No.370:ゾーン
『9番、センター、慶野くん。』
『『ウワァァァァァァァ!!!!』』
《9回の裏、なんとしてでも5点を取らなければいけなかった邦南高校!!松坂のホームランで1点を返し、その後ワンナウトから氷室、代打木村の連打でランナー、一三塁!!!このまま勢いに乗りたい邦南、打席に慶野のアナウンスでスタンドが沸きます!!!》
慶野(改めて、すっげぇ舞台にいるって感じるな…。)
(最初は慣れなかったこの舞台での試合も、今じゃサイコーに楽しいし、アルプススタンドのみんなが心強い。)
(あとは、打つだけだ。)
棟方『立て直すぞ。翔冴。これが俺たちの目指した夏連覇への最後の試練だ。』
青龍寺『わかってる。』
棟方『さっきの木村へのリードはすまなかった。俺が焦った。』
青龍寺『終わったことは別にいいわ。それだけならさっさと戻れ。』
棟方『いや、もうひとつ言いたいことある。』
青龍寺『あ?』
棟方『マイナスなことを考えるのはやめよう。リスクとか、そーゆーのは、俺が考えるだけでいい。お前は自信持って、バッターを捩じ伏せることだけ考えろ。』
青龍寺『ここにきて精神論かよ。』
棟方『精神論じゃ、いかんのか?』
青龍寺『なんか精神論って、なんかイマイチ気に入らねえ気がしないでもない。』
棟方『いや、俺も基本そういうスタンスだけどよ、』
“よく考えてみたら、俺達この高校入って1番成長したのって、精神じゃね?ってさ。”
青龍寺『…。』
棟方『今まで色んな辛いことがあった。何回挫折したかもわからん。だけど、俺達はその都度立ち上がって、この舞台での頂点を目指してきた。』
青龍寺『…。』
棟方『夏の甲子園連覇。そのために俺達は、いつも全力プレーで、世間のみんなに認めてもらうためにも、一生懸命頑張ってきた。最初は、俺達への風当たりも滅茶苦茶強かった。だからこそ、』
“最後に、諦めなくて良かった、そう思えるようにありたい。”
青龍寺『…戻れ。』
『プレイッッ!!!!』
青龍寺(………。)
“捩じ伏せるッッッッ!!!!!!”
ズッッバァァァーーーーーッーーンッ!!!
【159km/h】
慶野『え…。』
『ストライークッ!!!!』
『『ウォオォォォォオオオォォ!!!!!』』
《ここで出ました自己最速ーーっっ!!!!159キロ計測!!!!!》
棟方(これだよ…。この球を待ってたんだよ。)
慶野『これって…』
赤嶋『ドラゴンのやつ…。』
(ゾーンに入りやがった……。)