!!バッターアウト!!チェンジ!!!』
『大場が3球連続の149km/hで8番仲沢を三振にきってとりました!!しかしこの回大峰明館は邦南のエラーでさらに一点を追加しこれで4-0!!』
『7回の裏、邦南高校の攻撃は、2番、センター、慶野くん。』
慶野『ごめんな。翔真。またおれらが足引っ張っちまって。』
大場『謝ってもとられた点は返ってこない。まだまだ4点差。決して諦める点差じゃない。とりあえず塁に出てくれ。あとは俺がどうにかする。』
慶野『相変わらず。強いやつだ。』
大場『良いからでろよ!!』
慶野『任せろって。』
『大峰明館の先発、谷は今までと6回をなげて被安打1無四球の16奪三振の好投を見せています!!』
初球…
(バン!!)
『ストライク!!』
慶野(くそっ…。俺の打力じゃとても対応できるボールの速さ、キレじゃねえ。)
2球目
慶野『俺の打力の話だけどな!』
(ポン!!)
『プッシュバントだ!!ピッチャーとファーストの間を狙ってきた!!!!』
谷『くそっ!!取れねえ!!』
『抜けた!!これで2番慶野の内野安打でノーアウトランナー一塁です!!邦南高校、ここにきて今日初めて先頭打者が塁に出ました!!』
『3番、ピッチャー、大場くん。』
ビュッ!!ゴウッ!!
(カッキーンッッ!!!!!)
谷『あの高めの、クソボールを…』
(ボサッ!!!)
『入ったーっ!!!!!3番の大場のツーランホームラン!!!これで2点を返して4-2!!邦南高校が反撃ののろしをあげた!!!』
??『勝てるぞ…。頑張れよ。お前ら。』
邦南高校の制服を来た青年が、ランニングを始めた。